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『視線の届かぬ、滲む光』

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ルミアレリナ・フィンネス(愛称:ミア)
主人公である、若き冒険者。



カラディア・ハーウッド(愛称:カル)
ルミアレリナに並び立つ名声の、気鋭の冒険者。
容姿端麗で自信家。
華やかで人を惹きつけるカリスマを持つ。


【エクストリーム・サバイバーシャツ】
worn by
カラディア・ハーウッド



【プロフェットチェストラップ】
worn by
カラディア・ハーウッド


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

◆ 視線の届かぬ、滲む光 ◆


 リムサ・ロミンサの夜は、潮の匂いと灯りのざわめきが混ざっている。
 港町特有の喧騒の中でも、ひときわ浮いたような声が酒場の一角に響いていた。

「だからさ、やっぱりカル様って別格だよね!」

 赤みがかった髪を揺らしながら、若いミコッテの冒険者が身を乗り出す。
 名は、エ・パトルミ。まだ十代半ばから後半に差しかかるかどうかの年齢だ。サンシーカー特有の明るさが、そのまま感情として表に出ている。

「この前の依頼さ、港の外れに出た魔物の群れ、あれ一人で押し切ったって話、聞いた?」
 彼女の横に座る冒険者が、答える。
「一人で? あそこって普通、部隊が出る規模だろ」
「そうそう。普通はね。でもカル様は違うんだって」

 酒場のテーブルを囲む数人が、半信半疑のまま顔を見合わせる。

「最初のでっかい一撃でね、魔物の陣形崩したらしいよ。そこからはもう、踊ってるみたいだったって」
「踊ってるって……戦闘だぞ?」
「でも見た人がそう言ってたんだってさ。弓撃ちながら回って、魔法挟んで、最後は一気に仕留めたって」

「それ、もはや舞台じゃないか」
 妙な具体性が混じった話に、誰かが笑うと、別の冒険者が肩をすくめる。
「でもあの人なら、舞台と戦場の区別なんてないのかもな」

 カラディア・ハーウッド。
 華やかな衣装を纏い、戦場に立てば視線を奪い、舞台に立てば観客を支配する女。

 遠目に見た者は皆口を揃える。
「派手だ」「美しい」「まるで見せるために戦っている」と。
 弓の射線は観客の視線を誘導し、魔法の発動は動きの流れに組み込まれ、一つ一つが、あたかも魅せるための演出であるかのようだった。

「踊り子としても一流なんだろ?」
「ああ。舞台に立った時の歓声、戦場のそれと変わらないらしい」
「戦っても踊っても観客が同じ顔してるって、どんな現象だよ」

 エ・パトルミの目は、憧れを超え、別の色に変わり始めていた。

  ◇ ◇ ◇

 翌日。

 リムサ・ロミンサの朝は、夜とは違う顔を見せていた。
 潮風は穏やかで、港の喧騒もまだどこか緩い。

 エ・パトルミは、建物の影に身を潜めながら息を殺していた。

 視線の先にいたカラディアは、港通り沿いの仕立て屋の中で、衣装の布地を確認していた。
 軽く腕を伸ばし、布の落ち方を確かめる。
 光の当たり方、影の落ち方、動いたときの揺れ方。

「この縫い目、1センチ下にずらせない?」

「あらあら、カルは厳しいわねえ。うんうん、直しておくから、また明日にでもいらっしゃいな」
 気の優し気な女店主が、カラディアの注文に応えていた。

 そのまま服を試着する。
 歩く。回る。止まる。
 鏡の前での動作は、舞台のリハーサルのようだった。

  


 鏡に顔を近づけ。
「肌、少しだけ張ってるみたい」
 そう言いながら、頬に指を当てる。
 店主が棚から小瓶を取り出し、カラディアに差し出す。
「少し張るくらいなら、これ。ラノシアオレンジ花蜜クリーム。ロータノ海産の保湿油入り。香りもいいのよ」
「ありがとう。いつも頼りになるわ」

 カラディアは、服飾にも美容にも手を抜いていなかった。
 エ・パトルミは、じっと、憧憬の視線を向けていた。

  ◇

 夜、リムサの街外れ。
 潮風が届かない訓練場の裏手で、エ・パトルミは息を殺していた。

 彼女は、真剣だった。
 カラディアの尾行に成功していることで、遠い存在であるカラディアに、少しだけ近づくことができたような気がしていた。

 そこに立っているカラディアは、舞台衣装でも、華やかな戦装束でもない。
 簡素な訓練着。髪も軽く結われているだけ。

 ただ立っているだけではなかった。
 訓練場の中心で、同じ魔法を何度も、何度も繰り返している。

 黒魔法の詠唱。
 発動。
 着弾。
 そして、記録。

「……0.3秒遅い」
 静かでありながら力のある声が、夜に落ちる。
 流れる汗を拭う。

「魔力流動が乱れてる。今のじゃ観客の視線を切れない」

 ”観客”。
 その単語に、エ・パトルミは違和感を覚えた。
 ここには誰もいない。
 なのに、カラディアは、誰かに見られることを前提に動いている。

 再び魔法。
 今度は速度がわずかに上がる。
 だが、カラディアは首を振る。
「まだ違う」

 また詠唱。
 また発動。
 また記録。

 まるで研究者だった。
 エ・パトルミの背にも、じわりと汗が滲む。

(これが……天才?)

