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霧が深く、人の声がするのに姿が無いような時。そんなときには”魔”が出るから、その声に従ってはいけないという話。
それを最初に置いて、話を聞いてね。
ある日、その女の子は友達と一緒に集落の外へ出て、果物を集めたり、野うさぎを追いかけたりしていた。
けれど夢中になっていたからか、あるいはふと…気が散ったのか。その友達とはぐれてしまったのよ。
語り部は、ゆったりとした動作で帽子のふちを指で摘んだ。
やがて霧が立ち込めて、景色も分からなくなる。そうすると…
声が、
聞こえてきたの。
それはひそひそ声のような、喋り声のような。
それは悲嘆のような、怒りのような。
そんなないまぜの言葉。いつのまにか、女の子は自分が呼ばれていることに気付いた。
名前を呼ぶ声に、聞き覚えのあるものも聞こえたというわ。
行くべきか。
行かざるべきか。
…どう思う?
霧深い森の中で、知り合いの声…
その声に従うべきかしら? 女の子は迷ったけれど、結局その方向には行かないことにした。
迷いながら歩いていると、見覚えのある道にいきついた。雨が降り出したけれど、霧は晴れていく。
その後は無事に帰ることができたそうよ。
もしも
もしもその声についていっていたら、どうなっていたのか…?
語り部は帽子を目深に被った。その視線が読めなくなる。
それは誰にも分からない。
語り部の口元が、微かに笑みの形に歪んだ。
……ただ。
このあいだ、見たのよね
語り部は声をひそめた。
霧深い森の中で…不安げにきょろきょろあたりを見回す…栗のような、赤のさした茶色髪の女の子。
迷ったのかと思って、連れて行ってあげようと思って声をかけたんだけど、
気付かなかったみたいで、そのまま霧の中へ消えてしまったわ。
あのまま迷っていなければいいけれど…どうかしらね?
語り部は懐をさぐった。
…おっと。失礼
まだ話したいところなのだけど…ちょっとごめんなさいね
すぐ来るから…森のことでも話しながら、ちょっと待っててちょうだい?
語り部は帽子を目深に被ったまま、座る人の間をすりぬける。
……………
……
…
はー…
…失礼、ちょっと遅くなっちゃったわ。
任務が立て込んじゃってね
帽子? …なんでそんなことを?
語り部はかばんから帽子を取り出した。
外に落ちていたけど。誰かの落し物かと思って。
……まあとりあえず。私が最初って、リンクシェルの通信にのってたから。
あんまり怖くない話になっちゃう…ちょっと不思議な話くらいだけど。
語り部が執筆者の方向を向くと、その左頬に薄くある刺青が蝋燭の光に照らされる…
すー…はぁ。
語り部は息を整え、目を閉じて、また開いた。
…さて。私の話なんだけど。怖いというか、不思議な話ね。
昔、私は黒衣森のある集落に住んでいた。その時の話。
その時の友達と一緒に森に出て、木の実を集めたり、薬草を取ったり…たまに動物を追いかけたりしていたの。
けど夢中になっているうちに、ふと気付くと周りが霧に覆われていて…友達ともはぐれてしまった。
語り部は目を閉じた。
……いつも見慣れた道も、その時のとても濃い霧は覆い隠してしまっていた。友達ともはぐれてしまってね
すると不思議なことに、声がしたのよ。知らない人間の、色々な声で、私の名前を呼んでいた。
「個人名」
「こっちだよ」
ってね
語り部はもとの調子で語り始めた。
だけど私もそれなりに警戒心はあったから、そういう声に従うことはしなかった。精霊のいたずらかもしれないとも思った。
そんな風にして歩いていると、不思議な声がした。
聞き覚えがあるような…
無いような。
その声はこう語りかけてきたわ。
「迷子なの?」
声の方向を見ると、森のような、けれど違うような、緑の人影が見えたのよ
私はそれで
……それで、肯定してはいけないと思った。二度と帰れないと感じたの。
だから、その声は聞こえないフリをして…気配はずっとついてきたけど、振り返ることもしなかった
そうしていたらいつのまにか霧は晴れて、見覚えのある道にでて…友達とも合流できたわ。
友達にその事を話して、家でも話して…そこで知ったんだけど。
語り部は視線を聴衆に巡らせた。
「森で霧が出て、声が聞こえて。もし聞いたことのある”ような”声が紛れても、それは聞いてはいけない声だ」ってね。
もしあの声について行ってたらどうなったのかは……今ではちょっとわからないわね。
怖いというより、ちょっと不思議な体験の話ね。…まあ、そんなところよ。
……おしまい。
なんか…みんな変なこと言ってたけど、何か会ったのかしら?