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【RP】エオルゼア異聞:怪談百物語《第弐夜・中編》

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«第弐夜・前編   第二夜・後編»

※RP[ロールプレイ]記事です。
※2018年に行ったユーザーイベント、納涼:怪談百物語にて語られた内容のログを元に構成されております。
※参加者各員の語りをまとめた短編集となっているので、どの物語からでもお読み頂けます。


++++++++++


怪談:百物語
《海都の書店、和綴じの装丁を開けば短い怪異譚が並ぶ。作者の名には見覚えがあるかもしれない》


第五話残された手記 (語り部:フォレスター・女性)
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鬼哭隊 トレビウスの記録
ハウケタ御用邸。 かっては幻術皇の屋敷だったそうだが、
今では妖異どもの住処とは・・・。
まぁ、こうして討伐隊に任命されなければ
中を見る事なんざ、一生なかっただろう。

豪華だっただろう屋敷はひっくり返されたような荒れっぷりだ。
辺りからはおどろおどろしい気配が押しせて
時折金切り声まで聞こえてきやがる。
ソファーや家具が壁のように積み上げられてやがる
尋常じゃねェ・・・・。

屋敷の中は妖異が使用人よろしく
はびこってやがる。
だが、それほど強力な奴はいないようだ。
しょせん女主人のたしなみ程度だな。

なんだあれは!?
不気味な女が近付くと
ローガンが化け物になっちまった!
グレーデンもだ!
あいつら・・・手当たり次第仲間を襲ってやがる
いったい、何が起きているんだ?!

さっきまで聞こえていた
仲間の叫びが聞こえなくなった・・・・。
俺は屋敷の一室で息をひそめているが
このままで何時までもつか・・・・。

まさか、こんな事になるなんて・・・。
食い物も水もない。
ここに居れば奴らからは見つからないようだが
食料と水を何とか手に入れなければ・・・。

部屋に居たネズミを取ろうとしたが
奴らのうち1体に見つかってしまった!!
さいわい倒す事が出来たが
こいつ、鬼哭隊の装備の残骸をまとってやがる・・。
こいつも元は・・・・。

しかし、久しぶりに食べ物と水分を口にする事ができた。

どれくらい時間が立ったのだろう。
新たな食糧を探さなければいけない。
喉の渇きもひどい・・・。

くそっ!目玉の化け物に見つかった!
なんとか逃げる事が出来たが
妙な玉にぶつかって・・・・・
気がつくと牢の中に居た。
気配からすると外に出られたわけではないようだ。
任務前に見た見取り図からすると
おそらく屋敷の地下牢だろう。
逃げる途中で槍を失ってしまい
どうにもできない・・・。
幸い石畳に液体が溜まっている
生臭さとさび臭さがあるが
どうにか飲み込んだ。

時間の経過が分からない。
救出隊は来るのだろうか?
腹が減った・・・・。

体が重い
力が入らない・・・。
寒気が止まらず、俺は石の床に・・・・
ここまで・・なの・・か・・・。

目が覚めた。生きている!
体を休められたせいだろうか・・。
前よりも楽になった気がする。

旨そうなアンテロープステーキが目の前に落ちていた
拾おうとすると
床からローガンが出てきて食べてしまった!
あいつめ!
食べ終わったらアンテロープになって
逃げて行きやがった!
今度は俺が食ってやる!

グレーデンが体中の皮膚の下からポコポコと出てくる
潰しても潰しても出てくる。
きりがない。
やつら、ひとの体から勝手に出て来ておいて
俺の事をバカにしたように笑いやがる
こんな目に会っているのに
もう少し労わってくれてもいいだろう!

音だ・・・・上から音がする?!
妖異どもの出す音じゃない
人の声と剣戟の音
助けが来たのか!
音がどんどん近づいてくる
物陰から様子をうかがうと
見知った顔が見えた! ジェイスだ!
やった!助かったぞ!
俺はジェイスに駆け寄った!
しかしジェイスは顔を引きつらせ俺にまで切りかかってきた
ジェイス、おれだ!どうして分からない。
必死に叫ぶが、ジェイスはおれに剣を振りまわし続ける!
ジェイス、どうして俺が分からないんだ
ジェイスの剣が俺の左腕を斬り飛ばす
ジェイス、どうして俺が分からないんだ。
俺はなおもすがりつく。
ジェイスの剣が俺の腹を裂いて行く。
ジェイス、どうして俺が分からないんだ。
俺はジェイスの喉元に食いついた
ジェイスから温かい血がほとぼしる
暖かい血が俺ののどに流れ込んでくる
ジェイス どうしてお前は美味いんだ
ジェイスの腹を裂きはらわたを貪る
うまい!
頭を潰し 中をすする
ウマい!
足をちぎり筋肉を齧る
美味い!
ウマいウマいウマいウマいウマいウマい
      ウマいウマいウマい美味いウマいウマいウマい
ウマいウマいウマいうまい旨いウマいウマいウマい
ウマいウマいウマいウマいウマいウマい

