Character

Character

  • 0

FF14 勝手に外伝 亡国の冒険者達 第三部 3

Public
第三章 謁見

 クガネ城 本丸謁見の間『白書院』と呼ばれているその部屋は畳が一面に敷かれた「ひんがしの国」独特の造作だ。
 ジェーニオ達も城での作法はオボロとゲンヨウサイから特訓を受けたので、なんとか形にはなっているが、二人ともこの正座という座り方が馴染めなかった。
 正面の一段高くなっている場所がクガネ城代である奉行の席らしい。

 クガネ奉行マツバ家の当主『イチアン・マツバ』が、部屋に入ってきて上段の上座に座る。
ここで一同が平伏するのがひんがしの国の本来の作法である。
「礼の作法は難しいのです、平伏が最も丁寧な礼ですが、お二人はここまでする事はありません
あえて、会釈、軽く頭を下げる位にしてください」
と言われていたので、二人共正座のまま軽く頭を下げたままだ

「一同の者、表を上げい」
小姓が声をかけると二人の後方に控えているゲンヨウサイと更に後方にいるオボロが頭を上げる。
この席順にも何か意味があるらしい。
 イチアンは二人の後ろのゲンヨウサイを見ると最初に声をかけた
「コタロウか、久しいな、今は隠居の身と聞いておったが、異国の者の橋渡しとはいかが致した?」
「は、このコタロウ、御庭番頭として長きに渡り殿にお仕えして参りましたが、今は息子に後を譲りゲンヨウサイと名を改め楽隠居をしております、此度は酒代稼ぎにウルダハ商館の仕事を引き受けましてございます」
 『コタロウ』と言う名前を聞いて後方に控えたオボロがなる程と言う顔をした。
「さようか、苦しゅう無い。この者達がワシに会いたいと申す者どもだな、西方エオルゼアからの客人と言う事だが、何用か?」
「こちらはアラミゴのマンフレッド強健王の玄孫エンベルト・ジェーニオ殿下、隣はギラバニアのグ族
族長、グ・エンベルト・ヌン閣下でございます」
 殿下だの閣下だのと紹介されて、二人とも吹き出しそうになったが、辛うじてそれを堪えた
「そうか、両名ともアラミゴの所縁の者か、それで用件とは?」
「殿、こちらを」
ゲンヨウサイは作法通りに認めてあった嘆願書を小姓に手渡した。
 「イチアン」は一読したあと、小姓の一人に何か耳打ちをした、小姓は平伏をして急いで何所かに向かっていった
「ワシは、ガレマール帝国の皇太子ゼノス殿と面識があってな、ゼノス殿は武人として類稀な力量の持ち主であった、その方ら、そのゼノス殿と一戦交えると言うなら、その資格があるかまずワシに証明して見せよ」
「(そう来たか)」とグ・エンベルト
「(これは話が早い)」とジェーニオ
 「本丸武道館にて試合の用意をさせている、我が家臣と立ち会う事、異存はあるまいな?」
「お待ちください殿、この両名、儀礼上刀を帯びてはいますが武士ではありません、彼の国の武器でないと公平な戦いとは言えないかと存じますが」
「うむ、それも道理だな、では武器庫より好きな武器を選ぶ事を許す、西方エオルゼアの武器も多数揃えてあるから問題なかろう」
 ゲンヨウサイは武器を理由にこの立会いを回避しようとしたが無駄だった、この二人に何かあったら
ウルダハ商館からの報酬が消滅してしまうし、何よりこの数日でこの二人の事を大いに気に入ったからでである、心配そうに二人を見るが、二人とも何故か余裕の表情をしている。
 シロガネの屋敷に到着して以来、昼はクガネへ出掛けている様だが、夜はグ・エンベルトは書物に埋もれ、ジェーニオは調理場に入り浸り、つまみ食いをしては酒を飲んでいるだけで、ゲンヨウサイの見る限りおよそ武人の程とは遠いからだった。
 むしろ、二人の奥方達の方が毎日武芸の修行に勤しみ、腕も中々の様で余程頼もしく見えた。
ゲンヨウサイの頭の中の領主や王侯等は、このクガネ奉行イチアンも含めて、武人とは程遠い存在だったからである。

