最強最愛のビギナーズ 第十六話「突入せよ!マリシャスパレス」半年間という時間はあっという間に過ぎ去り、約束の朝は無情にも訪れた。
気持ちの支度と身支度を済ませた私は、妹達と合流する為に居間に向かった。
そこには既にやる気に満ち溢れた何時も頼りになる双子の姿があった。
「お姉様、おはようございます!」
「姉様ぁーおはよう!モーニングッ!」不安を吹き飛ばすかのような屈託のない笑顔で何時もこの子達は私も迎えてくれる。
妹達も既に支度は完了したようだが、それぞれ何時もの出立と、違っていた。
「アスちゃん、トンちゃん、あれ?その髪形」
「ええ、決戦に備えてイメージチェンジしてみました、どうでしょう似合いますか?」
「うん、すごくよく似合ってるよ!」
「ありがとうございます」
アスは少し俯きながら照れていた。
「姉様、姉様、姉様、姉様、姉様、私は私は私は?」
自分の存在をアピールする様に、何回も呼ぶ所が実にトンらしいと思った。
…若干狂気も感じるけど、感じなかったことにしよう。
「うん、トンちゃんもスゴイよく似合ってるよ」
「でしょでしょ!私今日の為にずっと考えてきたんだから当然似合ってるよね!」
…えらい自信だな、この子。
そんな所もトンらしい。
「お姉様の新しい衣装も良くお似合いですよ」
「ああ、ありがとう」
私もこの期にという訳じゃないが、装備を新調したのだ。
正確にはマリエさんから頂いたものだが、昔本人が使っていた折り紙付きの装備らしいが、冗談なのか本気なのか、いわくつきだと言って笑ってたなぁ…
まさかアシエン達との戦い以外の所で命落とさないよね…
そんな事を考えていると、金の髪色がトレードマークなマリエさんがいつの間にか三人の目の前にいた。
殆ど気配を感知させる事なく、この人は何処から現れたんだろう。
つくづく恐ろしい力を持った人だ、この人が味方で本当に良かった。
「おはよう、おみゃあ達!ルビー…その装備にあってるにゃりね、呪い…いや間違いなく加護があるにゃりよ」うん、今あの人間違いなく呪いって言おうとしたよね…大丈夫か私の命?
私の複雑な心境を無視してマリエさんが淡々と話を続ける。
「さて、いよいよアシエン達と決戦の時がきたにゃりね」
三人がマリエの言葉に呼応してそれぞれ頷く。
「…覚悟と準備は十二分にできているにゃりか?」
「はい、もちろんです!」
「私もトンちゃんも万全です」
「はーい!三人で一緒ならトンはいつでもOKだよ」
それぞれの決意と言葉を聞き、マリエも頷く。
「よし!…何度も言うけど、おみゃあ達がこれから戦う相手は最悪と言っていいにゃり、例えこのマリエちゃんでもかすり傷一つ負わずに勝てる相手じゃないにゃ」
…貴女はそんな強敵相手に、むしろかすり傷一つで勝てちゃうんですか…
「ルビーおみゃあ、顔に全部言いたい事が書いてあるにゃりよ!」
全部見抜かれてた…
「…コホンッ!まあそんな訳で油断できる相手では無いにゃ、それだけにおみゃあ達全員の命の保証もない、それでも行くにゃりか?」
マリエさんの私達への気遣いと心が伝わってきた。
「はい、行きます!私達の未来を掴むためにも、妹達と行ってきます」私の心にもはや迷いはなかった。
「お姉様が行く所に、私達もついていく、それだけです」
アスの真っすぐな瞳が答える。
「…もうお姉ちゃんを失うのは嫌なの、だから自分たちの力でこの関係を守ってみせる!この拳で!」
トンの強い思いが言葉に籠る。
「…おみゃあ達の気持ちよく分かった、…師匠としては複雑にゃりが、行ってくるにゃ、…そして全員笑顔で帰ってくるにゃりよ」
心配を押し殺してマリエさんが私達を送り出す言葉をくれた。
ああ、やってやろうこの三人で。
待ち構える敵が、例えどんなに強敵でも私達三人なら負けない。
「…どうやらお迎えが来たらしいにゃりよ…」マリエさんは何かの気配を察知したのか玄関の方に移動する。
その後をついていく私達。
到着した玄関の外に目をやると、そこには小型の悪魔らしき存在が居た。
「おみゃあは迎えの使い魔か何かにゃ?」
マリエが物怖じせずに目の前の存在に威風堂々と話しかける。
小型の悪魔らしき存在はマリエの圧に気圧されたのか一瞬たじろいだが、取り繕っては話を始めた。
「ケケケ、今日地獄に行く三人はその後ろで間抜け顔をちらつかせてる連中だな、始める前から死相がみえるぜ、ケケケ!」
「姉様、あれ消してもいいかな?」
トンの怒りゲージが瞬間で沸点を越えたようで、私に聞きながらも既に拳を構えている。
「まあまあ、トンちゃん、案内役が居なくなると困るから、ここは穏便に、悪魔さん今日はよろしくお願いします」
トンとは対照的に挑発的な悪魔に対して礼儀正しい態度で接するアス。
「でも…私達を侮ると…案外痛い目を見るかもしれませんよ♪」あれ、アスちゃんも実は怒ってる?
