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映画案内5「劇場版『X』」(りんたろう監督/日本映画/1996年)

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 新海誠監督による2019年の映画『天気の子』は、美麗だが頽廃的なタッチで描かれた雨が降りしきるリアルな東京を舞台に、残酷な運命を背負わされ、貧困と暴力、搾取、不寛容が支配する現代の日本社会をサバイバルする子供たちの姿を描いた傑作だが、今から20年以上前にもう一本、運命に囚われた人々とリアルな東京を舞台に描いた劇場用アニメがあった。
 そちらの方は破壊と殺戮と終末感に満ちていたが……。



 「(中略)映画『X』は、ああ言う終わり方しか選べない。だから、そう言う場合は、ビクビクしないで堂々とやるしかないんです。大上段に振りかぶってね、一刀両断でスバっと終わる。腕力で見せちゃうって事ですよね。(中略)結末を拒否するお客さんも当然いますよ。作品として、好きか嫌いかと言う面で。でも、あれは逃げようがない話だから、正面から”悲劇だ“ってやっちゃうしかないよね」

 角川書店発行のムック本「X PERFECT BOOK」のインタビューでそう語る、りんたろう監督による1996年の映画『劇場版「X」』は忘れられた大作だ。
 原作は漫画家集団「CLAMP」の未完の同名漫画。地球の結界を守る「天の龍」とそれを破壊する「地の龍」、二つの陣営に属する異能力者たちの相克を描いた群像劇である。
 『劇場版「X」』の原点は、日本のヴィジュアル系バンド「X JAPAN」のプロモーションフィルム『X2(ダブルエックス)』のアニメパート。
 彼らの代表曲のひとつ「Forever Love」は、本来この映画のために書き下ろされた。
 公開時、筆者は小学生……といってもリアルタイムで観たのはTVCMのみ。
 本格的に知るようになったのは、アニメーションの専門学校に通っていた頃。映画でキャラクターデザイン・総作画監督を務めている結城信輝の絵が好きで、中古本屋で先のムック本を買ったのがキッカケ。
 しかし、観ようにもレンタルは存在せず、長らく筆者にとっては幻の映画だった。



 りん監督の名前は中学生の時に観たアニメで知った。
 アダルトビデオが棚の大部分を占め、饐えた臭いが漂う近所の自営のレンタルビデオショップ。そこのアニメコーナーの片隅にそのビデオはあった。
 タイトルは『帝都物語』。1991年~92年にかけてリリースされたOVAシリーズ。
 原作は荒俣宏が1985年に発表した伝奇小説。風水と陰陽術を駆使して帝都壊滅を目論む魔人・加藤保憲の暗躍を描く。
 小説はベストセラーとなり、実相寺昭雄監督によって1988年に超大作として実写映画化もされ、加藤保憲=嶋田久作を強烈に印象づけた(嶋田はアニメ版でも加藤の声を担当し、納谷悟朗や塩沢兼人といったベテラン声優陣に負けない見事な演技を披露している)。
 アニメ版のスタッフは摩砂雪、前田真宏、鶴巻和哉、樋口真嗣、庵野秀明ら、後に「新世紀エヴァンゲリオン」を作り出すメンバーがデザインワークスやアニメーターで参加。
 実写でボカされていた要素を、アニメ版はOVAという媒体の利点を生かしてエロティックかつグロテスクに演出し、テンポのいいストーリーに加えてケレン味の効いたアクションもある90年代アニメの隠れた名作である。
 りん監督の代表作である1983年の『幻魔大戦』を観たのはそれから数年後。ビデオデッキを持っていなかったため、講義後の専門学校の教室で恩師と一緒に観た。
 こちらは平井和正・石森章太郎が原作。8人の超能力者と破壊本能だけを持つエネルギー生命体「幻魔」の戦いを描くサイキック・アクション。大友克洋がキャラクターデザインを務め、彼がアニメ制作に初めて参加した作品でもある。
 圧巻はクライマックス。伝説のアニメーター・金田伊功作画による、超能力者たちと富士火口の溶岩を取り込み巨大な火焔龍と化した幻魔とのバトルだ。
 キャラクターが画面を縦横無尽に動き回り、龍が変幻自在に姿形を変える。
 アニメーションの魅力をこれでもかと堪能できるアニメ史に残る屈指の名シーンだ(フリーのアニメーターでもあった恩師は、その前の炎に包まれた森の中をたくさんの動物が走るシーンの方に驚いていたけど)。
 映画は主人公たちが幻魔に勝利し、「愛が地球を救う」ハッピーエンド。
 だが、このエンディングはりん監督にとって納得のいくものではなかった。
 上に挙げた2作品の要素――エログロ、東京、ケレン味のある異能力バトル、金田伊功――を詰め込んだ『劇場版「X」』は『幻魔大戦』のエンディングに対する解答のような映画である。



