チドリとその父・シグレは夜にリムサ・ロミンサの高台で話しをしていた。
この日の夜は快晴のためか、星空がいつも以上に綺麗だった。
チドリはそれを時折眺めたりしながら、最近の出来事を父に語っている。
チドリ「お父さん、今日は凄く空が綺麗だね~!」
シグレ「あぁ、これだけ綺麗なのは久々かもしれないな。」
チドリ「凄く空気も澄んでて気持ち良い~♪」
シグレ「最近はお父さんもチドリがとても笑顔な事が増えてるのが嬉しいよ。」
チドリ「そ、そうかな?いつもこうだと思っていたんだけど・・・。」
シグレ「一カ月前ぐらいから、毎日傷を作ったり汚れて帰ってきてるのは心配だったけれど、とても楽しそうな表情をしているよ。」
チドリ「そうなんだ・・・心配かけてごめんなさい。自分じゃ気づかなかったや。でも、そうなんだと思う!」
シグレ「そうか、良かったなチドリ。」
チドリ「うん!私ね・・・どうなのか悩んだんだけど・・・これがそうなんだと思うんだ!私ね!友達ができたんだ!」
シグレ「!?そうか!・・・チドリに友達が・・・友達ができたか・・・そうか・・・・。」
そう語ったシグレは、シグレが気にかけていた願いが叶った静かな驚きと嬉しさから、その表情は涙が出そうなのを堪えるかのような顔になっている。
チドリ「どうしたの・・・お父さん?何か苦しいの?」
シグレ「いや、違うんだよありがとうチドリ。良かったな・・・その友達の名前はもしかして以前助けてもらったと言っていたグオル君か?」
チドリ「うん!そうなんだ!私ね・・・実は他の子達に虐められて泣いちゃったんだけど・・・グオル君に助けてもらって・・・。」
シグレ「そうか・・・あの日暗かったのはやはり・・・。」
チドリ「でもね!次の日からグオル君にお礼を言って・・・その日から仲良くなったんだ!」
チドリ「虐められてるままじゃダメだ!特訓だぁあ!ってなんだか強引だったんだけど、一緒に付き合ってやるって協力してくれて、怪我なんかもしたけど・・・なんだか今までの中で一番楽しかったんだ!」
チドリ「それから毎日特訓してもらってたんだけど、臆病な自分が少しずつでも変われていってるような・・・そんな気持ちになれて。」
シグレ「そうか。だが大きな怪我だけは気をつけるんだぞ!」
チドリ「うん!」
チドリ「それでね・・・お父さん。」
シグレ「どうした?」
シグレ「私・・・お願いがあるんだ・・・!」
シグレ「チドリがそこまで強く言ってくるなんて珍しいな。ではとりあえず聞こう。」
チドリ「私、グオル君と冒険に出ようってお話しをされてるの・・・。」
シグレ「ふむ・・・子供2人だけなどと言わないな?」
チドリ「うん・・・(ごめんなさいお父さん・・・)」
反応が気にかかったシグレだが、チドリが嘘をつくような事は今まで一度もなかったため、親として疑う事はしなかった。
シグレ「正直、私は反対だ・・・外は子供には危険過ぎる。」
チドリ「うん・・・そうなんだと思う・・・でも・・それでも私・・・!」
シグレ「・・・(ここまでチドリが自己主張するのは初めてだな)」
チドリ「外は怖い事も沢山あると思う!それでも私・・・初めての友達ができて・・・グオル君と仲良くなって・・・今までの中で一番嬉しかった!楽しかった!」
チドリ「でもグオル君がいなくなって、私だけここに残ったら・・・また一人ぼっちに戻っちゃう気がして・・・もうそんなのは・・・やなの!」
シグレ「チドリ・・・。」
今まで自分やチドリが周囲から受けてきた扱いの事を考えると、シグレは胸が痛くなった。
シグレ「そこまでの友達がチドリにもできたんだな・・・わかったお母さんには私から伝えておこう。」
チドリ「お父さん・・・。」
シグレ「だけどなチドリ。約束してくれ・・・危なくなったら無理せずに、無事に帰ってきてくれ。いいな?」
チドリ「うん!ありがとう!お父さん!」
シグレ「がんばっておいでチドリ・・・。」
シグレは愛娘を優しく抱きしめた。
そして、数日後の朝。
グオル「さぁ、行くぞチドリ!俺らの冒険の始まりだ!」
チドリ「うん!私、グオル君に必死についていくね!」
グオル「ついてくるぐらいじゃ置いていっちまうぞ!追い越すつもりできな!チドリ!」
チドリ「うん!わかった!」
グオル「前進だ!進めぇ!」
チドリ「おぉ~!」
そして少年と少女は中央ラノシアへ歩を進めるのであった。
そんな2人を見つめる者が一人いる事に気づく事もなく・・・。
