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Juliette Blancheneige

The Meat Shield

Alexander [Gaia]

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『Sweetest Coma Again』4(前)(『Mon étoile』第二部四章)

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4-1

「貴方たちは……本当にあの純潔派の生き残りだとでもいうのですか!?」
 リリの言葉に込められた真摯さに、仮面の少女は感じるところがあったようだ。
「その物言い。見てきたように言う……。これは、力づくでも喋らせなければ」
 言いながら、少女は仮面を外した。光迎教会の大主教と名乗った少女――ソフィアが挑発的に笑っていた。
「改めて自己紹介しようか。私の名はソフィア・コムヌス。『純潔派』大主教。この穢れた世界を浄化する、唯一正当なる教えの後継者」
 コムヌス、という姓にリリとラヤ・オは激しく動揺した。コムヌス。それは、アイ・ハヌム学園の学園長、メリナ・コムヌスと同じ姓だ。
「あんた、メリナ学園長の……!」
 だが、ソフィアはもう取り合う気はないらしい。彼女が指を鳴らすと、その周囲に多数の魔法陣が光り輝いたのだ。そして、同時に彼女は不敵に笑い、魔法を唱えた。
「リジェクト・ホーリー!」
 白光が、仮設本部のテントを消滅させる。従来のホーリーよりも遥かに範囲の広い、超広範囲魔法攻撃。リリたちが警告を発する暇もなかった。詠唱破棄した回復魔法で可能な限りの範囲を支えたが、仮設本部にいた多くの兵が倒れた。
「なんということを……!」
 ラヤ・オの結界で護られたバティストが呻きつつ、槍を構える。悲嘆に暮れる暇はなかった。なぜなら、ソフィアの周囲に輝いた魔法陣からは、彼女同様白いローブに仮面の者たちが幾人も姿を現したからだ。
 ソフィア・コムヌス。
 白いローブと仮面の者たち。
 それから、白いローブの者たちの傍らに侍る、人型サイズの魔道石像。
 最後に現れた者だけ、他とは様相が違った。
 その男は跪いている。目隠しをされ、両手を後ろ手に鎖で縛られており、その鎖の先はソフィアに握られていた。震え、慄くフォレスターの男。リリとバティストの対応に当たった男、『聖七天』の聖印を村に落とした者。テランス・プジェだ。
「あの人……!」
 驚きの声を上げながら、リリは彼の異変に気付いていた。ラヤ・オもサイラスも気付いた。
 プジェの体内は、エーテルのバランスが激しく狂っていた。
 光属性が極端に強い。
 光属性に偏向したシャードやクリスタルを大量に取り込ませればこうなるだろう、という変化だ。
 周辺で警備に当たっていた双蛇党兵士たちが慌てて戻ってくる。取り囲まれた状況に一切動じず、ソフィアはプジェを蔑みの目で一瞥した。
「キミのような現世人には、やはり『内陣』は不向きだったようだ。失敗の咎を負い、理想世界の礎となれ」
 言われたプジェが、激しく震えながらソフィアを見上げた。ぼろぼろと泣いている。
「じ……慈悲を……!」
 プジェを冷ややかに見たまま、ソフィアは空いている手に強い光を宿した。光は凝り、短い銃の形になる。リリやラヤ・オはよく知らないが、バティストは以前見たことがあった。一部の帝国兵や魔導兵器に使用されている、連続で弾丸を射出する銃。機関銃、マシンガンと言われるものに似ている。それをさらに短くした形だ。
「これこそが慈悲だよ。穢れた人でなくなる、キミにできるたった一つの贖罪の道だ」
 短機関銃を、ソフィアはプジェに向け、引き金を引いた。
 弾丸状の光属性エーテルが、プジェに打ち込まれる。
「――! が……ぁああ!」
 その途端だった。
 プジェの体が白く光り、カタチを崩した。人としての形を失い、眩むような白光に包まれ――繭と化した。
「なんだ……?」
 誰かが言った。ソフィアは上首尾を眺めて微笑み、仮面の者たちは微動だにしない。リリたちや双蛇党兵士たちは、そうするべきではないと分かっていながら、眼前で起こっている異常事態から目を離せなかった。離してはいけない気がした。
 鳥や蝙蝠や虫、それらの無数の羽を集めてできたような、大人のフォレスターが膝を丸めて入ることができる程度の大きさの、繭のようなもの。