 武器庫に案内された二人はそれぞれ武器を選んだ
「ここは楽しいなぁ、良い武器がたくさんある」
「そうだな、見ろこの斧、業物だ、俺はこれにする」
などと試合前だと言うのに楽しそうな二人を見て
ゲンヨウサイはオボロに声をかけた
「お主、目眩しは持っているか?」
「持ってますが、何故です?」
「何故って、お主はウツケか? お二人が危ない時に直ぐに使える様に準備を……」
途中まで言った所でオボロが笑いながら遮った
「いや、その心配はありませんよ、むしろ二人共相手が怪我をしない様にちゃんと手加減をしてくれれば良いのですが」
「(何を馬鹿な事を、この若造ワシの見込みちがいだったか)」
ゲンヨウサイはそう思った。

 本丸武道館は不滅隊本部より広い位で、上座に奉行の席
試合場の左右に観客(家臣達)の席がある、
上座に座った奉行の横には美しいアウラ族の女性と同じくアウラ族の少年が座っている。

「赤誠組、二番隊組長 ヘイハチ、いざ」
ヘイハチと名乗った侍は刀を抜くと上段に構えた
エンベルトは武器庫で選んだレイピアを右手にダガーを左手に持つと、右手を前に伸ばして構えた。
「グ族、族長 エンベルト参る」
教わった作法通りに名乗りを上げる
 赤魔道士としてレイピアを使う時には左手には魔器を持つのだが、レイピアやサーベルと言った細剣は本来は左手にダガーを持つのが正しい使い方である、グ・エンベルトは剣闘士時代にその技をマスターしていて、今回は赤魔法は封印して戦うつもりだった。
 気合いと共にヘイハチが切り込んで来る、グ・エンベルトはその斬撃をレイピアで右外へ受け流すと
逆手に持った左手のダガーをヘイハチの首筋に切りつける、ヘイハチは素早く後ろに飛び
グ・エンベルトのダガーは空を切った。
「簡単には勝たせてはいただけない様ですね」
「貴公、かなりの使い手だな」
 ヘイハチは今度は刀を下段に構え、飛び込みながら、斜め上に切り上げ軌跡を辿る様に切り下げる
グ・エンベルトは今度も苦もなく受け流した
「『星眼』からの打ち込み、お見事」
「何? お主剣術を知っていのか?、ならこれはどうだ」
 ヘイハチは前方に飛び込むと素早い剣戟を打ち込んで来る、グ・エンベルトは『デプラスマン』で剣を受けながら後方に飛んで距離を取る
「『暁天』同じ様な技を私も使えます、お見せしましょう」
『コル・ア・コル』で一気に距離を詰め一閃、ヘイハチが一瞬怯んだところで
左足を後ろに引くと、姿勢を下げた半身になりレイピアを左後ろに構えた、そして一気に切り付ける。
「なんと『乱れ雪月花』か」
ヘイハチも驚いたがゲンヨウサイは更に驚愕した
「(何故、異国人が侍の技を使える?)」
ヘイハチは辛うじてレイピアを受けたが、グ・エンベルトの左手のダガーは今度は首筋にピタリと付けられている
「それまで!!、お見事」
奉行が声をかけた
双方が一礼した後、剣を納め奉行に向かって礼をする。
奉行の姫も少年も手を叩いて喜んでいる。

