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Roulaw Thawiza

Zeromus [Meteor]

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バロックパールの物語

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【prologue:20210915】

 ウルダハ。黄金都市の呼び名も高い、絢爛豪華な砂の都市である。一攫千金を狙う者や職人たちのギルドが集まっていることもあってか、多種多様な人々が行き交う街でもある。
 マーケットの近くに足を運んでいた男は、人の賑わいに少し息を吐く。
「毎度ながら、すごい人出だな。……ん、」
 それに気付いたのは、ごく些細な人の流れの乱れだった。軽く目を凝らした男は、それが小柄な人影によるものだと看破する。
 何処かの職人ギルドの徒弟なのか、粗い生地の作業着姿は、人混みに揉まれてまっすぐ歩くのも儘ならない様子である。人にぶつかっては平謝りし、そのままふらついては店先に突っ込みかけ、それを回避しようとして更に人にぶつかり……遠目に見ていても気の毒なほど、都会に慣れていない田舎の子どものようだった。
「何だありゃ、迷子か?」
 ようやく目当ての店まで来たのか、受け取った買い物袋を抱えてきょろきょろと辺りを見回す姿に、……何となく、興が乗ったのか。男は人混みを容易く縫うように抜けると、その肩に手を置いた。
「おい、」
「ぴゃっ!?」
 ──近付いてみれば、ひどく華奢な肩だった。髪を隠すように巻かれた粗末なバンダナの下からは、艶のある白銀の髪が溢れている。驚いたのか、大きく見開かれたまま男を見上げる瞳は淡く煌めく金色で、鮮やかな空色がその周りを縁取っている。シミひとつない白磁のような肌や少し厚めの唇も、紅でもさせばきっとよく映えるであろうことは間違いない。顔の横に飛び出した角と、肌をうっすらと覆う黒い鱗と揺れる尾で、男はその子ども……少女がアウラ族の裔であることを悟る。──そして、身なりこそみすぼらしいが、造作の良さが極上の部類に入ることも。
「……大丈夫か?」
 男が通行人の壁になったことで自分の覚束ない足元が安定したのを知ってか、少女の瞳が改めて男を映す。小さく首を傾げる少女に、男は促した。
「裁縫士か。……ギルドまで戻るなら、案内するぞ。丁度そっちに向かうところだしな」
 少女の携えた道具がウルダハに拠点を置くギルドのそれと見てとったが故の言葉だったが、それに対する少女の反応は、予想以上のものだった。
 蕾が綻ぶような、鮮やかな微笑み。場慣れしているであろう男でさえも一瞬目を奪われるほどのそれを惜しげもなく振り撒き、少女は言った。
「ありがとねー、おにーさん優しいよー」
「っ!?」
「?」
 きょとん、と。不思議そうに首を傾げる少女に、男はこう思ったという──黙っていれば美人、ってのは実在するんだな、と。