ウマかった・・・・・・・。
次は・・・
つぎは・・・・・・・。
あいつだ・・・・
見た事のない奴だが、あの斧を持った戦士はウマそうだな・・・・。



第六話 :愛するあなたをお迎えに (語り部:レン・男性)
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さて、俺の番ですか・・・正直、皆様のような恐怖体験や噂話とはとんと縁がなく
ですので、ひんがしの国に伝わる御伽草紙の怪談話を一つ持参した次第です。
東方にお住まいの方は聞いたこともあるかもしれませんが、小休止がてらゆるりとお付き合いください
語り部は手に持った冊子を膝の上に置き、しおりを挟んでいたページを開くと静かに語り始めた。
昔むかし、一人の女に恋をした国主のお話しです。
女は大層美しく、一目で夢中になった彼は毎日毎日足しげく彼女の元へ通い、逢瀬を重ねていきました。
しかし、女と会うようになってから、男は日ごとにやせ細り目の下にはクマが出来、頬は削げ落ち骸骨のような有様。とうとう歩くことさえ難しくなっていったのです。
見かねた部下たちはブギョウの中でも特に力のあると言われる僧を城に呼び出し、国主を観てもらうことにいたしました。

城へやってきた僧は床に臥せる国主を一目見るなり
「国主殿は大層悪いモノノ怪に憑かれておる。このままでは憑り殺されてしまうだろう。
助かりたくば扉へこの札を張り一歩も外へ出てはならぬ。女が訪ねてきても開けてはならぬ。
朝が来るまで一歩も部屋から出てはならぬ」
そう言い残し、札を部下の者に渡すと城を後にしました。
部下たちは半信半疑な国主を何とか説き伏せ、扉に頂いた札を張り、更に夜通し部屋の前で見張ることにしたのです。

さて、その日の夜・・・
国主はどうにも寝付けぬままでいると、ずり・・ずり・・・と床を這うような音が聞こえてきます。
「誰か。妙な音がするぞ。おい・・・誰かおらぬのか?」
何度も大声を張り上げますが、扉の前にいるはずの部下たちから返事は有りません。
代わりに「旦那様。旦那様・・・」と、毎晩聞いた女の声が。
「ああ、旦那様。何故今夜は逢いに来てはくださらなかったのですか。入れてくだしまし・・入れてくださいまし・・・」
時に悲し気に、時に何処か恨めし気に呟きながら扉を爪でひっかくような音・・・
ここにいたって、彼はようやく、これが尋常ならざるものだと理解しました。
余りの恐怖に布団をかぶり、「され・・去れ・・・!」と呪文のように唱え続け・・・
・・ふと、扉をひっかく音が止みました。
「ああ旦那様、私は確かに生者ではございません。ですがあなた様をお慕いしているのは真実なのです。
もうじき朝日が昇る。さすれば私は消えてしまうでしょう。
どうかその前に一目だけ、お姿を見せてくださいまし・・・」
悲しげに語る女の声色に、思わず男は僧の忠告を忘れ布団から起き上がり、札を剥がし扉をあけ放ちました。
「ああ、うれしい・・・・ともにいきましょう、だんなさま」
男が最期に見たものは
肌が腐り墜ち、血で染まった着物をまとう、口が裂けた化け物の姿だったそうです。
―――以上。ご清聴ありがとうございました。