「これから死ぬ奴らが何と言おうが気にしないぜ、ケケケ…」
そう言いながらも、小型の悪魔は少し震えていた。
二人の圧もそうだが、その後ろで愛弟子をけなされたマリエさんの圧がすごかったからだろう。
無言で腕を組んで相手を睨んでいるだけだが、その覇気は半端ではない。
「……」
圧倒された悪魔が静かになる。
さて、どうやらその時が来たようだ。
「マリエさん、それでは妹達と行ってきます!今までありがとうございました」「リリーナお姉様の分も含めて、私達必ずやり遂げてきます!」
「マリエさん、お腹ペコペコで帰ってくると思うから、おいしい食事を用意して待っててね♪」
「…おみゃあ達、必ず三人無事に帰ってくるにゃ!そうじゃなかったらマリエちゃん…不安で国一つ崩壊さちゃうかもしれないにゃ…」
この人はどれだけ規格外なんだろう…末恐ろしい。
でも、必ず帰ってくる、三人一緒。
そして妹達と結んだ約束を必ず果たすんだ。
「はい!必ず無事に帰ってきます」
「マリエさん、お世話になりました!」
「おいしいご飯の為に頑張るぞー!」
三者三様の挨拶を済ませ、私達は悪魔の元に集った。
「さあ、マリシャスの元に案内してもらおうか」
私が三人の意志を代表して伝える。
「ケケケ、覚悟はできた見たいだな、それじゃお前たちを地獄の入口に案内するぜ」
悪魔が言葉を発すると同時に、背後に現れる異質な空間。
どうやらここが今回のパーティー会場にして決戦の地への入口の様だ。
「……ゴクリ」
いざ、決戦の時が迫ると恐怖心と不安な心が自分の中によぎり私の動きを止める。
「大丈夫です、私達が居ます」私の不安を察したのか、後ろからアスが私の手を握っていた。
いや、トンも反対側の手をぎゅっと温かく優しく握って微笑んでいた。
「うん、大丈夫…」
私の心に勇気の火が宿り、再び気持ちのスイッチが点火する。
もう大丈夫だ。
「二人とも行くよ!」
「はい、お姉様!」
「うん、姉様!」
覚悟を決めて異質なゲートの門をくぐる。
私達が突入したと同時に消え去ったゲートの跡をマリエはしばらくの間見つめていた。
「リリーナ…どうかあの子達に力を貸してやって欲しいにゃ、そして必ず無事に返してにゃ…」消え去りそうな声でマリエが囁く。
辺りに吹く風は何処か寂しさを感じさせた。
ゲートをくぐったその先には…異質な空間が広がっていた。
恐らくはマリシャスが作り出しているであろう固有空間。
空間すらもねじれ時からも忘れ去られたような寂しさを感じる場所だ。
悪魔の誘導する方に私達三人はついていく。
細い道を辿っていくと、目の前に大きな扉が現れた。
「さあ、ここが最初の場所にして、お前たちの終着駅になる絶望の間だ、心して入るがいい、ケケケ!」小型の悪魔が一人でテンション高めに説明しているが、この先に一体何が待ち受けているんだろう。
…分からない事を考えても埒が明かない。
それに私には頼りになる妹達二人がいる。
どんな敵が来ようと切り抜けてやる!
