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リムサ・ロミンサ怪奇譚「忘却の黒縄」

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 リムサ・ロミンサは、海賊の集う都市

 この都市に伝わる伝承は様々あれど、その多くは決まって海賊がらみである
 海賊の隠し財宝は最も有名だが、多くの伝承はそれほど華やかなものではない

 海賊以外で多数を占めるのは、船員を海に引きこむ歌声、不用心な人を飲み込む怪物、などなど
 要するに、危険と隣り合わせであるという現実に基づいた伝承がほとんどだ

 いずれにしても、比較的血なまぐさい逸話が大勢を占める、というのが実態のようだ

 これは、リムサ・ロミンサという都市が、危険を顧みない船乗りや海賊の集う場所だからこそ、訓告として広く伝えられてきたものと推測できる

 ただ、中には、警告にすらなっていない、奇妙な怪談話も存在する
 ここでは、そのひとつ、あまり有名ではないが「忘却の黒縄(こくじょう)」と名付けられた伝承を、紹介しよう


 リムサ・ロミンサには、かつて、海賊のみを狙って襲う、奇妙な海賊がいたという
 討ち取った海賊を黒い縄で吊る上げたことに由来する「黒縄」という二つ名だけが共通して伝わっており、その本名は諸説ある

 黒縄と呼ばれた彼は、海賊に恋人(または母親という説も)を殺され、その恨みを晴らすべく、次々と海賊を狙うようになった
 暗闇の中で黒縄に吊るしあげられた海賊の無残な亡骸は、さながら、宙に浮かぶ幽鬼のごとし、と、当時の船乗りの歌の記録にも残されている

 海賊に悩まされてきた民衆からは英雄と讃えられることもあったが、海賊の間で成り立っていた暗黙の掟さえも無視し続けたため、その命を狙われることとなる

 そして、ある海賊に囚われ、自らの黒縄で処刑される間際、彼は、こう言い残したという

「お前たちは、いずれ、俺のことを忘れ去るつもりだろうが、決して忘れさせやしない。お前たちが忘れた時に、この縄は誰かの首を縛り、嫌でも思い出させるだろうからな」

 彼の処刑から、数年後
 処刑を行った海賊の首領が、黒縄に吊るされた無残な死体で発見される、という事件が起きた
 その事件によって首領を失ったその海賊団は、首領の座を巡って縄で吊るし合うような奇妙な仲間割れを起こし、壊滅する

 人々は、黒縄の呪いだ、と噂した
 だが、彼を処刑した海賊は、もう、いない
 だから、これ以上、犠牲者が生まれることもないだろう、と人々は安堵し


 彼の名を忘れた


 その事件から、数年後、人々が忘れ去った伝承の一つとして、一連の事件を回想録に遺した研究者がいた
 回顧録の編纂から数年後、その研究者は、黒い縄で吊るしあげられた無残な死体で発見される

 それからというもの、その事件の調査に関わって書物を読み、黒縄の伝承を知った者の中から、毎年のように犠牲者が生まれた
 そして、そのたびに、人々は、黒縄の呪いの伝承を思い出すこととなる

 こうした出来事が、実際にリムサ・ロミンサの歴史の中で、何度か繰り返されてきたらしい

 そのため、黒縄にまつわる記録は禁書とされ、今でもコーラルタワーの秘密の書架で厳重に封印されているという


 どうやら、呪われた黒縄は、最後にこの物語を忘れた者を吊るすのだとか

 さて、君は、この物語の、最後の忘却者となるのだろうか?



 ―― ル・サリャク・ディア著『エオルゼア怪奇譚』より抜粋 ――
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