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紅蓮回顧録 12話 革命軍リーダー カーティス・へクスト

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一行がアラガーナに着いたのは、日が暮れる前だった。流石に歩き詰めだったためか、オリヴィアは疲れてヴィルヘルムの背中で寝入っている。娘の寝息を耳元に感じながら、標高が高いためか、まだ涼しい風が吹く山岳地帯の景色を眺めながら歩いた。

一昔前は、アラガーナから切り出された石材が王宮に使われたりしていたため、村は労働者で溢れかえって大変な賑わいを見せていた。しかし、ここ最近は厳しい税収に苦しめられており、かつてほどの賑わいはない。それでも、労働者達は働き口を求めて各地から集ってくる。村に近づくに連れ、労働者が寝泊まりする宿や食堂から聞こえてくる人々の声が、山の中を歩き続けた一行をほっと一息つかせるのだった。

早速、宿に寄ると幸いにも1部屋あいていたため、案内してもらうことにした。採掘場として岩を切り崩した場所を、宿泊施設として再利用している場所だった。先日のラールガーズリーチの洞窟の部屋に比べれば、当然だが見た目はかなり良い。
4人が一息付いていると、何やら外が騒がしい。気になったので、ヴィルヘルムとゲルダが向かい、ダミアンはオリヴィアと部屋に残ることにした。

行ってみると、村の中央部にある広場で人だかりができていた。何やら、何者かが演説をしているようだ。何があったのかと、ゲルダが村人に尋ねた。すると、どうやらその男はゲルダのことを知っていたようだ。女性の自警団員、しかも敏腕で凄腕となると、このあたりでもゲルダのことを知っている人物は多いと聞く。
「おぉ!あんたはビターミルのボーンクローラー、ゲルダじゃないか!自警団の連中がよく噂してるよ。」
「なんだそのボーンなんたらってのは…まぁいい、一体何の騒ぎだい。」
「なんだ、あんたボーンクローラーを知らないのかい!この辺では伝説の甲鱗綱の大型魔物で、なんでも噛み砕くからチョコボの骨も残らねぇって……いやそんな怖い目でみないでくれ、待て待て待て、俺が言ったんじゃない、みんながそう言ってるんだ。えぇっと、そうだ、この集まりについて知りたいんだろう?お前さん達も是非聞いていくといい!革命軍のお偉いさんが、ありがたい話を聞かせてくれるんだとよ。」

人集りの中央を見ると、長髪のたくましい男性が大きな声を張って喋っていた。
「――――ここアラガーナも、法外な税収で苦しめられている!暴君の圧政に怯える必要はない!我らが立ち上がらねば、この国に未来はないのだ!『自由か死か』この言葉を、己の魂に誓える者がいたら手をあげよ!私たちとともに戦い、暴君を倒し、自由を勝ち取るのだ!」
おそらく、各地で同じような演説をしているのだろう。言いよどみのない演説に、民衆は聞き入っていた。

一通りの演説が終わると、人々は歓声を上げた。ここアラガーナでは、彼ら革命軍はかなり人気があるようだ。先程の男が、人混みを割りながらゲルダを引っ張って先程の演説男に紹介した。
「おぉ!君があのボーンクローラーと…いやいや、こんな美人にボーンクローラーは失礼だな。訂正しよう。私は、カーティス・へクスト。革命軍の、まぁ一応リーダーということになっているが、革命軍では皆が先頭に立ち、活躍してくれている。私はあくまでその顔役、というわけだ。ゲルダ君、君の噂はかねがね聞いているよ。」
最初の一言に、ゲルダはムッとしたが、その後に続いた言葉に――普段の言動のため、そういった観点であまり褒められたことのない――彼女はバツが悪そうにした。ヴィルヘルムも、黙っていればゲルダは美人だとは思っていた。黙っていれば、だが。
「カーティスさんは、王都内や国内で暴君に苦しめられている民衆を集めて、革命軍を立ち上げたお方なんだ。あんたらも、志高くするなら是非、革命軍に参加すればいいさ!」
男は興奮気味に話すが、ゲルダはいかにも胡散臭そうな者を見る目をしている。
「さっき、あんたが言ってた『自由か死か』…これってどういう意味なんだ?」
「では、君はどう思うかね。」
ゲルダの質問に、カーティスはニヤッと笑って返した。質問を質問で返されたことに苛つきながら、ゲルダは答えた。「自由のために戦うか、暴君に殺されるかってことだろ?」それを聞くと、カーティスは声を上げて笑った。
「1年ほど前に、君と同じように血気盛んな若者が、同じようなことを言っていたな!」
ーーこの意味は、とカーティスは続けた。これは、戦いによって得ていいものなのだと。戦いによって得られるのは、自由だけなのだと。
ゲルダが難しい顔をしていると、後ろについていたヴィルヘルムが助言した。
「つまりだ。もし戦いによって富と権力を得たものがいたとする。するとどうなる。その富と権力を狙って、また次の誰かが戦いを引き起こしてそれらを得ようとする。そうすれば、争いは終わらない。富も、権力も、本人の不断の努力によってのみ得られるべきものなんだ。当然、そこには運の善し悪しもあるだろう。だが、決してそれらは戦いで得られていいべきものではないってこった。」
どうやら、ゲルダは合点がいったようだ。ヴィルヘルムの言葉に、カーティスもうなずいた。
「まさにそのとおり。我々は富や権力を得たいわけではない。暴君の圧政に怯えることなく、自由に生きるために戦うのだ。」
カーティスは、ヴィルヘルムに手を差し伸べて、改めて名乗った。「カーティス・へクストだ。」
ヴィルヘルムもその手を取り、名乗った。「ヴィルヘルムだ。」