 それが、割れた。
「ヂィッ!!」
 不快な金属音の叫びをあげて、『それ』は繭から飛び出してきた。明らかに繭の大きさよりも遥かに大きい。
 『それ』は、フォレスター男性二人分ほどの大きさの、怪物だった。
 『それ』は全身が白い。巨大な人型のところどころに張り付いた、鱗や虫の甲殻のようなものも白い。竜のような長い顔には目も鼻もなく、ただ大きな顎とでたらめに密集する口中の牙だけがあった。
 手足は長く、四つん這いだ。異常に発達した筋肉。両肩には顔と同じ大きく長い顎が生え、ガチガチと牙を打ち鳴らしている。それ以外にも、全身のいたるところに小さな口があり、それが歯を鳴らし口々に吠えた。
「ヂィィィ!!」
 白い異形の怪物が、のそり、と前へ進み出た。
「まさか」
 ラヤ・オが愕然と呻いた。
「光属性の強制崩壊を起こさせたの!?」
 その問いに答えず、ソフィアは謡うように言った。
「汝、咎によりてその身を獣にやつし、光に還るまで罪を雪がん。――そうなった以上、キミに残された時間は少ない。崩壊するまで、存分に命を食らえ。咎人(シナー)」
 プジェであった異形――咎人が吠える。
「ヂィィェアァアァア!!!!」
 密集した兵士たちのところへとびかかる。あっという間に、そこには殺戮の嵐が生まれた。
「!!」
 そちらへ向かおうとしたリリたちの足下へ、ソフィアの短機関銃が放たれた。先のプジェに打ち込んだ属性エーテルではない。殺傷能力のある、光属性魔法弾だ。
「どこへ行こうと言うんです? 貴方たちの相手は我々だ」
 ソフィアと仮面の者たち、そして魔道石像が前へ出る。彼らの戦力はまだ咎人だけしか動いていない。無視していい戦力規模ではなかった。
 だが。
「すいません。そちらは任せます!」
 叫ぶが早いか、リリは駆け出した。ソフィアが牽制の銃口を向けるが、その前にはサイラスが立ちはだかった。放たれた弾丸を、サイラスの細剣が一つ残らず叩き落とす。
「な……!」
 驚くソフィア。その隙に、リリは咎人と戦う戦列に飛び込んだ。回復魔法を連発して戦線を支える。
「リリ!」
 慌てるバティストを、ラヤ・オが止めた。
「バティスト」
「は」
 焦りながらも、バティストは角尊への敬意を蔑ろにはしない。
「角尊として要請します。“仮面”を使って」
「――!」
 バティストが息を呑む。だが、それに異を唱え論争する時間はなかった。まして、ラヤ・オは命じたのではない。要請したのだ。あとは、バティスト自身の覚悟次第だ。
「……わかりました」
 バティスト強く噛み締めた後、頷いた。
「ありがと。頼んでおいてなんだけど、無理はしないで。分かってると思うけど、“最後の技”は絶対に使っちゃだめよ」
「はい」
「それから、悪いけど兵士たちを半分こちらに回して」
「かしこまりました!」
 言いながら、待ちきれぬようにバティストは駆け出す。それを見届けてから、ラヤ・オはサイラスと並び立った。
「サイラス・エインズワース。そこの勘違いバカは任せていい? 残りは全部引きうけたげる」
 腕を組み、顎でソフィアを示す。実姉カヌ・エ・センナが見たなら説教確実なガラの悪い仕草だが、堂に入っているのがまた困り者だ。
「こちらは構わんが、大丈夫か」
 仮面の者たちはざっと六人。魔道石像も同数。未知の相手との一対十二は、通常避けるべき選択だ。
 だが、
「問題ないわ」
 そう言い切るラヤ・オから、サイラスは並々ならぬ気勢を感じた。どこか普通ではない。しかしそれが何かは問う暇もないだろう。
「角尊。アムダプールの残り香を伝えるだけの出来損ないの白魔道士。……いいでしょう。お前たち、真の白魔道士とは何かを示してあげなさい」
「御意」
 仮面の者たちが、サイラスから離れて歩き出すラヤ・オへと向かう。無論、魔道石像も一緒だ。
「私も、この男を始末したらそちらへ合流しよう。それまで保つか、見物だね」
 言いながら、ソフィアの左手に光が凝った。右手と同じ形の短機関銃。
「光臨武器を二つ同時に扱えるのは、大主教たる私だけ。今度は本気でいくよ」
 不敵に笑うソフィアに、サイラスは肩を竦めた。
「そうか。じゃあ俺も、ほんの少しだけ、その気になるか」
 目深にかぶった帽子の陰で、サイラスは笑った。内心の激情が噴き出た――そんな凄絶な笑みだった。
 時刻は深夜。
 月に照らされた白き遺構――アイ・ハヌム遺跡で、三つの戦いが開幕した。

