最強最愛のビギナーズ 第十二話「戦帝のマリエを倒せ!」「戦帝のマリエ!?」その通り名を聞き、私はにわかには信じられなかった。
さっきまで食い逃げの醜態を目の前で晒していた人物が、最強の光の戦士?
だが、トンちゃんのあの一撃を指一本で涼し気に止めた実力は間違いなく本物だ。
「どうしたおみゃあ達、まさかあれで終わりじゃないにゃよね?」
余裕の表情でアクビをしている最強のミコッテ。
「‥もちろん、こんなので終わりじゃないよ!」
トンが再び攻撃の体勢に入る。
「いけ、ミラクルトンパンチ・アースドラゴン!」
自分の立っていた地面を易々と砕き、無数の瓦礫をマリエに向かって飛ばすトンの攻撃。
「お、今度はどんな手で来るのか楽しみにゃりね!」
そう言いながら、飛んでくる瓦礫を高速デコピンでガンガン弾き返すマリエ。
「でも、こんな攻撃じゃ、私には届かないにゃ」
「マリエさん、その攻撃は目眩ましと囮、本当に狙ってたのはこっちだよ!」
何時の間にか、マリエの後ろに回り込んでいたトンが背後から狙い撃つ。
「いつの間にマリエちゃんの背後に!?」
驚くマリエ。
「ちょっと痛いけどマリエさん、ごめんね!‥ミラクルトンパンチ・破式!」
トンの必殺の一打が死角から解き放たれた。
確実に捉えたと思った筈の拳が悲しく空を切る。
「えっ!?」
マリエを見失ったトン。
刹那、背後に感じる気配。
急いで振り向くと、目の前にゆっくりと迫る拳が。
「マリエちゃんパンチを食らうにゃ」ノンビリとした拳が体に触れた瞬間、後方に派手に吹き飛ばされるトン。
「いけない!ニャンコバリアネット!」
高速で詠唱を終わらせトンの着弾地点に事前に魔法を展開する。
猛スピードでニャンコバリアに飛び込むトンを、伸縮性を備えたドーム型の魔法が衝撃を吸収して優しくキャッチした。
「いたたた‥アスちゃんありがとう‥」
トンは何とか大丈夫そうだった。
「戦略は悪く無かったにゃ、ただ、そんな単調で退屈な攻撃では、私に触れる事も難しいにゃりね」
頭の上で腕を組み、口笛を吹く余裕のマリエ。
「‥トンちゃん、ビギナーフォーメーションでいこう!」「アスちゃん、OK!」
アス提案に直ぐ様反応して、動き出す二人。
「次はどんな戦法で楽しませてくれるのかにゃ?」
「今度こそ、ギャフンと言ってもらうからね!」
「マリエさん、お覚悟を!」
「にゃふ♪」
マリエが楽しそうに笑う。
「死炎法!」
先手を打ったのは‥なんとアスだった。
マリエに向かい極大無属性魔法を解き放つ。
かなり高威力な魔法を手の平で、蚊でも振り払うようにはたき落とす戦帝。
しかし、反対側から一気に距離を詰めるトンの姿が。
マリエがトンの方に注意を向けたその時。
「裂陣法!」そんな事はお見通しと言わんばかりに次の魔法を発動させるアス。
続け様に、マリエの足元から取り囲むように範囲型の無属性魔法を炸裂、しかし。
「こ、これは‥気持ちいいにゃ‥」
現時点で攻撃が効いている様子は微塵も無い。
「ミラクルトンパンチ・破式!」
間髪入れずトンの技がマリエを捉えるが。
人差し指で軽く止められる。
後ろに距離を取ると思いきや、身を低くして蹴り技に移行するトン。
「トン・ダイナマイトキック!」
低空飛行からの両足飛び蹴り。
この技に対しても最低限の動きでヒョイッと飛んで躱すマリエ。
マリエが着地したタイミングで、アスの召喚術が発動した。
「サモン・エオス!」
フェアリーを召喚したアス。
「エオス・ファンタジー!」青色に光り輝く妖精が、高速の弾丸の様にマリエに飛んでいく。
体に触れるか触れないかのすんでのところで‥、マリエは妖精を人差し指と親指で摘み優しく消滅させた。
「中々良い連携にゃりね、ちょっと楽しいにゃよ」
余裕綽々のマリエ。
「‥マリエさん、私達の攻撃‥まだ終わっていませんよ」
ボソッと呟くアス。
マリエがふと上を向くと、落下してくるトンの姿を確認した。
「マリエさん、私の本気で決めさせてもらうよ!ジャンピングエクストリーム・トンパンチ!!」
頭上からトン渾身の気力を込めた黄金色に輝く気弾がマリエに襲いかかる。
同時に足元に違和感を感じ視線を送ると。
マリエの足には、地面から生えた付変幻自在のアスの結界術が巻き付いていた。
「おみゃあ達‥」
「トンちゃん決めて!」
「マリエさん、これでフィニッシュだよ!!」
