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エオルゼア古聞奇譚8「決意」

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 ◆              ◇
◇ エオルゼア古聞奇譚7「決意」 ◆ 
 ◆              ◇


エオルゼアを舞台とした物語の掲載を始めました
📓エオルゼア古聞奇譚1「森の家」
📓エオルゼア古聞奇譚2「嵐の前に」
📓エオルゼア古聞奇譚3「予兆」
📓エオルゼア古聞奇譚4「異変」
📓エオルゼア古聞奇譚5「山小屋」
📓エオルゼア古聞奇譚6「凶報」
📓エオルゼア古聞奇譚7「影の獣」
📖エオルゼア古聞奇譚8「決意」

「頼む!一緒に来てくれ!」
「やです」
わたしの冷たい返答にひるんだ様子もない。
いい加減、諦めてくれないかな。

ブロードソードの男は、あきれるほどの回復力で、次の日には目を覚まし、3日もすると、元通り歩けるようになっていた。ヒューランって頑丈なのね。

「ヴァレイン、もういいですよ」
エルレーンが見かねて横から口を挟む。ブロードソードの男はヴァレインという名前らしい。花蜜桟橋にわたしとシアを迎えに来た男で、ナイアンビーの山賊の一人だ。なぜ、このエレゼンと一緒に行動しているのかは知らない。
「よくねえよ。俺たちだけで、あんな化け物に太刀打ちできるわけないだろ。このお嬢ちゃんは、一撃で化け物を吹っ飛ばしやがったんだぞ」
お嬢ちゃん?
「運がよかっただけですよ」
わたしは、さらっと返す。
「だあぁぁ!運だけで、あんなこと、できるわけねえだろ!ただの治療士だと思ってたら、おまえ、めちゃくちゃ強いじゃんか」
おまえ?
「ヴァレイン、失礼ですよ。こちらの女性は……ええと……」
エルレーンは言葉が思い付かないらしく黙ってしまった。
まあ、いきなり白魔法をぶっ放した魔女ですよとは言いにくいよねぇ。
「なんだ?こいつがおチビだからって遠慮してんのか。関係ねえよ。強けりゃ、何だっていいんだ。エレゼンは真面目だねえ」
「おチビじゃないです!」
わたしは暴言にたまりかねて、フードをバサッと脱ぐ。2本の白い角が露わになる。
「おう……」
ヴァレインが息を呑んだ。
「そういえば、おまえさん、角尊(つのみこと)だったな」
「角尊じゃないって言ったじゃないですか!」
つい、大きな声が出てしまった。
呼吸を整え、心を落ち着ける。
ヴァレインは失礼極まりない男だが、人は良さそうだ。エルレーンも生真面目が過ぎるぐらいで信用できると見ていい。角を見られた以上、変な噂が広まるよりは、きちんと説明しといた方がいいかも……

「わたしはアムダプールの生存者なんです」

最初は普通の人間として生まれ、あるとき突然角が生え、成長が完全に停止する。角は、ほとんどが子どもの時に生えるため、角のあるアムダプール人は子どもの姿をしている。角が生えないまま生涯を終える者の方が圧倒的多数であるため、角が生えたアムダプール人は精霊に選ばれし者として尊ばれた。事実、角が生えたものは精霊と交感することができ、膨大なエーテルを操ることができる。

忌まわしい魔大戦の記憶。

小さな都市に過ぎなかったマハが突如として黒魔法を行使し、都市ニームを滅ぼした。トンベリ病という世にもおぞましい病気を蔓延させた結果だという。危機感をもったアムダプールは、黒魔法に対抗するために癒やしと浄化の力を持つ白魔法を編み出した。やがてマハとアムダプールは全面戦争に突入し、アムダプールはマハを退けたものの、大量のエーテルを消耗し、その結果、自然界のエーテルバランスが崩れて大洪水を引き起こした。大災害を引き起こした白魔法に脅威を感じた大精霊は、アムダプールを森に呑み込ませ、都市は崩壊した。