すると、カーティスが目を細めて顎に手をやる。ヴィルヘルムの全身を見ると、腕から見える模様に釘付けになる。
「ヴィル…まさか、その入れ墨は…ヴィルヘルム・シュルツか。かの国境の英雄『アラミゴの虎』の。」
不味ったなと思った。どうやら彼はヴィルヘルムのことを知っていたようだ。
「革命軍の中にも、圧政に苦しむ民を見て国軍を抜けた兵士も多い。彼らから、国境で活躍していた君の噂はよく聞いていたよ。その入れ墨を指して、敵を蹴散らす渦巻き模様『アラミゴの虎』とね。実際、革命軍の中にも、君に命を救われたと語る者は少なくない。彼らに代わって礼を言おう。」
幸い、彼はヴィルヘルムに好感的だ。「事情があって大声で名乗れない」と伝えると、カーティスは理解を示してくれた。

それからヴィルヘルムは革命軍の支部と思われる宿舎に呼ばれ、カーティスと2人で杯を交わすことになった。カーティスが、『アラミゴの虎』と是非に話してみたいと依頼したからだ。
ゲルダは、革命軍の活動が気になったのか、彼らに分け入って話をしている。ダミアンとオリヴィアを待たせたきりだが…彼らなら大丈夫だろう。

雑多な食堂の一角に2人は座り、安い酒をちびちびと飲み交わしている。周りでは、革命軍らしき面子が酔っ払いながら肩を組んでアラミゴ国歌を歌っている。暴君は嫌っていても、アラミゴという国を思う気持ちは皆同じだ。その中にゲルダも混ざってもみくちゃにされている。
ずいぶんと自由な気風だな、とヴィルヘルムは言った。軍隊しか知らないヴィルヘルムにとって、軍とは規則で縛り、暴力で律するものだ。
「当然だ。我々は勝ち取るべきは『自由』だけ。それを謳う我らが、規則や暴力で彼らを従わせれば、それは嘘になる。彼らと志を同じくすれば、彼らは自ずと革命軍のために活動してくれる。」
ヴィルヘルムは、この懐の大きさこそが、カーティスを革命軍リーダーたらしめているのだろうと感じた。
「俺を革命軍に誘わないのも、それが理由か?」
「そうだな。当然、君が革命軍に入ってくれれば、これほど心強いものはない。しかし、先程言ったように、私は誰かを強制したりすることはない。それは君に対しても同じだ。君が革命軍に入りたければ入ればいいし、入りたくないのであれば、そうすればいい。」
ずいぶんと余裕だな、とヴィルヘルムが呟くと、カーティスは笑った。
「それは見当違いだな。実際、作戦は近いのに戦力に余裕はないんだ。しかし、志を同じくしない者が混ざれば、革命軍は内側から崩壊する。この革命軍とはそういうものだ。あくまで私達が募っているのは、同志だ。兵士ではない。もちろん、君が同志になってくれれば大歓迎だが。」
カーティスがヴィルヘルムに水を向けるが、ヴィルヘルムは頭を振った。
「いや、残念ながらやるべきこと、行くべき場所がある。」
「……見たところ、『アラミゴの虎』の目的は物見遊山ではなさそうだが。」
「その『アラミゴの虎』ってのはもうやめてくれ…気恥ずかしい。今は娘の子育てに奮闘中の、ただの父親だよ。」
「おぉ、奇遇だな。実は、私も娘が2人いてね。ちなみに、歳はいくつだ。」
「今年で4つになるよ。いつのまにか口が達者になってな、全く……誰に似たのか。」
「またしても奇遇だな、下の娘が同じ4つだ。女の子は頭の成長が早くて驚かされる。私が4つのころは犬と変わらなかったな。」
「まったくだ。俺もその時分は犬のように走り回っていたが、犬のほうが言うことを聞く分まだマシってもんだ。」
「違いない!」
最後の方は、そんなたわいもないやり取りを男たちは交わした。別れ際にはお互いの無事を願った。革命軍は、最終的な作戦が近いらしく、カーティス自身、自分が生きて帰られるかわからないという。
「たしかに、子供を残して死ぬのは恐ろしい。しかし、それでも、私にはやらなければならないことがある。子供たちに、『自由』を与えるため、私は戦わなければならないのだ。」
そう言って去っていく後ろ姿を、ヴィルヘルムはいつまでも見送っていた。
翌日、ヴィルヘルムを待ちきれず寝てしまったオリヴィアに、自分も酒場に行ってみたかったとなじられてしまった。
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Oliver Classic

Alexander [Gaia]

次回13話で第2章(?)終了です。
第3章は一気にラストまで行く予定です。
ほとんど書き終えていますが、内容を吟味したいのでしばらくお休みしますm(_ _)m
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