覚悟を決めて扉に手をかける。
…ギギギギギッ…
大きな音を鳴らしながら、扉が徐々に開かれていく。
その先にあった光景は…何と言うか…実に禍々しい。
空間そのものから淀みを感じる様な、薄暗く重い空気を肌に感じる。
ここに居るだけでも気持ちが騒めく。
絶望の間と言うに相応しいと言えば相応しい雰囲気を醸し出した場所だ。
私達の足元にある地面は、まるで管の様に張り巡らされ生き物の様な胎動を繰り返している。
私もだが、妹達も気色悪そうな表情で先に歩を進める。
少し進むと広い場所に辿りついた。
同時に、ど真ん中で偉そうに腕を組み私達を待ち構える存在も目に入った。
「よおっ!!あまりにも遅いから待ちくたびれちまったぜ」自身よりも大きな漆黒の鎌を備え、片方の眼には眼帯を有し、反対側の眼は我々の魂をのぞき込むような嫌な視線を感じる。
「おっと、そういえばまだお前達には自己紹介が済んでなかったな、俺っちはディザスターウォーリアのイナーシャ、お前達を葬る男だ!冥途のおやつに良く覚えておきな」
「…それを言うなら、冥途の土産です、良く分からない言葉を自慢げに言わないでください、既に底が知れますよ?」
アスの的確な物怖じ一つしない言葉が、先制パンチの様にイナーシャに突き刺さる。
「お、お前…いい度胸してるじゃないか、いいだろう最初にお前からバッサリとやってやるよ!」
大鎌を構え有無を言わさず悠然と襲い掛かってくるイナーシャ。
「短気は損気ですよ、もっと大局を見て動かないと、貴方、私達に指一本触れられませんよ?」
「まだ言うかぁ!ほざけぇえええ!」
既に怒りに支配されたイナーシャが構わずアスに向かって突進してくる。
「俺っち自慢の鎌の餌食になるがいい、スライスぅぅぅぅ!」自慢の鎌が高速でアスの胴体目掛けて猛然と襲い掛かる。
しかし…その鎌はアスに届く事は無かった。
何故なら、アス自慢の防御術で全て防ぎ切ったからである。
「お、俺っちの鎌が届かないだと!?」
「そんな真正面から止めて下さいと言わんばかりの攻撃当たる人はいません、そして…貴方油断しすぎです」
アスが言葉を発すると同時に、イナーシャの目の前には既に攻撃態勢に入ったトンがいた。
「な!?」
唖然とするイナーシャ、一応反応し後方に飛び退こうとするが、時すでに遅し。
「ミラクルトンパンチ・破式」
獣の牙の様に鋭く確実に獲物を仕留めるトンの技が、イナーシャにさく裂する。
「ガアアアアァァァァ!!!」
もろに腹部に直撃を受けたイナーシャが後方にもんどりうって飛んでいく。
「へえ、あの瞬間で自分の鎌を盾にするなんて、意外と貴方もやるね」
初見の技にも関わらず、高速で繰り出したトンの攻撃をいなしたのだ。
但し、全部受けきれた訳では無かった。
ぶっ飛びながらも体勢を立て直したイナーシャが呻く。
「お前等…よくもやってくれたな、楽には死なせんぞぉぉぉ!」
「しゃべるよりも状況を良く見て動いた方がいいみたいですよ」「な!」
イナーシャがたじろぐ。
そうだろう、なんせ光の翼を煌めかせたルビーが自分の目の前にいたのだから。
「ウィングソード!」
光の翼を推進力に変えて、イナーシャに向けて剣を構え突進するルビーの技。
眼前に迫った敵の攻撃を躱す事が出来ずにもろに正面から食らうイナーシャ。
再び後方に勢いよく転がっていく。
体勢を立て直す前に食らった事により今度は受け身は一切取れなかった。
「がああああああぁぁ」
何度も地面をバウンドしながら転がりやっとの事で止まった。
「お姉様…待って下さい!」追撃しようと動くルビーをアスが制止する。
「!?」
アスの強い声に反応して止まるルビー。
イナーシャに視線を向けると。
凄まじい憎悪を込めた目で鎌を低く構えこちらを見ていた。
「ハァハァ…よくあの状況で突っ込む事無く攻撃の手を止めたなぁ、勢い余って攻撃を仕掛けてくれたら俺っちの自慢の鎌でその首を削ぎ落せたのになぁ、残念だよぉ赤いの」
あの連撃をもろに食らっておきながら、まだまだイナーシャの余力は十分と言った所。
「どうしてなかなか、戦帝以外は取るに足らないゴミだと思ってたけど、お前たちは獲物として楽しませてくれそうじゃないか」
さっきまでブチ切れていた相手とは思えない程の冷静さと、同時に冷酷さも三人は肌で感じていた。
ここからが本番って事か、流石に楽には先に進ませてくれなさそうだな。