「‥戦帝と呼ばれたマリエちゃんの力の一部を見るがいいにゃ‥」
拳を構え腰を据えるマリエ。
スッーと息を吸い吐く。
「マリエちゃーーーん、フレアナックル!」真っ赤に発火するマリエの拳。
ボウボウと燃え盛る拳をトンの放った気弾に叩き込む。
気弾と火炎がぶつかり合い空中で巻き起こる爆発。
その爆風は凄まじく、辺りを粉塵が埋め尽くす。
「くっ!」
舞い散る粉塵の中、トンの背後から声がした。
「こういう場面こそ、油断大敵にゃよ」
トンが振り向くよりも早く、マリエのデコピンが背中に直撃した。
「うわぁ!」
思わず声を漏らしながら地面に叩きつけられるトン。
「トンちゃん!」
「おみゃあも油断しちゃ駄目にゃりよ」
突如アスの目の前に姿を現したマリエ。
急いでバリアを展開しようとするが‥
マリエのデコピンの方が先にアスの額にクリーンヒットする。
「きゃ!」
背後の壁に強く叩きつけられその場に崩れるアス。
周りに舞っていた四散物が一応の落ち着き取り戻した時、ルビーの目には倒れる妹達と、腕を組んで悠然とその場に立つマリエの姿が目に入った。
「トンちゃん、アスちゃん!」
「で?」
「え!」
「で、ルビー、おみゃあさんは妹達二人が倒れてるのを見てるだけにゃりか?ここに何しにきたんにゃ?」‥怖い‥
私は間違いなく、目の前の存在に心底畏怖してる。
でも‥こんな所で挫けてはいられない。
私が足を踏み入れたのはそういう場所なのだから。
この恐怖に負けるな私、押し返して戦え私は!
「うおおー!」
剣を振り上げマリエに斬り掛かるルビー。
「型もヘッタクレもないにゃりが‥その心意気は良しにゃ!」
がむしゃらにマリエを斬りつけるルビー。
それを全部指一本で捌くマリエ。
実力は誰の目から見ても雲泥の差だ。
しかしルビーは攻撃の手を緩めること無く剣を振り続ける。
何処か微笑ましい笑顔でその光景を見守るマリエ。
かつての愛弟子であったリリーナと被る部分でもあるのか、その目は優しかった。
「おみゃあは圧倒的に戦闘経験値そのものが二人に比べて少ない、もっと考えて攻撃するにゃ!」
マリエから指南の様な言葉を受け、ルビーもそれに応えるかの様に剣に力が入る。
次第に只の単調なだけだった攻撃に、突きや回転斬りも加わり始める。
「この短時間で既に攻撃が変化したにゃと?おみゃあ‥化けるかも知れんにゃ‥」
ルビーの戦い方は素人のそれ。
そこから推測するに誰からの指南も受けたことが無いのは明白。
逆を言えば、己の直感だけでこれまで生き延びて来たのだとしたら、この子ポテンシャルはもしかして。
マリエは直感で、ルビーからそのことを感じ取っていた。
「だけど‥そんな攻撃ではマリエちゃんは届かんにゃ」
ふと、ルビーが笑う。
「確かに私の攻撃では届かないだろうね、私だけの攻撃ではね‥」
言葉の意味を動く二つの気配で察知するマリエ。
「ニャンコリング五重奏!!」
突如、マリエを拘束する五重の輪。
「にゃ!」
「トンちゃん、今!」
アスが大きな声でトンに合図を送る。
「もういっちょ、エクストリーム・トンパンチ!!」
マリエの後ろから、再びトンの最強の金色の気弾が放たれた。
「良いコンビネーションにゃりね、でも‥ふんっ!」
単純な力だけで、ニャンコリングの輪が内側から砕かれる。
そして、振り返りざまに後方に迫った気弾に渾身の拳を叩き込む。
「うにゃー!」可愛らしい気合の入った掛け声と共に繰り出された一打は、トンの攻撃を跡形もなく消し去った。
「これは‥どおりでさっきよりも力が入ってないと思ったら‥時間稼ぎだったにゃりね」
その言葉の指す通り、ルビーの元に二人の姿があった。
しかし、妹達二人の息は既に上がっている。
「ハァハァ、何とか元の状態に戻したけど、これ何か打つ手有るのかなアスちゃん‥」
「正直、ここまで力の差があるとは思ってなかったよ‥戦帝の呼び名は伊達どころか、十二分すぎるお釣りがくるレベルなんじゃないかな‥」
二人を見て、そう長くは戦えないことを悟るルビー。
攻撃を仕掛けられるとして後一度が限度か。
この二人ですら手玉に取られる強敵。
そんな相手に対して自分は何が出来るのか‥
私に出来るとすればせいぜいあの光の翼を出して、二人を守る事位のものか。
あの翼を攻撃に利用する事が出来たのならまだ‥
うん、攻撃に利用する?