 「今度は俺の番だな、しかし相変わらずお前は器用だな、俺は不器用だからあんな戦い方はできんよ」
そう言うとジェーニオは先ほど選んだ戦斧を、片手で肩に担いだ
「おおー」
観衆から、どよめきが起こる
「なんと『公時』を片手で扱うとは、我が国では300余年使う物は居ないが、これは見ものだ」
代官は桟敷席から身を乗り出している、姫は食い入る様にジェーニオの事を見つめている。
「マツバ家 剣術指南役 ミツヨシ 参る」
「アラミゴ王族 エンベルト・ジェーニオ」
ジェーニオはそう名乗ると、少し照れた様な表情をした
指南役だけあってミツヨシの剣は凄まじい物だったが、ジェーニオは身じろぎもせず戦斧で受け流す、そして
「ではこちらから行かせてもらう」
ジェーニオも戦士の技は封印して斧術だけで戦う様だ
しかし、繰り出したその技は母譲りの四連撃だった、帝国の魔導兵器をも粉砕するその威力を
三撃目までは受け止めたミツヨシの刀だが、四撃目で耐えきれずに折れてしまった
「あ、これは申し訳ない事をした、名刀をダメにしてしまったか」
ジェーニオは構えを解くとミツヨシに頭を下げた。
「それまで!! 見事であった、ジェーニオ殿、天晴れな剛力だ、刀は武士の魂、貴殿は武士の心を弁えているようだ、グ・エンベルト殿の剣捌きも誠に見事、良い物を見せてもらった。クガネ奉行としてその方達の力量しかと見届けた」
 そう言うクガネ奉行の横でジェーニオを見つめる姫の表情を見てグ・エンベルトは
「(こいつまた気がついていないだろうなぁ、困った事にならなければ良いけど)
と思いながら、
「ありがとうございます」
と奉行に礼をした。

 「お二人がこれ程の武人だったとは、このゲンヨウサイ恐れ入りました」
「いや、ご心配をかけて申し訳無い、これで上手く行くと良いのだが」
だが、その時奉行が声をかけた
 「その方達、物のついでに一つ頼み事がある」
「はい、なんでしょうか」
「我が家には『青蛇の太刀』と呼ばれる家宝の太刀が二振あるのだが、ここ何百年抜いた者が居ないのだ、その方達試してみぬか?」
「はい、喜んで」
家宝の太刀と聞けば、二人共興味の方が先に立って、断る事など考えられない。

 数人がかりで持ってこられた二振の太刀、その太刀からは明らかに強力なエーテルの揺らめきを感じる
「(これは『蛮神武器』か?)」
 二人が太刀の柄に手を触れると
「う……」
二人共、同時によろめいた、そして同じ光景を見た、それは太刀の魂の記憶だった
「いかがされました、大丈夫でございますか?」
ゲンヨウサイが声をかけると、ジェーニオが
「大丈夫、今この太刀の魂の声が聞こえた」
と言った。
「なんと、そんな事が? で太刀はなんと?」
ジェーニオはグ・エンベルトの方を見ると「頼む」と言う顔をした。
 グ・エンベルトは話し始めた
 「ひんがしの国」の何処かの里の里山に巨大な青蛇が住み着いていて、里の守り神として
祠も建ててもらい里人から敬われていた、この大蛇は千年以上生きており、もう少しで『龍神』になる事ができた。
 しかしある日、大蛇は正気を失い、里人を襲い次々と飲み込み食い殺してしまった。
ただ、完全に正気を失った訳では無いので、心の中で『誰か俺を止めてくれ』と思いながら……
 そこに勝ち戦の帰りで里山の祠に戦勝の礼をしに来た二人の若武者が現れた。
大蛇はこの若武者に討滅され、その際、事切れる間際に正気に戻った。
 里人を守る筈が、逆に襲ってしまった自分を恥じた大蛇は、自分の鱗を剥いで太刀を作る様に若武者達に告げ、この後その太刀が若武者とその家を守ると約束したのである。
 若武者達は大蛇の言葉通り、鱗で二振の太刀を作ると、自分達の差料として愛用した。
大蛇の約束通り、若武者達は連戦連勝して、その父は領主として一家を起こす事になる。
 所が、ある年に流行り病により、この二人が相次いで亡くなってしまう。
戦には効力があったこの太刀も病には無力だったからだ、だがそれでもその家は時の将軍家から重用され
その子孫は今に至るマツバ家として栄えている。
 しかし、戦乱の世が終わったひんがしの国では、この太刀は家宝として大事にされてはいるが、
その後のマツバ家でも太刀を使いこなせる武人は現れず、太刀は悲しんでいる。
……とグ・エンベルトは話終えた。