ルビーは改めて目の前にいる相手の恐ろしさと力量を理解した。
「なるほどなぁ、一人一人の力もだが、お前たちの持ち味がその連携なのは良くわかった、そして同時に弱点もなぁ…」「アンタ何言ってるの?」
イナーシャの発言にトンが身構える。
その横で黙って次の動きを見極めようとするアス。
「その持ち味を消し去ってさぁ、お前達一人一人確実につぶすには、司令塔をつぶすのが一番だよなぁあああ!」
顔いっぱいに満面の笑みを浮かべるイナーシャ。
「お前達…出番だぞ!」
イナーシャが腕を大きく上に振り上げる。
それと同時に、周りに開きだす闇のゲート。
そこから現れたのは、獣たちの群れ。
もちろん普通の魔物ではない、異形の魔獣、そう恐らくすべての獣たちがディザスターだ。
「お前達、腹が減ったろう?そんな可哀そうなお前達の為にとっておきのエサを用意したぁ!さあ、たんと味わいなぁ」
イナーシャの号令と共に三人に向かってすさまじい勢いで向かってくるディザスターの群れ。
「…いけない、二人とも一度距離をとって下さい!このまま固まっていたらまとめて狙い撃ちにされます」アスのとっさの判断でお互いに距離をとる三人。
しかし、その行動を見透かしていたかの様に統制の取れた動きで大きく二つの部隊に分かれて進軍するディザスターの群れ。
「え?この動きはなに」
アスもあまりの事に一瞬判断が鈍った。
片方の部隊はルビーに、もう片方はトンに向かって綺麗に二分されて攻撃を仕掛けていた。
「まさか、これは…戦力を分断された?」
「そう、そのまさかだぁ!」
耳元で聞こえるイナーシャの声と同時に、鈍く唸り声をあげるかの様に迫る大鎌の一撃。
「ニャンコバリア!」
寸前に迫った鎌を冷静にバリアで防ぐアス。
しかし先程と止めたと一撃とはその威力が桁違いだった。
自慢の鉄壁を誇るバリアに亀裂が入る。
「!!」
「先ずは司令塔の命を頂きぃぃ!」アスのバリアが粉砕されそうになる。
「貴方、やはり甘いです…」
「あ?」
アスが言葉を囁くと同時に、イナーシャの左右から発生する衝撃。
「がはぁ!?」
何が起きたのか分からないまま爆発が起こる。
その間にアスは再びイナーシャと距離を取りバリアを再展開した。
爆発の中からイナーシャが首を傾げながら現れた。
「なんだなんだぁ、一体何が起こったんだぁ?」
どうやら大したダメージは与えられていないようだ、このタフネスさ並ではない。
「あの直撃を受けて、ほぼノーダメージ?馬鹿げた頑丈さですね…」アスがイナーシャをきっと睨む。
「あと少しでバリアを破壊できそうだった俺っちに攻撃を仕掛けた?他の奴らからの支援はあり得ない、って事はこいつがやったのか」
冷静な分析を一人で勝手に始める。
そして何か閃いたかのように、笑いだす。
「ああ、なるほどなぁ!そうかそうか、いやぁ大したもんだな」
自分に問答し納得して喜んでいた。
アスを指さし、こう告げる。
「お前、魔法を同時に幾つか使えるみたいだな、今、現状だけでも自分を守る結界も合わせて常に三つは使っているだろう?」
「……」
「ふーん、沈黙って事は正解って事だなぁ、しかも俺っちの左右から同時に攻撃が飛んできたと言う事はぁ…、お前最低五つ同時に使えるな」ニタァと見破ったとばかりの顔でイナーシャがアスを見据える。
「別に貴方に隠すつもりはありませんが、その通りです、私は同時に五つの魔法を使用する事が出来ます」
「敵ながら大したもんだわぁ、俺っちには逆立ちしたって無理な芸当だからなぁ、だがそれだけにその体がやっぱり欲しいよなぁ!」
再び大鎌を振りかざしアスに飛びかかるイナーシャの魔の手。
「ヒヤッハーーーー!先ずは…その生意気な目を絶望色に染めてやるよぉ!」
それに対して防御魔法を全力で展開するアス。
「…出来るものなら、どうぞご自由に」
戦力を分断され一気に窮地に追いやられた三姉妹、果たしてイナーシャとディザスターの群れを退ける事は叶うのか。
こうして、マリシャスの魔宮にて苛烈を極める死闘の幕が開けたのであった。~続く~■FF14外伝 連続空想小説 最強最愛のビギナーズFF14の世界であるエオルゼアを舞台にしたビギナー姉妹とアクア・ルビーの物語。
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