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Nill Camino

Gungnir [Elemental]

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FCスターライツ学園 第3話『Don't Look Back In Anger』【後編】

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※この物語はフィクションです。
 登場する人物・団体・名称等は、実在のものとは関係あったりなかったりします。
※内輪ネタが多数含まれています。ご了承ください。
※行間を確保するため、フォントサイズを小さくしています。
 スマホから見る場合は、各自でサイズを調整すると少し読みやすくなります。

※これは後編です。前編はこちら。中編はこちら

◇◇◇◇◇◇◇

FCスターライツ学園 第3話
〜Don't Look Back In Anger〜 【後編】



 白色灯の光が眼窩まで刺さり、私は手でそれを遮った。
 私は……横になっている……? どこで?
 腕の隙間から、辺りをうかがう。
 簡易ベッドに寝かされた生徒たちの姿が見えた。ミュア先輩とルーチェ先輩が慌ただしく看病している。
 ここは、学園の多目的ホールだ。
「キョウ先生! ロゼちゃんが起きました!」
 ネルちゃんの声が聞こえた。
 私は体を起こした。左の脇腹が痛い。
 そうだ。
 ライラさん……。
「まだ寝ていたほうがいい」
 キョウ先生はそう言って、ベッドの脇に椅子を置いて座った。
 私は咳込みながら首を振った。
「どういう状況なんですか? ライラさんは?」
「……ライラは君を昏倒させてから、放送室を占拠した」
「放送室を……?」
「うむ。校内放送で宣戦布告した」
 宣戦布告。ライラさんは本当に革命を試みている。
「ここにいる患者は、ライラに挑んで敗れた生徒たちだよ」
「あの……、先生方は止めたりとかしてないんですか?」
 私の問いに、キョウ先生は少し困惑した表情を見せた。
「この学園の方針でね、生徒間の諍いは生徒間で解決することになっている。ライラが部外者なら口も手も出せるんだが、今は学園の生徒だからね」
 おそらくそれもライラさんの奸計の内。
 私はベッドから足を下ろした。
「ライラさんは今どこに?」
「行くのは勧めないが……、体育館だよ。先ほど生徒会がパーティを組んで向かったようだ」
「ありがとうございます」
 私はベッド脇に立てかけられた木刀を手に取った。
 地に足をつけ、踏みしめる。
 ――ライラさんの好きにはさせない。


 体育館の出入口には、野次馬によって人垣ができていた。
「生徒会です! 通してください!」
 私が声を上げると、人垣が割れた。
 視界が開ける。
 体育館の中央にライラさんがいた。制服ではなく、肩口をあらわにした服を着ている。
 生徒会メンバーがライラさんを取り囲んではいるものの、ニコラウスさん、ヒベルティアさん、イェーテさん、ニャルちゃんは傷だらけだ。唯一、アオさんだけはかすり傷のようだ。
 ライラさんが私に気づいた。
「おはよう、ロゼッタ。寝ててもよかったのに」
「そんなわけにはいきません」
 私は木刀を強く握り、飄々とするライラさんへと歩む。
「学園の生徒の襲撃犯を捕まえないと」
 ライラさんが口角を上げた。
 ヒベルティアさんが、ライラさんから視線を逸らさずに叫ぶ。
「ロゼちゃん! 今はそんなことを言っている場合じゃ――」
「場合なんです!」
 私がそう言うと、ニコラウスさんと目が合った。ああ、この人はたぶん、勘づいていたな。
「ライラさん、学園の生徒を襲撃していたの、あなたですよね?」
「……どこで気づいたん?」
 否定もごまかしもない。おぞましいほどの潔さ。自信のあらわれ。
「今日のお昼に私を襲ったときに、ライラさんが使ったの、『縮地』ですよね?」
「そんな、ライラのジョブだと縮地は使えないぞ!」
 イェーテさんの反論に、私はかぶりを振った。
「ライラさんは、双剣も使いこなせるんですよ。私も忘れていました」
 あのとき木刀は短かった。もう1本はどこかに隠し持っていたのだろう。
 そして、もうひとつ。
「私が外で襲撃犯と戦ったとき、私の試みがうまく行きすぎている気がしました。でもそれは単純な理由でした」
 前の学園で、ライラさんには何度も稽古をつけてもらっていた。
「襲撃犯は――『私』と戦い慣れていたんです」
 私にはライラさんの癖を利用したり、動きを予測することはできないが、百戦錬磨のライラさんならば、私の動きなど手に取るようにわかるはずだ。
 ニコラウスさんがため息をついた。
「この騒動は、私が起こしたようなものだな」
 くしくも、襲撃犯を学園内に招き入れていた。
 しかしそれもライラさんの計画通りだったのだろう。生徒間の諍いは、生徒間で解決する。先生は介入できない。そのために、ライラさんは学園の生徒になる必要があった。
「ライラさんは、こんなことして、なにがしたいんですか!」
「ロゼッタ。君には言ったやろ。『この学園の生徒は、平和を享受しすぎて、闘争心が薄れてる』って」
 ライラさんが拳を握った。
「君も見たはずや。あの、埃が被った木人を。誰もあれを使ってへん。使わなくていいくらいに、基礎が身についてるんか? ……違うやろ。基礎もできてへんのに、強くなれるわけない。誰も彼も、ワイに一矢報いることもできん。強くなること――牙を磨くことは己のためになる。……そしてワイは強くなったやつと戦って、さらに自分を高めるん」
「ライラさん……」
 満足そうに木刀を構えるライラさんに、私は言った。
「時間稼ぎ、ありがとうございます」
「ん?」
 ライラさんのご高説のおかげで、間に合った。
 ドタドタと、足音が聞こえる。
「おらああ! 燃やされたくなけりゃどけえええ!」
 出入口の人垣が、再び割れた。
 現れたのはキルシュ先輩と、円柱の機械を持たされたジョニー先輩。
 多目的ホールを出てすぐに、私はキルシュ先輩に連絡した。そして完成したばかりの機械を体育館に持ってくるように頼んだのだ。
 ジョニー先輩がその機械をそっと置いた。
「ロゼちゃん、大切な後輩が困ってるって聞いたから手伝ったけど、これはちょっと重すぎたぞ」
「ありがとうございますジョニー先輩。今度トマトマフィン作ってあげるので許してください」
「本当だな? 絶対だぞ? 作ってくれなかったら拗ねるからな?」
 うん。私は調理できないから誰かに頼むよ。
 ライラさんは状況を楽しんでいるかのように笑みを浮かべた。
「ロゼッタ、それはなんなん?」
「――これは、『気』を奪う機械です。ここから出る光に当たると、やる気や闘気、剣気などが減ります。ついでに周囲の気圧も下がるので、天気痛みたいなのも起こります」
 ライラさんの眉間に皺が寄った。
「そんなんじゃ、ワイの心は燃やせへん」
「えい」
 なんの脈絡もなく、私は照射スイッチを押した。
 分厚い青白い光がライラさんを包む。光の中から、声がした。
「なんか問答とか、そういうのないんかい!」
「そんなことしてたら壊されちゃうじゃないですか!」
 試験運転も効果テストも、時間がなくてしていない。お願いだから効いてちょうだい。欲を言えば、気を奪われて気を失ってほしい。
 光が収まると、ライラさんが片膝をついて、肩で息をしていた。
 お、かなり効いている。
 ニコラウスさんが前に出た。その手には野球ボールほどの大きさの岩がある。
「形勢逆転だな。ライラ」
「ラウス……」
 友人の名前を呼ぶライラさんの瞳には、悲哀が混ざっていた。
「1対8って卑怯ちゃう?」
「全然!」
 ニコラウスさんは振りかぶると、持っていた岩をライラさんに投げつけた。
 それが戦闘再開の合図だった。