ハルド「(どういうことだい・・・なんでうちのバカ息子があんな可愛らしい子なんかと仲良くなってるんだい・・・あたしはてっきり同じような力自慢のバカと一緒なんだと思ってたよ・・・。)」
ハルド「(いきなり娘をよろしくお願いしますとかアウラ族の父親が挨拶に来るもんだから、亭主に言ってつけてきて良かったよ・・・。)」
そう考えながら、ハルドは2人のあとをついていく。
グオル「中央ラノシアは特訓の間に踏破しちまったからな!次の目標地点は西ラノシアだチドリ!」
チドリ「うん!どんな場所なんだろう!楽しみ!」
グオル「チドリはもし怪物なんかが見えたらすぐ俺の後ろに来るんだぞ!接近戦は俺に任せろ!」
チドリ「後ろから支援するね!」
グオル「おう!頼むぞ!」
2人はまだ見ぬ景色などに夢膨らませ、橋を渡る。
しかし・・・
女性の声「待ちな!!」
突如大声で呼び止められる2人。
グオル「(ん・・・なんか聞き覚えのある嫌な声が・・・。)」
そして2人は振り向き、片や少女は初対面の大柄な女性に対しキョトンとし、片や少年は驚愕の表情を見せた。
桟橋に仁王立ちで見下ろしているのはグオルの母ハルドである。
グオル「母ちゃんじゃねぇか・・・まじかよ・・・。」
チドリ「え?お母さんなの?」
ハルド「どういうことだいあんたは・・・そのお嬢ちゃんのお父さんがうちに挨拶に来たよ。」
グオル「げっ・・・。」
ハルド「うちの娘を一緒に旅に連れていってくださるようで、よろしくお願いしますってね~!どういうことだい!?」
チドリ「うぅ・・・ごめんグオル君。」
グオル「く・・くそ・・・。」
ハルド「さしずめ、あたしら抜きじゃ反対されると思って、他の人間も一緒に行くとか言ったんだろ!?」
ハルド「あたしもあんたみたいな男だけなら反対しなかったんだがねぇ・・・こ~~~んな可愛いお嬢ちゃんと2人でだけなんて許すわけにはいかないねぇ!!」
グオル「うるせぇ!チドリは俺がついてるから大丈夫なんだよ!」
チドリ「グオル君・・・。」
ハルド「言うねぇ~!それぐらいの事を男は言えないとねぇ~!だけどそういうのは大人になってから言うもんだよ!子供のくせに背伸びしてんじゃないよ!」
ハルド「まぁ・・・でも安心しな!亭主とお嬢ちゃんのお父さんには既に説明しといてあげたよ。」
ニヤリと表情を変えるハルド。
ハルド「あたしがついてくから安心しな!ってね!」
グオル「ハッ!?」
ハルド「物分かりの悪い子だねぇ!その冒険とやらにあたしが保護者としてついてってやるって言ってんだよ!引きずって連れて帰らない事を感謝してほしいもんだよ!まったく!」
一瞬呆然としたグオルだが、ふと我に帰った後、チドリに振り向きハルドに聞こえない程度の声で。
グオル「走るぞチドリ・・・全力でだ。」
チドリ「え・・・?」
グオル「良いから全力で走れ。西ラノシアに向かってとにかく走れ。」
チドリ「で、でも・・・。」
グオル「うちの母ちゃんはな・・化け物だ・・・確かに頼りにはなる・・・だけどな・・・。」
グオル「召喚士の癖に、キレたら魔法も使わずに魔導書で怪物を叩き潰す怪力女・・・それがうちの母ちゃんだ。」
チドリ「えぇ・・・。」
グオル「そんな奴と一緒に旅に出るとか、身内に殺されるために旅に出るようなもんだと思わねぇか・・・?」
チドリ「す・・すごい。」
グオル「関心してる場合じゃねぇよ!良いな!チドリ?」
チドリ「う、うん・・・。」
ハルド「何をこそこそ話して・・・」
グオル「今だぁああ!走れぇええチドリぃい!!」
チドリ「待ってぇえええグオルくぅうううん!!」
グオルは今までの人生の中で、最も本気で走ったのではなかろうか。
チドリも必死に追いかけている。
ハルド「あ!何逃げてんだい!待ちな!逃げられると思ってんのかい!?」
グオル「俺らだけで大丈夫だっつてんだよ!!」
ハルド「あんたが大丈夫でもお嬢ちゃんが大丈夫じゃないって言ってんだよ!クソガキ!!」
グオル「うるせぇクソババァ!ついてくんじゃねぇよ!帰りやがれ!」
ハルド「あぁ!?だぁれがクソババァだぁあ!?ぶっ飛ばす!!」
チドリ「グオルくぅうん!どんどん怒らせてるよぉおお!!」
グオル「捕まってたまるかよぉおおお!!うぉおお!!」
ハルド「待てやぁああああ!!」
こうして、チドリとグオル・・・そしてグオルの母のハルドと共に西ラノシアに向かう事になるのであった。
果たして少年と少女は西ラノシアでどのような冒険をし、何を目の当たりにするのか・・・。
3話へ続く。