4-2

 半年ほど前のことだ。
 黒衣森で、『古の蛮神』オーディン復活の騒動があった。“光の戦士”による蛮神討伐が行われ、戦いの後に一振りの剣が遺った。
 『斬鉄剣』。そう呼ばれる、蛮神の振るう片刃剣。
 調査の結果、蛮神オーディンとはその『斬鉄剣』そのものであり、それが人に憑依し、蛮神の姿をとるらしい、ということが判明した。
 斬鉄剣は回収され、封印されることになった。
 だが。
 移送を担当した神勇隊士が、斬鉄剣を持ったまま失踪した。

 南部森林を担当する伍番槍の副隊長であるバティストは、部下を率い捜索にあたり――そこで、今しも剣に魅入られ蛮神と化す寸前の神勇隊士から、斬鉄剣を奪った。
 そして、彼が斬鉄剣に憑依されたのだ。
 闘神オーディンそのものと化したバティストは黒衣森を徘徊し、森の地脈を吸い、行き会う者すべてを殺す殺戮者となった。
 再度“光の戦士”に召集が掛けられ、率いる冒険者たちとともに、光の戦士はオーディンと戦う。
 結果、オーディンは再び“光の戦士”に敗れた。
 しかし、剣はまたしても逃走した。
 とどめを担った冒険者の一人が、その場から剣を奪い逃走したのだ。
 以来、オーディンは黒衣森に現れては消える、厄災の一つになってしまった。
 
 一命を取り留めたバティストは、しかし、奇妙な後遺症を発症することとなった。
 蛮神に触れ続けた魂にはその残滓が刻み付けられた。彼の中には、オーディンの力の一部が分かちがたく結びついて残留しているのだ。
 幸いにして――あるいは光の戦士に助けられたからだろうか――その力は、バティストが使おうと意識しなければ現れることはない。危険極まりない“最後の技”を除けば、短時間ならば使用しても支障はなかった。
 本来ならば、彼のような存在は危険だと判断され、幽閉や――場合によっては処刑もありうるだろう。
 そうならなかったのは、彼自身のそれまでに築いた評価ゆえだ。それと、光の戦士の後押しもあった。結果、彼は原隊に復隊することができた。
 