 体育館の出入口から人垣が消え、冷たい風が流れ込む。
 仰向けで倒れているライラさんを、ニコラウスさんが寂しそうに見つめている。
「なあ、どうして最後、手加減した?」
「……ラウス。あの木人、なんて名前なん?」
「木人? たしか、一時期『サリー』って呼ばれていたらしい」
「そうか。サリーか」
 ライラさんは天井を眺め、感慨深げに口を開いた。
「さっきあの光の中で、サリーが出てきたん」
 私はキルシュ先輩を見たが、彼女はブンブンと何度も首を振った。
 ライラさんがニコラウスさんに顔を向ける。
「そんでな『いつも遊んでくれてありがとう』って言われたん。そしたらなんか争う気が失せたわ」
 あの機械にそんな幻覚を見せる機能はついていない。しかし、試運転もしていないのだ。なにが起こっても不思議はない。
「……ワイはな、たぶん寂しかったんや」
 ライラさんは倒れたままで、自らを取り囲む生徒会メンバーに目をやった。
「前まではみんな挑戦してたやん。零の領域に」
 零の領域――。私は詳しくはないが、自己研鑽した者たちが踏み入れる場所と聞く。そこでは力を合わせて、攻略を目指すという。
 ライラさんが続ける。
「ワイはそれを手伝うのが好きやった。そしてみんな、零の領域の先、絶の領域に行くもんやと思ってた。でも、そうじゃなかった」
「ライラさん……」
「だから闘争心を高めたら、またみんな挑戦してくれるんやないかって。また昔みたいに、一緒に戦えるんやないかって」
 ライラさんは、過去を振り返って、今を憂いて、それが怒りに変わった。
「それは違うよライラ」
 ニコラウスさんがライラさんに歩み寄る。
「たしかに、いろんな都合で挑戦できなくなった人もいる。でもな、新たに挑戦してた人もいる。そこにいるアオだってそう。彼女、強かったろ?」
 アオさん、相当な手練れだと思ったら、そういうことか。
 ライラさんは天を仰いだ。
「そうか、ワイが知らんかっただけか」
「そうだよ。どうして知らなかったか教えようか?」
「ああ、教えてくれ、ラウス」
 いつの間にか、ニコラウスさんが巨大な岩を頭上に掲げている。
「お前が最近ずっと銃撃ってたからだよ!」
 ライラさんの腹部へと、落とす。
「ぇいぺっくす!」
 うめき声をあげて、ライラさんは気を失った。

   ◆

 一連の事件の幕は下りた。

 ライラさんは、人柄のおかげか恨まれることもなく、FCスターライツ学園へ遊びに来ている。
 よく食堂に現れては、劇的に美味しくなったうどんに舌鼓を打って――。

 今日もサリーと遊んでいる。

《おしまい》




【一言あとがき】
 FCハウスの木人に名前はありません。

@nill_gungnir
@somakei_penguin


Comments (2)

Kyo Weirdo

Gungnir [Elemental]

先生が口出ししないのは、いざとなったら収束できる余地がまだあるから。まだ生徒同士で解決出来ると見込んでいるから。
人は追い詰められた時に成長するものです。
自由・自治・自己責任を守るのは大変ですね。

Rosetta Fruhling

Gungnir [Elemental]

キョウ先生……!がんばります……!
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