もしかしたらあの翼を攻撃に利用出来るかも知れない。
「‥ねえ、アスちゃんトンちゃん、私ちょっと思いついた事が有るんだけど聞いてもらえる?」
「‥勿論ですお姉様、その話是非とも聞かせて下さい」
「‥姉さまの話を私達に聞かせて」
ルビーの話を頷きながら聞く二人。
「「えーーーー!」」そして、ルビーの提案を聞き同時に後ろに飛び退く妹達。
作戦会議が終わるのを自分のシッポでじゃれながら待つ戦帝。
「マリエちゃんだけ蚊帳の外にゃ‥」
どうやら寂しいようだ。
「アスちゃん、この作戦‥可能なの?」
トンが心配そうにアスに尋ねる。
「正直、お姉様の身が心配‥、でも試す価値はあると思う、と言うか私達の手札じゃ他に有効打は無いかも‥」
「それじゃやろう!私も頑張るから、二人も一緒に力を合わせて頑張るろう!じゃないと私、リリーナに顔向け出来ないよ」
「姉さま‥アスちゃん‥やろう!こんな所で燻ってられない」
「‥分かりました、その代わり危険だと思ったらその時点でこの攻撃を中止します」
「ありがとう、二人共、私を信じてくれて」
「フニャ〜」
大きなアクビをするマリエ。
「どうやら作戦が決まったみたいにゃりね、何時でもドンと来いにゃ!」
「マリエさん、お待たせしました、それじゃこれから私達の恐らく最後の攻撃を仕掛ます」
「姉さま、ファイト」
「お姉様、先行頼みました」
トンとアスが言葉を残しルビーから少し離れる。
「うにゃ?何を仕掛けるつもりにゃ?」
マリエが疑問をいだきながら呟く。
「ふぅー」
ルビーが息を吐き、目を閉じ心を落ち着かせる。
「大丈夫、私ならきっとできる‥」先ずはあの翼を自力で出して見せる。
とは言ったものの、あれどうやれば出せるんだろう。
‥うん、全然思い浮かばない。
って、これじゃ駄目だ!
そうだ、あの時の気持ちを思い出せばもしかしたら。
タイタン戦とギレイ戦の時はただ勢いで出せた気がするけど‥
どちらにも共通するのは‥素直に守りたいって純粋な気持ちだった。
と、すればあの時の気持ちをまた再現する事が出来れば。
あの二人と過ごした時間はそんなに長くは無い。
でも、その密度や絆なの深さはリリーナにだって負けない。
そんな二人を護りたい、そして今その力が欲しい!
私にあの二人を護る為の力を!!