生き残った人々は、各地に散らばり、そこで生活するようになった。大災害を引き起こした魔法は禁忌となり魔法は衰退した。

「ええと……アムダプール人の子孫ということですか?」

そう。普通はそういう解釈になる。
何しろ魔大戦が起きたのは1300年前のことだ。

「いいえ。わたしは子どもの頃、アムダプールに住んでいました」

エルレーンとヴァレインが、そろってまん丸に口を開ける。
「アムダプールの人の中には希にわたしのように角が生えてくる者がいます。角が生えると成長は止まり寿命も飛躍的に延びるのです」

「それにしても、寿命はあるでしょう。角の生えたアムダプール人は、みんな、あなたのように長命なのですか?」
先に我に返ったエルレーンが質問する。
「いいえ。わたしだけ……わたしとこの家だけが特別なのです。白魔法は光属性の魔法です。光属性には鎮静と停滞という性質があります。わたしやこの家は光属性を強く宿しているので、時が停滞してしまうのです」
「……なるほど」
「なるほどじゃねえ。さっぱりわけがわかんねえ」
エルレーンとヴァレインの反応は対照的だ。
「つまり、お嬢ちゃんは、お嬢ちゃんに見えるけど、中身はとんでもねえ歳のばばあだってことだな」
ヴァレインが失礼なことを言う。
「理解としては合っていますが、ばばあは違いますね!」
「?合ってるんだろ?」
「ち・が・い・ま・す・ね!」
「……わ、わかった、違うことはわかった」
いちいち疲れる男だ。

「まあ、それはともかく、命を救ってもらった礼がまだだった。ありがとな」
急にそんなことを言うから調子が狂う。
「あ、どういたしまして。偶然通りかかっただけですので……」
失礼なことを除けば人はいいのだ。たぶん。
「私からもお礼を申し上げます。2度も命を救っていただき、ありがとうございました」
エルレーンはいつも冷静で礼儀正しい。
「どういたしまして」
エルレーンは、わたしの返事を聞いて顔を上げると、何度目かわからないお願いを言った。
「改めてお願いします。わたしと一緒に蛇殻林に来てもらえませんか?」
「やです」
「なんでだよ!そこは『はい』だろ!」
「言うわけないでしょ!この流れで」
「この流れは『はい』って言うところなんだよ!」
「まあまあまあまあ」
エルレーンが慌てて止めに入る。
「リリィさんにも理由があると思うのですが、まずは、わたしの理由を聞いてもらえませんか?」
返事がないのを肯定と受け取ってエルレーンが続けた。
「蛇殻林には、まだ、仲間がいるんですよ」
「仲間って……もう……」
「わかっています。でも、行かなくては。わたしが行かなかったら、彼らは、ずっと、あの山道にいなくてはいけませんから」
重苦しい沈黙が続く。こういう空気は苦手だ。
「わたしは行くよ」
「シア!」
シアが決然と言う。
「リリィ、行こう。リリィにも行く理由があるはず」
「シア……」
珍しく静かに話を聞いていたシアの一言にわたしの心が波立つ。
「シアはいいの?平気なの?」
「いい。平気。もう3体はやっつけた」
「ええっ!このところシアが出かけてたのって……」
「狩りだにゃ。あいつらは、あたしの家族を殺した。生かしてはおけない」
わたしは絶句する。

シアはとっくに恐怖を乗り越えていた。
自分と家族を傷付けたものへの恐怖を。
ならば、わたしも向かい合わなければ。
わたしと、わたしの世界を脅かすものに。

「わかりました。行きましょう」
「わあい!」
「ほんとですか!ありがとうございます!」
「最初から素直にそう言えばいいんだよ」
「っ!あなたはもっと礼儀正しい言い方ができるようになった方がいいですよ!」

停滞していた時間が動き出す。
いつまでも、そのままではいられない。
人も、家も、世界も。
そして、わたしも。



* … * … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … *
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