 映画は真っ黒い背景に桜が舞うシーンと主人公・司狼神威の母親――斗織の目のクローズアップのカットバックで始まる
 この冒頭から度肝を抜かれる。
 炎に巻かれ裸身になった斗織は自らの下腹部を指で抉ると、血を噴き出しながら胎内から神剣を引きずり出す。
 神威に「東京で運命が待っている」と告げた斗織の五体はバラバラに引き裂かれ、画面は鮮血に染まる。
 この他にも映画は腕がちぎれ、腹を貫かれ、背中が裂け、首が落ちる……といった、現在ならR指定レベルのスプラッターシーンに満ちている。劇中における残酷描写はアニメのジャンルに限定するなら当時としてもトップクラスのものだろう。
 もっとも、原作自体がトラウマ描写のオンパレードなので、この点に関してだけ言えば原作に忠実といえる。



 自分の愛する者たち――幼馴染の桃生封真と彼の妹の小鳥を守るために東京へやってきた神威は、赤坂アークヒルズの屋上で対峙する二つの人影を目撃する。
 「天の龍」の皇昴流。「地の龍」の桜塚星史郎。
 彼らは「CLAMP」の漫画「東京BABYLON」が初出。当時連載中であった「X」の原作でも重要な立ち位置にいる登場人物である。
 だが原作を読んでいなかった場合、観客たちには彼らが何者かはわからない。
 脚本を練るにあたり「CLAMP」のメンバーの大川七瀬とりん監督は、脚本家の渡辺麻実が先に書いていたシナリオを下敷きにして、約100分の枠に納めるために、原作の大きな魅力である各キャラクターのドラマパートを神威の周辺の人物を除いて削ぎ落した。代わりに取った手法は、必要最低限の説明とバトルの連続でシーンを繋げていくという大胆なもの。
 それにより映画には、工藤栄一監督の東映集団抗争時代劇や『ダイヤモンドの犬たち』(ヴァル・ゲスト監督/米英合作映画/1975年)、『RONIN』(ジョン・フランケハイマー監督/アメリカ映画/1998年)のような乾いた雰囲気を纏ったミッションものの要素が加わった。
 大川七瀬はインタビューで語る。

 「映画製作に関わったメインスタッフ一同で最初に意思統一したのは、淡々とした映画を作ろう、と言う事でした。泣きのシーンが来たら、必ずストリングスが入って盛り上げるとか(笑)、キャラが一人死ぬ度に大泣きするとか(笑)、そう言う事は一切せずに、淡々と『悲劇』を見せていく映画を作ろうと」

 見せ場であるバトルシーンも、「殺し合い」や「潰し合い」としての戦いが強調され、派手さはあるもののスタイリッシュさは皆無だ。
 画面に鳴り響くのも激しい戦闘的な音楽ではなく、サックス奏者である清水靖晃が作曲した陰鬱で不穏なメロディ。
 冒頭の映像の見せ方や、感情的な表現を徹底的に排除した『劇場版「X」』はアート映画のようでもある。


 
 金田伊功、川尻善昭、村木靖、橋本敬史、小池健ら最高のアニメーター陣によって描かれたバトルシーンとスペクタクルシーンは、圧倒的なハイクオリティで現在観ても色褪せてはいない。
 影とハイライトが濃密に描き込まれた結城信輝デザインの耽美なキャラクターたちが表情も豊かにヌルヌルとダイナミックに動き、光や火、水、風、雷、煙といった芸術の域に達したエフェクト作画はため息が出る美しさだ。
 当時の邦画はまだCG黎明期。劇中のアークヒルズや池袋のサンシャインビルといった建物倒壊描写は「手描き」である。
 緻密に描かれた東京山手線エリアの風景もこの映画の目玉だ。アコム、コカ・コーラ、ヨドバシカメラ、Konica、Panasonicなど実際の企業名が背景画に描かれ(プロダクトプレイスメント)、東京駅や新宿副都心といったエリア内の名所旧所が完膚なきまでに破壊される。
 美術監督は後にりん監督の2001年の『メトロポリス』や、押井守監督の2004年の『イノセンス』を手掛ける平田秀一。

 「『X』は“現実東京”の再現性を求められ、緻密な取材、膨大な写真撮影から始まった。映画全体のバランスを夜が支配している中、変化を持たせる為、カメラを通した目と生の目の二種を使い分け、シーンごとにフィルターワークを施した様に描き、時間経過を感じさせた」

 劇中、夢の中で龍が夜の東京を駆け抜けて破壊の限りを尽くすシーンはこの映画の最高の場面のひとつだろう(金田伊功が手掛けたのはおそらくこの箇所だと思われる。「天空の城ラピュタ」と続けて観ると共通点を見出すことができる)。