第七話 :どうどうめぐり (語り部:ムーンキーパー・女性)
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これはまだ僕が天藍商会を立ち上げる前の話だ。
当時作家業をしていた僕は、執筆に詰まるとよくコスタ・デル・ソルのパブでぼーっと海を眺めていた。
その日もやる気が起きなくて担当編集者から逃げ出して、気がついたらとっぷり日が暮れていてな。
季節は夏で、ラノシア特有の暑さと湿気の織り混ざる、のしかかるような蒸し暑い夜だった。
いつもはテレポで帰るんだが、その日はちっとばかし酔っ払っていて、仕方なくチョコボキャリッジを拾ったんだ。
壮年のヒューラン族の、人の良さげな運転手だった。
キャリッジが走り出すと、汗をかいた身体に夜風が心地よかったのを覚えている。
「ミストヴィレッジまで」と行き先を告げると、運転手が話しかけてきた。
「ミストヴィレッジに住んでるってことはもしかして冒険者さん?」
「んむ、そうだよ」
語り部はうなずいた。
「あの近く、ラノシアオレンジを作ってるでしょう?よく農場まで買いに行くんですよ」
「私は下戸なんですけど、あれで作ったオレンジジュースに目が無くてねえ」
「へえ、そうなのか」
正直その時は酔っ払って眠くて、あまり会話する気力がなかったのだがね。
語り部は溜息をついてみせた。
話し好きの運転手なのだなと思ってしばらく適当に相槌を打っていた。
そうして話し込んでいると、妙な違和感を感じ始めたんだ。
こちらの返答とまったく関係のない話が急に出てきたり、なんとなく話の前後が合っていなかったりね。
まあ、そういう話し方をする御仁はたまにいるだろう?
僕も酔っ払ってぼんやりしていたし、特に気に留めてはいなかった。
が、しばらくすると
「…ところでミストヴィレッジに住んでるってことはもしかして冒険者さん?」
「ん?うむ」
「あの近く、ラノシアオレンジを作ってるでしょう?私好きなんですよ。こうみえて下戸なんですがね」
「……」
語り部は考えた。
「冒険者さんっておっしゃいましたよね?」
「ああ」
「レッドルースター農場の近くはいいですよねえ、実はラノシアオレンジが好きでして」
「……うん?」
「ミストヴィレッジなんですね、あ!じゃあ冒険者さんでしょう?」
「あの近く、農場が多いでしょう。あそこで作るオレンジジュースに目がなくて」
「冒険者さんだっておっしゃってましたよね?」
語り部は首を横に振った。
もうこんな調子でなあ。会話がずうっと同じ内容でループし始めたんだ。
物忘れが酷い年齢には見えんし、そういった類のものと違う…なにか得体のしれない不気味さだったよ。
僕の空ろな相槌にかまわず、運転手は延々同じ話題を繰り返してくる。
キャリッジが走るラノシアの夜道は暗く、夜風に冷やされて寒気まで感じていた。
語り部は眉をひそめた。
突然、ふっと会話が途切れた。
この奇妙な会話から開放されたのか?と思った瞬間、
ドンッ!という衝撃音がキャリッジを揺らした。
驚いて顔を上げると、運転手が左足を、まるで何かを踏み殺すかの勢いで床に打ち付けていたんだ。
それも一回ではなく何度も何度も。ドン!ドン!ドン!ドン!
運転手は足を、今度は貧乏ゆすりのように揺らし始めた。
力いっぱい足を上下するもんだから、キャリッジがぐらつくほどだった。
僕がさすがに狼狽えていると、
「お客さぁん、ミストヴィレッジに住んでるってことはもしかして冒険者さん?」
…そう、また同じことを僕に尋ねてきたんだ。
運転は明らかに荒くなっていて、道を曲がるたびに右へ左へと体が振られる。
このとき僕は、もはや違和感や不気味さなんかじゃなくて、明確な恐怖心を抱いていたよ。
自分の命を、明らかに異常な男の操縦に預けている。
これを意識したときの恐怖は今でもはっきりと思い出せる。
…そして、恐ろしいことにキャリッジは明らかにミストヴィレッジへは向かおうとしていない方向へと進路を変えたんだ。
もう限界だった。僕はやっとのことでなんとか声を掛けた。
「……、下ろしてくれ、ここで。ここで大丈夫だから」
「あれ、そうかい?ここじゃ遠くないかい?」
運転手は、ごくごく落ち着いたトーンで返してキャリッジを街道の脇に寄せた。
話し相手にしてごめんねえ、なんて言いながら、先ほどと比べると不自然な程に自然な様子で、僕に運賃を告げたよ。
さっきまでのあれは酔っ払った自分が神経質に感じ過ぎたのか?一体何が現実だったのかわからなくなるような心地だった。
異様な状況からの開放感と乗り物酔いで、ちいと放心状態でもあった。酒の酔いはもーすっかり醒めていたがね。
とにかく急いでギルを支払い、荷物を引っ掴んで外へ足を踏み出そうとすると、運転手が人の良さげな笑みでこう言った。