 「なんと、まさに我が家に伝わる太刀の伝承と寸分違わぬ話じゃ、家宝の太刀を悲しませるとは
情けない」
「いえ、殿は立派なご当主でございます」
家臣の一人がそう声をかけたが、奉行は手を振って否定した
「確かにな、奉行、役人としてはワシは務めを果たしておる、だが「武人」としてどうかと言われると恥いる限りだ、先ほどは『刀は武士の魂』等と偉そうな事を言ったが、そのワシの刀はこれじゃ、見よ」
 成沢な拵えの奉行の刀は美術品と言える、だが小姓から受け取ったジェーニオは刀が軽いのに気がついた、そして刀を抜くと
……「これは?」
「わかるか、竹光じゃ、竹に銀箔を貼っただけの紛い物、ワシだけではなく、この場の多くの者の
刀が今はこれじゃ、平安が続いて誰も刀を抜く事など無くなり、重い刀を持つ事を嫌がったからな。
 我が家中でも本物の刀を持っているのは警護の者と「赤誠隊」の者共位であろうな、この様な有様では
家宝の太刀を抜く事など叶わんな」

 ジェーニオは奉行の竹光を小姓に返すと、グ・エンベルトの方を見た
「行けるか?」
「ああ、大丈夫だ」
 試合場中央で向かい合うと二人で同時に太刀を抜いた
「おう、これは」
奉行や指南役はじめ全員からどよめきが上がる。
 二人で演舞をすると、最初は仄かにだったが、やがて二本の太刀は呼応する様に発光し、一振り毎にその光は強くなる。
「まぁ、なんと美しい」
姫はもうジェーニオから目が話せない
 一通りの演舞を終えた二人は太刀を納めると奉行に一例して元の様に絹布で包むと返却した
「見事な太刀でした、お借りできて光栄です」
二人を代表してグ・エンベルトが奉行に礼をすると奉行は自嘲げに言葉を返した
「伝承通りだな、あの様に美しく輝く太刀だったとは、まさに宝の持ち腐れとはこの事か」
「恐れながら申し上げます、私は西方の事情に明るいのですが、このお二人は、西方エオルゼアで蛮神と呼ばれる悪鬼、魑魅魍魎の類を多数討伐した『英雄』、常人ではありません、それ故太刀が身を任せたのではと思います」
 家臣の一人がそう言うとイチアンは納得した様だった。
「おう、なんと、英雄殿の話は私も聞いておる、まさか貴殿方がそうとは、そうなるとこの太刀は貴殿方に持っていただくのが良さそうじゃな」
 奉行のその言葉に、一瞬だが、若い侍達からジェーニオ達に敵意が向けられる。
奉行の横に座っている少年も悔しそうな顔をしている。
「待ってください、家宝の太刀を頂く事などできません」
「ほう、要らぬと申すのか、だがそれではまた太刀を泣かせる事になる」
 ジェーニオは困った顔をして、グ・エンベルトの方を見た
「それでは、この太刀、我らがお借りいたします、我らはこれより戦場に出る身
マツバ家の家宝、我らの守り太刀として大切に扱わせていただきます、戦勝の暁には
それ相応のお礼と共にお返しいたします。。
 それに、そちらに座す若君様が、この太刀に相応しい侍になられると私達には思えます。
若君様が成人の折にはこの太刀も扱える武士におなりになるかと存じます」
グ・エンベルトはそう述べて、少年の方を見た。
 ここ数日ひんがしの国の歴史書や軍記物を読み耽っていたのは伊達では無い。
これなら奉行も家臣達も納得してくれるとの自信が有った、。
 少年はそのグ・エンベルトの視線の意味を悟った
「父上、これよりマツバ家の跡取りとして、家宝の太刀に相応しい侍となるべく、なお一層の精進をいたしまする、ミツヨシ、私を鍛えてくれるな」
剣術師範役ミツヨシは平伏しながら答える
「はは、若君の天晴なお言葉、このミツヨシ命に変えましても」
「タロウマル、よくぞ言った、その覚悟 父は嬉しいぞ、ではジェーニオ殿、太刀は預けたぞ」
 先ほどのまでの若い侍達の敵意は消えて、感極まって泣いている家臣もいる。
 二本の太刀はゲンヨウサイとオボロの手によって恭しくその場から下げられた。
太刀の扱い方にも作法があり、流石に二人はそこまで詳しく無いからだ。