「にゃ、にゃんと!」
思わずマリエが声に出す。
「お姉様!」
「姉さまやったね!」
声に反応して目を開くと、私の背中に温もりを感じた。
そっと視線を伸ばすと、そこには眩いばかりの光の翼が今にも飛翔しようとその力強さを誇示していた。「や、やった!私自分の意志で、この翼を出す事が出来たよ!」
まだ、何一つ解決してないのに成し得た気持ちで既に一杯だった。
「それが、話に聞く光の翼にゃりね、キレイなもんにゃ!」
あまりの綺麗さの前に、マリエも只々素直に感動していた。
「お姉様も頑張ったのだから、次は私の番ですね!」
アスが今持てる全ての魔力を込めて魔法を唱える。
「お姉様、受け取ってください!これが私の気持ちを込めた結界魔法プロミス・ギフト!」
ありったけを込めたアスの気持ちと高純度の結界術でルビーの全身をコーティングする。
「トンちゃん、お願い!」
「トンちゃん、最高の一発を頼んだよ」
アスとルビーから最後の襷をトンが受け取る。
「任せて!とびっきりの一撃で私達のフェニックスを羽ばたかせるから」目を瞑り、何時もより深く腰を落とし、拳を据える。
この後のことなんて、また後で考えればいい。
今はこの一撃に、この一点に全てを注ぎ込む。
姉さま受け取って、これが私の熱い想いと願い。
カッと目を見開き、トンの全てを詰め込んだ一打を拳から解放した。
「ギガ・エクストリーム・トンパンチ!」
巨大な光の気砲がルビーの背中に向かって飛んでいく。
「姉さま、私の大きな愛を受け取って」
「トンちゃん、何時でもドンと来こいだ!」
後ろを振り向き最高の笑顔をトンとアスに投げ掛けるルビー。
「おみゃあ達一体にゃにを‥」
トンの豪技がルビーの背に直撃する。
「マリエさん‥これが私達の、新たな姉妹の力だよ」
背に受けたトンの技を爆心的な推進力に替えルビーが光の翼を携えたまま、マリエに向かい突進する。
残光を軌跡の様に背後に伸ばし、ルビーが超低空飛行で二人の気持ちも共に携え迫る。
「き、キレイにゃ‥」
とても戦闘中に呟く台詞では無いが、無意識下で感じた事をマリエは口に出していた。
「例えるならこれは‥三姉妹合技・シャイニングフェニックス!!私達の想いと力の全部を受けてもらうよ」三人の技が相まったその姿は、技名通り光を纏った不死鳥を彷彿とさせた。
「なんちゅう無茶苦茶な荒業にゃ‥でも、面白い!ドンと掛かってくるニャ!」
三人の気持ちと力を真正面から受け止めようと、両手を前に突き出し構えるマリエ。
「届け私達三人の想い!」
「姉さまいっけーーー!」
「お姉様、その翼で決めて下さい!」
そして、マリエと衝突する。
強力無比な技をその手に受けマリエは、なんとその場に踏みとどまっていた。
「確かに、凄い技にゃりが、このマリエちゃんに掛かっては‥、あれ?」
完全に受け止めたと思っていたマリエの両足が、後ろに押され始める。
「こ、これは‥グギギギ、想像以上の破壊力にゃ‥」
突き出し両手も肘から徐々に折り曲げられる。
瞬間で粉砕されているであろう熱量、マリエはそれを正面から素手で受け止めているのだ。
この事だけでも戦帝の呼名が飾りでは無い事が伺える。
「マリエさん、これ以上はいくらマリエさんでも、お願いだから負けを認めて‥」
ルビーがマリエを心配して攻撃中にも関わらず声を掛ける。
「‥確かにこの攻撃は凄い威力にゃ、しかし、マリエちゃんの本気はもっと凄いにゃりよ!その一端を見せてあげるにゃああああああああ!」途端、跳ね上がるマリエの光の闘気。
底無しな力を肌でビリビリと感じる三人。
湧き上がる光の力を両手に集中し始める。
「これ〜が〜、マリエちゃんパワー!」
一度は押された体勢をなんと元に戻したのだ。
「これが戦帝の力‥凄い‥」
ルビーは笑っていた。
こいつも大人しそうに見えたのに、結局はリリーナと同じ穴のむじなかとマリエも笑っていた。
「あの二人楽しそうだね、アスちゃん」「うん…」
その姿にかつての姉の姿を重ねているのか、語る二人も嬉しそうだった。
「出し惜しみなしで行きます、これが私達の全力です!」
ルビーの光の翼がより煌めきを増し大きく輝く。
「なら、私も全力でいくにゃりよ!」
三人の合わせ技を受け止める、マリエの手からも更に光のパワーが湧き出す。
「うおおおおおおぉぉぉぉ!」
「にゃあああああああぁあああ!」
ぶつかり合う巨大な二つの光。
互いの光が極限まで高まった時、行き場を失った力が爆発した。
まばゆいばかりの閃光に包まれる室内、激しく揺れる空間と台地。
巨大な力が拡散した爆風渦巻く場所で、果たして全員無事なのか?