「……お客さん、もしかして冒険者さん?」

語り部は目を閉ざした。
以上が僕の体験した怖い話だ。
この後急いで家までテレポしたら門前に担当編集者が突っ立っていて、……それもめちゃくちゃ怖い話になるんだが、
……まあ、語ると長くなるのでな。ここではよしておくとしよう。



第八話 :黒渦正規兵噂話 (語り部:サンシーカー・女性)
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さて…、軍隊には怪談話がつきものです
やれ死んだはずのあいつを見ただの、誰も乗っていない幽霊船を見ただの。
そういった話には枚挙に暇がありません
今回のお話も、その数多くのお話の1つです
これは、今から数年前のお話。とある黒渦団の士官のお話です。
当時のわたしは―――…
…失礼。
当時の彼女は訓練兵でして、訓練の総仕上げ、実地演習のためにとある基地に配属されました。
訓練兵にとって最も重大な課題が「衛兵勤務」でありました。
衛兵勤務とは即ち歩哨…、平たくいえば警備です。
訓練中の彼女らは数日に一度、警備兵として交代で基地内のあちこちを警備しておりました。
さて、ここで初めて警備を行う新兵たちは、必ず上官に脅かされるのがこの基地でのしきたりでした。
「今日はお前が弾薬庫の当番か。
 こんな雨の日は出るらしいからな、気をつけろよ」
と、何か曰くありげに上官が口にします。
「出る、とは何のことで御座いましょうか」
新兵が尋ねると、上官は嬉しそうに続けます。
「火薬庫の北側に、海に面した断崖があるだろう?
そこに警備兵が身を投げて死んだ。随分前の事だがな」
「なぜ、自殺など?」
「今日みたいな雨の日。深夜の警備の真っ最中に、やつは居眠りをしていたそうだ。
 運が悪いことに、そこへ丁度巡察将校が来た。
 そいつがまた意地の悪い奴で、警備兵が持ってた槍をこっそり取り上げて、警備兵の詰所へ持って帰っていった。
 槍を見せられて直属の上官は青くなったらしいが、もっと青くなったのは居眠りから覚めた警備兵だ。
 なにしろ警備中に武器をとられたわけだからな。
 良くて懲罰、悪ければ軍法会議だ
 これまで積み上げてきた物が全部崩れてしまうことに悲観して、飛び降りた、というわけさ。
 それ以降、雨が降った日の警備中に聞こえてくるらしい」
「な、何が聞こえるんです…?」
「崖の向こうからくぐもった声で、返してくれ…、槍を返してくれ…、とな」
「やめてくださいよ、今日、私、そこの当番ですよ」
上官は「だから言ったんだ」と笑うばかりでした。
彼女としても怪談話がただの冗談であることはわかっていました。
話には尾ひれがつくものです。
どうせ、警備兵は何らかの事故で死んだだけの話なのでしょう。
或いは、本当は死んですらいないのかもしれません。
誰かが別の誰かから聞いた話を誇張して話す噂好きがいるだけなのかも。
結局、それ以上気にすることはなく、前任のくたびれた甲軍曹と交代して弾薬庫の警備を開始しました。
それは、雨の降る、けれども暑苦しい夜でした。
基地の周辺は明るかったのですが、弾薬庫があるのはその光がぎりぎり届かないような基地の外れです。
更には、霧のような雨とすぐ傍に建てられている小さな篝火が何とも言えない屈折した光を生み出すので、
お世辞にも見通しが良いとは言えませんでした。
どんな雨の中でも、警備兵は傘を差しません。
歩兵戦を主体とする不滅隊などならまだしも、荒波駆る海の黒渦団です。
土砂降りの雨が耳の先から尻尾の先まで濡らしていましたが、彼女は愚直に立ち続けました。
彼女のすぐ隣では、篝火が、横殴りになり始めた雨に揺らされていました。
警備と言っても彼女が実質的にすることはありません。
黙ってじっと立ち続け、上官が通りかかれば敬礼するくらいのものです。
こんな深夜であれば自分以外の気配は誰もありませんからすることもありません。
耳の中に入ってきた水を数分ごとに頭を振って追い出すこと以外にやる事がない彼女は、すぐに暇になりました。
そうなれば、思考が夕刻に聞いたばかりの怪談話に偏ってしまうのも不思議なことではありませんでした。