 「それにしても、この様な客人が訪れた事は我が家名の誉、これよりは酒宴といたそう」
と言う奉行の言葉で、城の大広間に席を移して宴席となり、二人共珍しい東方の食事と美味い酒を振るまわれ、肝心の同盟軍の兵達のクガネの通過と補給については何一つ話せないままになってしまった。
 中央にしつられた舞台では東方の衣装を纏った美しい女中が舞を踊っている。
「いや、東方の酒宴は楽しいなぁ、どこでもこうなのですか?」
ジェーニオやグ・エンベルトだけでは無く、ゲンヨウサイやオボロの席にも美しい女中(実は芸妓である)が一人ずつ、付きっきりで酌をしてくれる。
そうジェーニオに聞かれたミツヨシは笑いながら
「いやいや、御奉行の宴席は特別です、殿下はお気に召しましたかな」
「その殿下は辞めてください、ジェーニオで良いですミツヨシ殿」
先ほど剣を交えたミツヨシともう長年の知人の様になっているジェーニオである、酒を酌み交わしながら剣技についてあれこれと楽しそうに会話をして、目の前の女中がいつの間にか入れ替わっている事に気がついていない。
 「あの、ヘイハチ殿、ジェーニオの前に居るのは女中では無くて、先ほどお見かけした奉行の姫では無いのですか?」
「そうです、アヤ姫です、一度は末の国御領主の御次男に嫁いだのですが、死別されて出戻って来た方です、美しい姫で奉行の自慢の娘です、この様な酒宴の席で、しかも御自らお酌をされるなど珍しいことです」
「(やはりか、しかしあのバカ、例によって全く気がついていない)」
 昔からジェーニオは女性にモテる、だが本人には全くその自覚が無く、しかも驚くほど脇が甘いので
女性問題でトラブルになった事が何度かあるのだった、クロエの時もそうだが、来る物は拒まずを
絵に描いた様な男だった。
 
 その少し前、ゲンヨウサイは宴会の前に一人だけ奉行に呼ばれていた
「コタロウ、今日は大義であった、良き客人を紹介してくれた感謝するぞ」
「は、勿体無いお言葉」
「それでな、ジェーニオ殿の事、詳しく教えてくぬか」
「は、私もまだそれほど詳しくは……とにかくウルダハ商館からは大事な客人なので粗相の無い様にと言いつかっております、お二人とも美しい奥方連れで共の者もそれなりの手練れと見受けますが」
「そうか、既に奥方が居るのか、聞いたか姫、婿とする事は諦めろ」
隣の部屋の気配はアヤ姫だった様だ
「お主も存じていようが、アヤの前の夫は病弱で子も残さず身罷ってしまったからな、夫を病で失った女は縁起が悪いと再縁の話も無く、姫が不憫でならんのだ、その姫がジェーニオ殿に一目惚れしたと申すのでな、異国人とは言え王族なら身分も姫に相応しいと思ったのだが残念だ」
「はい、ではせめて一夜の逢瀬でも良いので叶いませぬか、父上」
「どう思う、コタロウ」
「今ご一緒している奥方は第三夫人だと伺っております、なので望みが無いわけでは無いかと」
「父上、宴の席に出る事お許しいただけますか?」
「うーむ、仕方がない、好きな様にいたせ」
イチアンは父としては複雑な心境であったが、ここは娘の希望通りにしてやろうと考えた。

 そして結局、そのまま泊まっていく様に言われた二人は、それぞれあてがわれた客室に入った。
もちろんゲンヨウサイ達とは別である、

 二の丸御殿の中庭に面した賓客様の部屋は豪華な作りだった
「これが東方の客室か、壁やドアの装飾も見事だな」
ジェーニオが呟くと、隣の部屋との仕切りが開いて、そちらの部屋には既に布団が用意されており、薄手の着物を纏った美しいアウラ族の女中(とジェーニオは思った)が
「今夜の伽をさせていただきます」と三つ指を突いて挨拶をした。
ジェーニオは東方の習慣についてゲンヨウサイより聞いていたので、大様に頭を下げると
「世話になる、だがまず汗を流したいのだが」
「はい、こちらに湯も用意してございます」
と女中は庭に面した小部屋の襖を開けた、そこには湯を並々と湛えた露天風呂がある。
「これは素晴らしい、庭を見ながら風呂に浸かれるとは」
シロガネの屋敷の風呂も見事な物だったが、この城の風呂は更に立派だった。