 違う。
 彼女の中で、その言葉は崩れ始めていた。
 カラディアは、天性の才能や閃きだけで強いのではない。
 強さの再現性を、人目につかないところで突き詰めていたのだ。

  


 次に目の当たりにしたのは、さらに異質な光景だった。

 足首に重りを巻いた状態での移動訓練。
 呼吸のリズムを刻みながらの回避動作。
 弓術の構えから、踊るように回転し、そのまま射撃へ繋ぐ一連の流れ。

 そして訓練の合間。

 カラディアは地面に膝をつき、小さなノートを開く。
 そこには文字がびっしりと並んでいた。

 ・魔力出力誤差
 ・心拍数推移
 ・筋疲労レベル
 ・睡眠時間
 ・食事栄養バランス
 ・矢速平均値
 ・回転ブレ補正値

 そして、最後の欄。

 ・観客歓声反応パターン

 エ・パトルミは、息を止めたまま動けなくなる。
(……何これ)

 強さ。華やかさ。美しさ。
 すべて設計された、異常なまでの鍛錬の産物。

「そこまでしなくても、カル様は十分すごいのに……」

 思わず漏れた声。
 夜の空気が、静かに凍る。

 カラディアが振り向いた。

 だが驚いた様子はない。
 最初からそこに気づいていたような目だった。
「隠れるなら、最後まで隠れなさい」
 静かな声。

 エ・パトルミの心臓が跳ねる。
「……ご、ごめんなさい!」
 慌ててカラディアの前に姿を現す。

 カラディアに、怒りはない。
 興味も薄い。
 ただ、時間を割く価値があるかどうかだけを測っているようだった。

「カル様って……天才だから強いんだと思ってました」
 恐る恐る口にする。

「あなたは、何なの?冒険者?ただのファンじゃないんでしょ?だったら、その呼び名で私を呼ぶのはやめなさい」

「あ、あの……はい……」

「天才、か。……多くの人はね、自分の見たいものしか見ないの。華やかなところだけを見て、”才能”って、勝手に名前をつける。そして、私はそれを利用してる」

 カラディアは少し黙った後、言葉を続ける。
「……中には、強さの根源がわからない、化け物じみた英雄もいるけどね。ごく稀に、ね」

 エ・パトルミは、思考が追いつかない頭で、素朴な本心をつぶやく。

「私から見れば、カラディアさんだって十分に化け物……あ……ご、ごめんなさい!」

 カラディアの目が、わずかに細くなる。
 一拍。

「まだ、あいつが私の前を走ってる」

  ◇

 夜が深くなる。
 エ・パトルミは帰路につきながら、何度も頭を振った。

(あれは……才能なんて言葉だけで語れるような、生易しいものじゃない)
(あの人は、積み上げてる)
(ずっと、ずっと)

 そのような思考が、果てなく頭をめぐる。

  ◇

 訓練場。
 誰もいなくなった場所で、カラディアは一人立っていた。

 ノートをめくる。
 そこには次の修正項目が書かれている。

「魔力収束速度+0.1秒改善」
「視線誘導角度再設計」
「歓声ピーク位置最適化」

 ページの最後。
 ふと、指が止まる。
 誰にも聞こえない声で、小さく呟く。

「ミア……絶対に、逃がさないわよ」

  


 そして再び、魔法を構えた。
 夜の訓練場に、光が走る。

  ◇

 数週間後。

 エ・パトルミは、カラディアが隊長を務める冒険者小隊の門を叩くことになる。

 憧れだけではない。
 知ってしまったからだ。
 カラディアの背中は、努力でできている。

 そしてそれは、近くで見なければ絶対に分からない種類の強さだった。
 あの人の側に立ち、本当の意味であの人に近づきたい。
 そう思った。



***この創作について***
『装いは、物語を連れてくる ~紡の章~』
蒼天のイシュガルド時点までの時間軸で、一人の冒険者の歩みを中心に、オムニバス形式で描いています。
一部、ChatGPTを使用しています。

↓キャラクター紹介
https://ameblo.jp/momongapeach/entry-12962058428.html
↓エピソード紹介
https://ameblo.jp/momongapeach/entry-12962180205.html


**************
冒険者小隊のエ・パトルミさんのSSも撮るつもりだったのですが、LVを上げないと武具投影できないのを忘れていました。
Comments (2)

Chihaya Akasaka

Gungnir [Elemental]

努力と根性からずっと逃げているわたしですから、今回のお話は耳の痛い(笑)ものでした💦

でも、努力を出来るということは、あれも才能なのですよね🤔🍜🍥

お話、面白かったです♪☺️📖☕

Momonga Peach

Mandragora [Meteor]

なにせ、主人公が「化け物」ですから、それに対抗し得る「人」を描けば、こういうことになってしまいますね。

Momongaは、努力や根性を強要されるのが大嫌いですが、でも、自分の主体的な意志で行う努力や根性なら、ほんの少しだけ気持ちがわかります。
そのほんの少しを、1万倍くらいに膨らませて書いてみましたが、どうでしょうか。

面白かった、と言ってもらえるのが、いちばん嬉しいですね。

カルのキャラクターは、いろいろ考えて作りましたが、性格的な部分での実在モデルのひとりに、プロレスラーの鈴木みのるさんがいます。
強い意志の持ち方や闘志の出し方の部分などは、鈴木みのるさんの影響を受けていますね。

「ミア……絶対に、逃がさないわよ」という台詞は、オカダ・カズチカさんが新日本プロレスのチャンピオンだった頃に、鈴木みのるさんが言った「逃がさねえぞ」という言葉から着想を得ました。

ついでに、わかる人にしかわからない作者の裏話をしますと、この二次創作シリーズでの群像劇のあり方は、実在のプロレス界から着想を得ているところがあります。
詳細を書いても、誰もわからないかもしれないので、割愛しますけども。
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