とはいえ、こんな雨の日に居眠りなんて出来るわけがない。
出来るとすればそれは相当鈍感なやつに違いない。
そんなことを考えて、件の者を馬鹿にしたのがいけなかったのかもしれません。
 カエシテ…
それは唐突に、崖の方から聞こえてきました。
周囲に反響するような、重く、低い声でした。
耳の中の水を落とそうといた彼女は、頭を傾けたまま硬直しました。
反対側の耳に水が溜まっていくのもお構いなしに、ただ、じっと、今の言葉を反芻していました。
すると、再び
 カエシテ…
彼女は弾かれたように姿勢を正しました。
「だ、誰か? 所属と階級は!?」
誰何してみるも、返答はありません。
やはり聞き間違えだったか…?
そう思った彼女が息を衝こうとする刹那、みたび、
カエシテ…
聞き間違いではありませんでした
彼女は声が聞こえてきた方向へと、断崖を睨む様に見つめていました。
「誰か!」
叫ぶようにした二度目の誰何にも返答はありません。
ただ、彼女の言葉を無視するように、陰気な声は断続的に、繰り返し響き続けています。
彼女は剣の柄に手をかけ、そこで自分の手が震えていることに気が付きました。
はぁっ、はぁっ、と激しい動機が、揺れる視界が、自分が異常事態に巻き込まれていることを伝えてきます
見えているのは、消えかけの篝火が照らしている僅かな範囲だけ。
目の前の断崖の、丁度上辺より上はぽっかりと黒い空間に切り取られて、何も見えませんでした。
その
断崖に
白い手が、ゆっくりと、伸び。
それを見た彼女は青ざめ―――
 ザッ
と、背後から。
足音が。
彼女は瞬時に抜刀し、足音に対して刃を向けました。
「ひぃっ!!」
「…大甲士殿?」
しかし、そこにいたのは生きている生身の人間。
彼女に怪談話を聞かせたあの上官でした。
みっともなく尻餅をつき、怯えた表情で彼女を見つめていました。
ただただ、突然喉元に剣先を突きつけられた恐怖におびえていたのです。
自分よりも醜態をさらす者がいれば、人は落ち着くものです。
チラリと断崖の方へと目を向けましたが、もうそこには白い物は全く見えず、声も聞こえませんでした。
気が付けば、張りつめていたような空気もどこかへ霧散しているような気がします。
彼女は剣を降ろして、上官を助け起こしました。
彼は新兵の評価を含めた巡察の為に、ここまでやってきたそうです。
「…い、一体、どうしたのかね?」
直前まで新兵に剣を突きつけられていた上官は、未だ震える声で彼女に尋ねました。
彼女はしばし悩みましたが、結局、笑って誤魔化す以外の方法を思いつきませんでした。
彼女は納刀した片手剣の柄をポンと叩きながらこう答えました
「何、幽霊がいたから切り払ってやったのですよ」
さて、時は過ぎて数か月後。
上官に刃を向けたことが問題になることも無く、彼女は無事に訓練課程を修了して少甲士に任じられました。
そんなある日、幹部の査察に同行して、かつて訓練を行った件の基地を訪れることになりました。
ふと、怪談話がどうなっているのか気になった彼女は、空いた時間を見つけて、近くを通りかかった訓練兵を捕まえました。
1,2人と話を聞いてみましたが、どうも彼女の目当ての怪談は知らない様子でした。
何だと白けてしまいましたが、最後にもう1人と捕まえてみれば、その人はどうやら件の怪談話を知っているようです。
話をすれば、実際に幽霊を見たという人に会わせてくれる、と。
その兵に連れられて食堂へ訪れれば、そこには自意識過剰そうな新兵が待っていました。
彼は自分を尋ねて来た上官の姿を認めて、嬉しそうに、得意気に語りはじめました。
「いやぁ、俺ぁ見たんですよねぇ。
あれは雨の降る日の深夜1時くらいでしょうか。
何だか急に辺りが寒くなってきて・・・・
おかしいなぁ、でも、こんなに寒いはずないよなぁ。
そう思って、周囲を見渡すと…
いたんですよ。
―――――ミコッテ族の女剣士が!」



»後編(2020.8.15刊行!)につづく


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