 一方のグ・エンベルト 女中と一緒に別の風呂に浸かって、湯にお盆を浮かべその上に酒瓶を乗せて、女中の酌で酒を飲んでいる。
「族長様は風流な事をご存じなんですね」
「以前、東方の事を書いた本を読んだからね、これは一度やって見たかった、雪を見ながらでは無いのが残念だな」
「雪見酒でございますか?、今は雪の季節では無いですし、クガネではほとんど雪は降りませんよ、生憎今夜は満月でもありませんね」
「(これ位ならジュリア達も許してくれるかな、後は酔ったふりをして寝てしまえば問題なし)」
それならこの女中に恥をかかせた事にならないし、後で問題になる事も無いと思った。

 翌朝、用意された豪華な朝食を食べた後、二人は今度は二の丸御殿の黒書院と呼ばれる部屋に招かれた
ここは奉行の私的な応接室らしい
 
 「さて、その方らからの申し入れなのだが、知っての通り我が国とガレマール帝国とは不可侵協定を結んでおる、またクガネには帝国の大使館もあり駐在武官も滞在している」
「はい、存じております」
「それ故、エオルゼア同盟の遠征軍の滞在、補給は一切認められない」
「お待ちください」
 奉行はそこで笑顔を浮かべた
「まぁ最後まで話を聞け、正規兵は認める事はできんが『浪人』お主らの言葉では『冒険者』だったな
が、クガネを通る事や兵糧を買い付けたりする事はお構い無しとする、意味はわかるな」
「はい、ご配慮感謝いたします」
「それと、その戦の折にはクガネで浪人を集って一緒に連れていってくれ、その事については後でミツヨシと相談をして欲しい」
「はい、そうさせていただきます」
「では、無事本懐を遂げられる事を願っておる、事が片付いたらまた城に遊びに参れ」
奉行はそう言うと席を立った。
ジェーニオ達は作法通り、頭を下げてそれを見送る。

 控えの間に戻った奉行は、またゲンヨウサイを呼んだ
「昨夜の首尾、姫に聞いた所、上々だったそうだ、不憫だが想いを叶えてやれて良かったと思う、そこでだ、コタロウ、お主ジェーニオ殿の事、ちと詳しく調べて参れ、今後の動きを知らせるのも忘れるなよ、これはその資金じゃ」
「ハハ、畏まってございます」
想いの他の大金を手にして喜んだコタロウことゲンヨウサイである。

 城を出た一行はウルダハ商館に向かった、リセやアルフィノに城での首尾を聞かせる為である。
オボロはそこで別れて、一度シロガネに戻った、ジャックと自分の仕事をする為だ。

「なるほどね、公式には許可できないが黙認するとそう言う事だね、うまく話をつけましたね、さすが二人の英雄殿だ」
アルフィノは兵站の心配が無くなった事に素直に喜んでいる。
「それで、ゴウセツ殿の手がかりは?」
「残念ながらまだ何も、二人の奥様達にも捜索に参加してもらっているのだけど、どうも人手が足りなくてね……あ、この似顔絵を持って聞き込みをしているんだけど、君達にも頼めるかな」

三人はクガネ商館を出て、街に向かった、
「旦那様方、人探しの方は私の手の者に任せていただけますか、この似顔絵の方々はどなたです?」
「男の方はゴウセツ殿、ドマの元侍頭だ、女性の方はユウギリ殿、オボロ殿と同じドマの忍びだ」
「なるほど、身を隠している忍びを探すのは至難の技ですが、そのゴウセツ殿なら簡単に見つけられるかもしれませんな」
ゲンヨウサイが手を上げると直ぐに侍女姿の忍びが現れ、似顔絵を手に消えていった。

Comments (0)
Post a Comment

Community Wall

Recent Activity

Filter which items are to be displayed below.
* Notifications for standings updates are shared across all Worlds.
* Notifications for PvP team formations are shared for all languages.
* Notifications for free company formations are shared for all languages.

Sort by
Data Center / Home World
Primary language
Displaying