 それが、鬼哭隊の仮面とは別に、彼の有するもう一つの“仮面”。

§

「ヂィィィィィィ!!!!!」
 咎人が叫ぶ。叫びながら、その長い腕を振るう。数名の兵士が吹き飛ばされる。その体には幾本もの矢が刺さっているが、意に介した様子がない。大きい顎から長い舌と唾液を垂らしながら、怪物は兵士に駆け寄っては噛み殺す。技も魔法も何もない。ただ、圧倒的に迅く、絶望的に獰猛だった。
 狂気の戦場を、リリが支えている。傷を癒し、倒れた者を蘇生させる。だが、彼女一人では支えきれないのは確かだった。
 駆け寄ったバティストは、鬼哭隊の仮面を外した。
 切れ長の目を閉じる。片手を、顔の前に持ってくる。そこに、別の仮面があるかのように。
「――黒面装(ダーク・フェイス)」
 囁くように告げる。直後、その顔を黒い仮面が覆った。禍々しい、まるで邪神のような仮面だ。
 その手に、黒い槍が出現した。長く美しいが、優美さよりも凶悪さを感じさせる槍。
「全員下がれ!」
 叫んでから、黒い槍を投擲する。槍は咎人に吸い込まれるように当たり、その胸を貫いた。その直後に、槍を中心とした黒い雷の嵐が周囲もろともに咎人を灼いた。ぎりぎりで下がった兵士たちが驚愕する。
「に――兄さん!?」
 驚き、思わずいつもの呼び方になったリリに「あとで説明する」とだけ短く告げる。それだけで切り替えられるのは、正直助かる。
「俺が――いや、私がこいつを引き付ける。範囲に巻き込む危険があるので、遠隔隊だけ協力してくれ。近接隊は、ラヤ・オ様のところへ」
「――わかった」
 双蛇党の隊長が頷き、兵士へ指示を飛ばした。彼も言いたいことを一旦置いている。ありがたい。
「ヂ……ッ!」
 衝撃から立ち直った咎人が、バティストのほうを向いて吠えた。狙い通りだ。もう一度生み出した槍を、今度は高く投げ上げる。
「ヴァルクヌート……!」
 槍は空中で無数の槍へと増殖し、鋼の雨と化して咎人へ降り注いだ。だが、咎人はそれを躱してバティストへ襲い掛かる。黒く長い片刃剣を生み出し、咎人の拳を捌く。一瞬遅れて、もう片方の拳もバティストを襲う。
「……!」
 無言で空いているほうの掌を跳ね上げ、拳を受け止める。全身に、黒い炎のようなエーテルが吹き上がる。エーテルが容赦なく奪われていく。――だが、枯渇する気配は全くない。
 まだだ。
 もっと、もっと戦える!
 戦いの高揚が、バティストの魂を揺さぶる。闘神の魂が、楔のように自らの魂に撃ち込まれたそれが、猛り、奔る。
「むぅッ!」
 唸りとともに、バティストは前蹴りを咎人へ放った。さらに襲い掛かろうとしていた咎人が、顔面を蹴られて後方へ吹き飛ぶ。
 いける。
 これなら、私が――俺が、勝つ。
 獰猛な笑みを浮かべた直後、
「兄さん!」
 癒しの力がバティストを包んだ。それで、自分の体に物凄い負荷がかかっていることにやっと気付く。手や腕から血が流れていた。
「無茶しないで……!」
 こちらを心配そうに見つめる彼女の顔を見つめる。そんな顔をさせるために、決意したのではなかった。――急速に、戦闘の狂熱が引いていく。だめだ。きちんと制御しなければ。
「すまん。もう大丈夫だ」
 言いながら、両手で剣を握りなおす。吹き飛ばされた咎人が、先よりも激しい勢いで向かってくる。それを躱し、捌き、細かく反撃を加えて敵視を制御する。
 気を抜けば大ダメージを食らうだろう。捌いても、なおダメージを受けるのだ。
 兵士たちの矢と魔法が、咎人の背に降り注ぐ。咎人の足が止まる。そこへ一撃を加えながら、バティストは咎人の肩越しにリリを見た。
 私が、必ず護る。
 決意とともに槍を生み出し、空へ放つ。攻撃の密度によって先ほどのような回避を許さず、槍の雨が咎人へと降り注いだ。