 神威が「天の龍」となることを選んだため、「もうひとりの神威」としての運命を背負っていた封真は「地の龍」へと覚醒し、殺人機械のような性格へと豹変する。
 小鳥の夢の中へと侵入した封真は、彼女の体の中に宿る神剣を手にするために襲い掛かる。
 逃げる小鳥の下腹部の辺りに不気味に寄っていくカメラ。
 りん監督の作品で描かれる肉親との関係にはどこか危険な匂いが漂う。
 1979年の『銀河鉄道999』の主人公・星野鉄郎は、自分の母親と瓜二つの外見の美女メーテルに心惹かれる。
 『幻魔大戦』の主人公・東丈は母親のような姉と二人暮らし(声を担当しているのはメーテル、斗織と同じ池田昌子)。丈と姉との劇中でのやりとりは、観ていて妙に居心地悪い気分にさせられる。
 その次に監督した1985年の『カムイの剣』(!)の主人公・次郎と、彼と敵対するくのいち・お雪は生き別れの姉弟の関係であることを知らぬまま惹かれ合う。
 『帝都物語』に至っては近親相姦そのものが生々しく描写される。
 『劇場版「X」』はより暴力的な形で表現される。



 神威の目の前で封真によって腹部を抉られる小鳥。神剣が血と粘液を纏わりつかせながらズルズルと引きずり出され、彼女は事切れる。
 人によっては目を背けたくなる、映画の中で最も残虐かつ気持ちの悪いシーンだろう。
 神剣を手にした封真は敵味方を無差別に次々と殺害していく。
 結界が破壊され瓦礫と化す東京の街。
 昏い空をバックとし東京タワーにカラスの群れが飛ぶシ―ンには終末感が横たわる(カラスの群れはりん監督の作品において不吉の予兆として用いられる)。
 公開当時、ノストラダムスの予言に代表される終末論が日本を覆い、メディアやカルトが盛んに不安を煽り立てていた。
 筆者もそれに怯える子供の一人だった。
 この映画の公開の前年――1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災はそういった風潮に拍車を掛けた。
 震災から約2カ月後の3月に日本を震撼させた地下鉄サリン事件も、そんな時代の流れの中で起こったことだった。
 崩れる東京タワーで対峙する神威と封真。
 神威は繰り出される剣を避けながら説得を試みるが、運命に抗うことの愚かさを語る封真に親友だった頃の面影はない。
 強大な「運命」の前に曝け出される「愛」の無力さ。
 神威は封真を否定し、「未来」は選べることを証明するために神剣を手に取る。
 二人の剣が交ち合う。折れたのは封真の神剣だった。血しぶきを迸らせ、赤い断面を覗かせて落とされる封真の首。
 彼の生首を胸に抱き、泣き崩れる神威。テーマ曲である「Forever Love」と共に子供の頃の思い出がインサートされセピア色に染まる。この映画唯一のエモーショナルなシーンだ。
 地球は救われた。だが神威の周りには誰もいない。愛する人も、痛みを分かち合う仲間も……。



 『劇場版「X」』のラストは高畑勲監督の『火垂るの墓』と並ぶ、日本のアニメ史に残る救いの無いエンディングだろう。
 人々を縛る運命の輪。
 『天気の子』もそうだが、大抵の映画はそこから脱出ないしは解放させるために、登場人物たちが権力や自分を取り巻く社会、世界のルールに命を賭けて立ち向かうが、りん監督の作品の登場人物たちは抜け出せない。
 『銀河鉄道999』、『さよなら銀河鉄道999』のメーテルは、母親が作り上げた機械帝国を自らの手で滅ぼすが、時の流れの中に閉じ込められ終わりのない旅を続けていく。
 『カムイの剣』の次郎は家族を殺した宿敵を倒して仇討ちを果たすが、天涯孤独の身となり、官軍の誘いも断って風吹き荒ぶ草原の彼方へと去っていく。
 『帝都物語』も魔人・加藤は最終的に倒されるものの、平将門の血を引いていたがために彼の策謀に利用された辰宮兄妹たちの心に救いは訪れない……。



 『劇場版「X」』のような映画は現在の日本では製作が難しいだろう。
 「悲劇」をテーマにしたシナリオ。アニメ化や映画化において「原作通り」であることが重視される風潮。過激な人体破壊描写。凄絶なカタストロフシーン。東京都庁が巨大な土煙を上げながら崩壊し、国会議事堂がガラガラと崩れ落ち、降り注ぐ瓦礫に押し潰されて肉塊と化す政治家たちといったアナーキーな映像……。
 庵野秀明監督の2016年のヒット作「シン・ゴジラ」もその辺りはボカしていた。
 『劇場版「X」』は表現規制が現在ほど厳しくなかった頃だからこそできた傑作といえる。
 惜しむらくは稀に配信されるのを待つ、あるいは筆者のようにネット通販でDVDを購入する……と観る手段が限られている事か。
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