 ──それから数日。男は探すでもなく少女の姿を目にすることが多いのに気付いていた。何が、というわけではないのだが、どうしてか目立つのである。それは何度となく道に迷っているような素振りや、人混みに飲まれては道端でへたり込んでいることだけが理由ではない。どんなに粗い素材の服に身を包み、数いるギルドの徒弟として風景に溶け込もうとも、元の“良さ”が際立って見えるのだ。
 そのことに気付いているのは、男だけではなかった。今日もまた、道端でへたり込んでいる少女に近付いていく一団を見つけ、男はそっと息を吐く。
「……餌か、アイツは」
 気配を隠して人混みを縫う男の視界には、少女ににこやかに話しかける輩が見えている……実際にはにこやか、と表現するには大分下卑た笑顔ではあるが。少女の方はといえば、何の疑いもない様子で裏路地へ誘うのについて行こうとしている。
「おい」
 唐突に現れた……ように見えた男に、輩が虚をつかれている間に、男は少女の腕を引き、自分の後ろに隠す。少女は男を見上げ、ふわりと微笑む。
「きょーしろー!」
「……知らない奴らについて行くなって、俺は昨日も言ったよな、ロゥ?」
「でも、名前言ってくれたよー?」
「そういう問題じゃねぇ……」
 少女とのやり取りに頭を抱えかけながらも、男は周りの輩を睨め付ける。東方の着物に長身を包み、業物であろう太刀を佩いた姿は、顔を斜めに横切る傷痕も相まって酷く圧を与えるものである。しかし、少女は男ににこにこと満面の笑みを向けていた。
「一昨日は強請りで昨日は詐欺。今日は何だ、ここの裏路地経由ってことは人買いか。良い加減学べよ、ロゥ……」
「ロゥロゥ悪くないよー!」
「まぁ、そうだな。……悪いのは無論売ろうとする方だが、ホイホイついていく方もついていく方って分かってるか?」
「……ロゥロゥ悪くないよー……」
「目ぇ逸らすんじゃない、分かってんじゃねえか……」
 溜息を吐いた男は、改めて周囲に目を向けた。鯉口すら切らない、何の衒いもない仕草にも関わらず、周囲は息を飲んで後ずさる。少女が背後から顔を出そうとするのを止め、男は静かに告げた。
「今ならまだ不問にしてもイイが、コイツに用があるって言うなら俺が聞くぜ?」
「な……何だテメェは、関係ねーだろうがぁ!」
「連れだ、──大分成り行きだけどな。おいロゥ、顔出すなって」
「おじさん達、急に怒るの何でよー……?」
「カモがネギ背負ってノコノコ歩いてんのに放っとく馬鹿はいねえだろ!」
「カモじゃねえし、……馬鹿はどっちだ」
 数に任せて詰め寄ろうとした輩が、少女に気を取られた一瞬。1人が宙を舞い、1人が壁に激突して崩れ落ちた。少女は男の背の陰で、1人拍手をしている。
「きょーしろーすごいねー!」
「おう、ありがとよ」
「な……何だぁ!?」
 状況が飲み込めずに慌て出す輩を横目に、男は少女に囁いた。
「行くぞ、ロゥ」
「うんっ」
 それと同時に、更に1人が宙を舞う。その隙を見て走り出そうとした少女の腕を、1人が鷲掴んだ。
「わ、」
「ふざけんなよテメェら!!!」
「ロゥ!」
「え、っと、“連れがいるの、で”!」
 言うなり、少女の手には木製の杖が握られている。全員が呆気に取られる中、少女の手は自分を掴んだ輩の頭へ思い切りよく杖を振り下ろす。
 ぽかん、と。……音がして一呼吸。崩れ落ちる輩から腕を引き離した男が、少女を横抱きに走り出す。いくつかの路地を曲がり、追っ手がないことを確認すると、堪えきれなくなった男は笑いながら少女を下ろした。
「おっ、前……ぽかんってホントに言うか!? 何なんだよその杖!」
「マホガニーねー、丈夫ないい杖よー?」
「マホガ……、今ちょっとだけあいつらに同情したわ……」
 よく見れば、少女の手にあるのはよく磨き込まれ、それなりに使い込まれた杖である。そのことに男が首を傾げていると、少女は唐突にリンクパールに応えだす。少し慌てた様子に、男が首を傾げた時だった。
 少女の手に、枯れ草色のローブが現れる。ばさり、と躊躇うことなく男の目前でそれを被り、もごもごと動き出してからきっかり3秒後。男の怒号が響いた。
「何やってんだお前は!?」
「え?」
「えっ? 何だ、エオルゼアではこれが普通なn……いやそんなわけあるか! なんてとこで着替えてんだよ!」
「上からローブ着てるだけよー?」
「ちっとは恥じらえ……!!!」
 男が怒りを抑えて震えながらそう言う間に、着替え終わったらしい少女は先程の杖を腰に着けると、小さく頷く。男はその様子を何とはなしに見ていたが、恐る恐る尋ねる。
「……今度は何だ?」
「ミンフィリアに呼ばれたね、ロゥロゥちょっと行ってくるよー」
「ミンフィリア……は暁の、って待て、ロゥ、お前冒険者なのか!?」
「ロゥロゥ、白魔道士ねー」
「はぁ!?」
「何よー!?」
 こんな冒険者がいてたまるか、と男は思ったと言うが、少女が手にしているのは確かに白魔道士のクリスタルである。世も末か、と内心暗澹たる思いを抱きつつ、男は歩き出した少女の背に呼びかける。
「……なぁ、ロゥ?」
「何よー?」
「ベスパーベイなら逆方向だぞ」
 ぴたりと足を止めて地図を見始める少女に、男は近付いて髪をかき回すように撫でる。唇を尖らせながら見上げてくる少女に、男は笑いかけた。
「遭難されても目覚めが悪いしな。少し付き合ってやるよ、ほらこっちだ」
「迷子じゃないよー!」
「おー、そうだなー」
「まだ迷子じゃないね!」
「まだ、な」
 ……これが、これからエオルゼア中を巡ることになる、2人の物語の始まり。
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