4-3

「さて。始める前に、あんたたちに質問があるわ」
 サイラスとソフィアから距離を取った後、腕組みをしてラヤ・オが言った。仮面の者たちは無言だが、この隙に攻撃をしようとはしなかった。人数による優位に自信があるのか、あるいは“真の白魔道士”とやらの矜持ゆえか。
 どちらにせよ、彼らの意図を計ることなくラヤ・オは続けた。
「自律稼働型の魔道石像ガラティアと、常時操作型の魔道石像サイフォス。操作法の違い以外で、両者の決定的な違いは何かしら?」
 突然の質問に、仮面の者たちは動揺した。いわゆる『ゴーレム』のことではない。アムダプール製の魔道石像について知っている者でなければ、こんな質問は出てこない。
 そして、動揺の理由はもう一つ。
「……誰もわからないの? 本当に?」
 ラヤ・オが冷ややかに指摘する。仮面の男たちは、明らかにラヤ・オに気圧されていた。
「貴方たち、それでも本当にアムダプールの白魔道士?」
 それは仮面の者たちにとって最大級の侮辱であった。当然彼らは激したが、どこか慌てている。
「う……うるさい! 我々への侮辱は許さん!」
「それに操作法以外の差異など聞いたこともない!」
「あっても些末なことだ!」
 仮面の者たちは口々に叫び、魔道石像に襲撃を命じた。
「行け! あの女を黙らせろ!」
 六体の魔道石像がラヤ・オへと迫る。
 だが。
 ラヤ・オは全く動じていなかった。 
 ラヤ・オはこの時すでに『アイ・ハヌムのラヤ・オ・センナ』へ立ち返っている。今までも保持している記憶だけではなく、能力さえもが、今の自分の中に“戻って”いる気がする。
 あの力は、アイ・ハヌムの消失とともに失われたのではなかったか。
 それを訝しむ暇はなかった。
「サンクティファイド・グレア」
 静かに、素早く詠唱を終える。ラヤ・オの周囲に、通常のグレアの十倍以上の光弾が生まれ、そしてそれぞれが別の目標へと奔った。
 狙い違わず。光弾は正確無比の精度で、魔道石像の両腕両脚付け根の関節部分と、胸の中央――心核の収められている部分へと撃ち込まれた。
「なっ……!」
 仮面の者たちが言葉を失う。関節を破壊され、石像たちが地面に転がった。唖然とする仮面の者たちへ、溜息一つついてからラヤ・オは告げる。
「ガラティアとサイフォスの違い。それは、関節の強化をするか否かよ」
 魔道石像の腕を拾い上げる。壊れた関節部分を彼らへ示した。
「ガラティアには痛覚はないわ。術者とある程度の感覚共有を行うサイフォスと違い、術者はガラティアのオーナーであるだけ。
 ――わかる? 装甲をまとい剛力を奮う魔道石像の負荷は、関節に集中するの。この程度の関節強度では、あたしが壊さなくてもいずれ自壊していたでしょうね。
 誰に教わったか知らないけれど」
 ラヤ・オは魔動石造を構成する魔浸石に、自らの魔力を強引に通した。創成をリセットされた腕は形を失い、人の頭ほどの大きさの石に戻り地に落ちた。
「ここがアイ・ハヌムなら、あなたたちは落第。基礎からやり直しなさい」
 そのとき、バティストが向かわせた双蛇党の兵士たちが、ラヤ・オの元へ駆けつけた。
「ラヤ・オ様!」
「そこの魔動石像、破壊しておいて。心核を剥き出しにしてあるから、わかるでしょ」
「はッ!」
 兵士たちが魔道石像の心核へ槍を突き刺す。それを横目に見た後、ラヤ・オは仮面の者たちへ向き直る。
「それから、もうひとつだけ」
 突き放つような冷たい視線を向ける。
「アムダプールの言う真の白魔道士なんて、全然誇れない。――それは、ただの戦争の道具のことよ」
 仮面の者たちは混乱する。ここにいるのはグリダニアの角尊なのではないのか? なのになぜ、彼女の言葉はこんなにも重く、実感を伴って聞こえるのだ? 
 ラヤ・オは右手を天へ向けて伸ばした。彼女の頭上に、無数の光弾が輝いた。
「教えてあげるわ。国家公認白魔道士という“真の白魔道士”が、ね」

『Sweetest Coma Again』4(後)へ続く
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