徐々に視界が開けてくると。
アスが張ったバリアの中で身を寄せ合う三人の姿があった。
「アスちゃんありがとう、そしてトンちゃんもありがとう…」
どうやらあの爆風の中、トンが吹き飛ばされたルビーを回収して、アスの所まで連れていったようだ。
「三人とも無事で何よりです」
アスの笑顔が優しく二人に向けられていた。
そして、気になるマリエはどうなったのか…
三人が無事を確かめようとバリアを解除して駆け寄ろうとすると。
なんと、先ほどの体勢のままその場に立つマリエの姿があったのだ。
「いちちちち、おみゃあ達とんでもない技ぶっぱなしてくれたにゃりね…」しかも、真正面から受けたのにも関わらず軽傷だけで済んだようだ。
マリエの無事な姿を確認してホッとした三人。
しかしそれは同時に、三人の全てを込めた攻撃もマリエには通じなかった事も意味していた。
「残念だけど、私達はこれで弾切れの様です…また別の手段を考えたいと思います…胸を貸していただきありがとうございました!」
「姉さま、三人で頑張ればきっと何とかなるよ!」
「お姉様、三人で別の手段を考えましょう」
マリエに対してお辞儀をして去ろうとしたその時。
「おみゃあ達、待つにゃ!」
急に呼び止められ、振り向く三人。
「合格にゃ」
「え?」
予期せぬ言葉に素で返すルビー。
「だから合格にゃ!おみゃあ達の稽古をつけてやるにゃあ」
「え?だってマリエさんにギブアップを言わせられなかったんですよ?」
ルビーがそう言うと、マリエがすっと両手を上げ爪を見せた。
「私の自慢の爪がボロボロにゃ、これにはマリエちゃん完全にまいったにゃ…、だからこの勝負おみゃあ達の勝ちにゃ」
「それじゃあ!」
「おみゃあ達はこれで晴れてマリエちゃんのシモベ…違った…、弟子にゃ!」
顔を見合わせ飛び跳ねて喜ぶ三人。
「やった?」
「姉様、やったね!三人の勝利だよ♪」
「お姉様、私達やりましたね!」
子供の様に無邪気に笑う三人を優しい眼差しで見るマリエ。
その瞳はかつての弟子であるリリーナと過ごした日々を思い出していたのであろうか。
「ただおみゃあ達調子に乗っちゃいかんにゃりよ?あの最後の技威力はすごいけど、真っすぐしか攻撃できないし、あれを真正面から受けるお人好しな敵は先ずいないにゃ」
「…ですよねー」
少し肩を落とすルビー。
「でも、あの技はきっとアシエンとの戦いの切り札になるにゃ、だからしっかりと練習して使いこなせるようにした上で、確実に当てられるようにするにゃ!」
ルビーは顔を上げパァっと明るい表情になる。
「はい!」
「それと、もっとおみゃあ達の持ち味も伸ばしていくからその点も覚悟するにゃりよ、限られた時間の中での修業は楽じゃないって事にゃりね」
「わかったよ!マリエさん」
「マリエさん、よろしくお願いします」
飛び跳ねて喜ぶトンと、丁寧にお辞儀をする対照的なアス。
駆け寄り、再び喜びをそれぞれの表現方法で伝え合う三姉妹。
「やれやれ、また退屈しない賑やか日が送れる事になりそうにゃね、見てるかリリーナ、おみゃあの妹達は元気にやってるにゃりよ…」上を向き、懐かしむ様子でささやくマリエ。
こうして、最強の光の戦士である戦帝のマリエとの試練を三人は無事に乗り越えたのであった。
………
「ねえ?お前達、素直にあの光の戦士達が修行を終える半年後迄待つ必要あると思う?」
その声に反応するかのように聞こえる猛獣の唸り声。
「そうだよね!楽しみはやっぱりとっとと楽しむに限るよね!じゃあ善は急げであの三人を始末しに行っちゃおう!」
呼応した獣の声が辺りに響き渡る。
「あわよくば、俺っちがあの戦帝とか呼ばれてるニャンコも狩っちゃおう♪」
楽しそうに笑う存在は身の丈に余る鎌を担いで出発の準備を進めていた。
その背後には、闇に光り輝く無数の赤い目と唸り声が交じり合っていた。
~続く~■FF14外伝 連続空想小説 最強最愛のビギナーズFF14の世界であるエオルゼアを舞台にしたビギナー姉妹とアクア・ルビーの物語。
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