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G'emberto Nunh

Titan [Mana]

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FF14 (勝手に)外伝 亡国の冒険者達 1

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プロローグ

第六星暦 1568年
 
 『エンベルト・ジェーニオ』は、先日16歳になったばかりの駆け出しの冒険者だ
16歳で成人となるエオルゼアでは、多くの者が誕生日を迎えると親元を離れ自分の人生を歩んで行く。
エンベルトも最近若者の間で流行している冒険者としての人生を歩むべく故郷『リムサ・ロミンサ』を後にして、目的地『グリダニア』までの旅の途中だ。
 ザナラーンとグリダニアの国境を越え『黒衣の森・南部森林』付近の寒村に差し掛かると
「今日はこの村で泊めてもらおうかな、ここからなら明日の朝早く立てば昼過ぎには南部森林の
『キャンプ・トランキル』に辿り着けるか」そう一人でつぶやいた。
 エンベルトは村に入ると、村人に声をかけた
「こんにちは、私は旅の冒険者です、今晩一晩この村で過ごしたいのですが
泊まれる所はありますか?」
 胡散臭げだった村人も、エンベルトの冒険者にしては整った身なりと礼儀正しい物言いに
好感を抱いたようで、
「村の中心に村長の家が有るから、そこに行くと良い、旅の商人や冒険者が良く泊まっているから」
と親切に教えてくれた。
 村人に礼を言ったエンベルトは、村長の家を探し当てると(一際大きいので直ぐにわかった)中に声をかけた
「すみません・・・」
直ぐに、壮年の男性が扉を開けると、歓迎してくれた
「泊めてやるのは構わないが、今日は先客がいるから、納屋しか空いてないが構わないか?
いつも来るグリダニアの商人がもうすぐ到着する予定なんだ」
「構いません、ありがとうございます」
と、エンベルトが答えた時、外から村人の悲鳴と男達の叫び声が聞こえてきた。
「村長、野盗の襲撃だ、戦える者は武器を取ってくれ」
各村に数名常駐している神勇隊の隊員が駆け込んで来た。
「あの、私も手伝いましょうか?」
エンベルトが背負う戦斧を見た隊員は
「おう、冒険者か?助かる、その戦斧が見掛け倒しじゃなければ良いがな、来てくれ」
隊員と一緒に外に出たエンベルトは、野盗の集団を見つけると、戦斧を構え、跳躍して一気に三人を
打ち倒した。
「おー」
村民から歓声が上がる。

 ちょうどその頃、村のグリダニア側の街道口・・・
グリダニアの元幻術士で今は冒険者の『グ・エンベルト・ティア』は立ち往生している商人を見かけて声をかけた。
「どうしたんですか?」
「こいつが急に動かなくなってな、おい動け!」
荷物を運んでいるチョコボは全く動こうとしなかった。
「お前どうした?」
グ・エンベルトがチョコボに声をかけると、
「クエッ」と一言鳴いて村の方を見た。
「そうか、この先の村を野盗が襲っているんだな」
グ・エンベルトは何故か子供の頃から動物達と意思を通わせる事ができた。
チョコボは人よりも嗅覚や視力に優れる、その為危機を察して動かなかったのだろう
グ・エンベルトは商人に、ここから動かない様に言うと、弓をつがえ村に向かって走った。
 村人を守って、戦斧を持った冒険者風の若者が戦っている、グ・エンベルトは得意の速射で冒険者を援護した。
そして、今度は武器を槍に持ち替えると一気に野盗を数人片付けた。
二人で殆どの野党を片付けてしまう。
「加勢感謝する、助かったよ」
「強いな、かえって邪魔をしたかと思ったよ」
このヒューラン族の冒険者はグ・エンベルトが加勢する前にすでに野盗を十人以上片付けていたからだ。

「二人とも凄いな俺たちだけでは危なかった、それはそうと君、いや貴方は鬼哭隊のグ・レナ・レオ隊長の御子息で幻術士のグ・エンベルト殿では?」
グ・エンベルトは槍術を鬼哭隊で弓術は神勇隊で学んだので、当然この神勇隊の隊員が、エンベルトの事を知っていても不思議では無かった。
神勇隊の隊員にそう聞かれた、グ・エンベルトは
「元幻術士です、今は冒険者ですから」と答えた。
「なんと、それは・・・」言葉を濁した隊員は少し気まずそうに二人に挨拶をすると、去って行った
幻術士はグリダニアではエリート階級である、それを辞めて冒険者になるなどと言う事は
この壮年の隊員の常識ではあり得ない事だったからだ。

二人で村長の家に行くと
「最近は、野盗共も鳴りを潜めていたのだがな、しかし勇者が二人も現れて助かったよ」
晩飯は、御馳走するから今夜はのんびりしていってくれ」
村長にそう言われて二人は並んで、椅子に座った
 そこにちょうど先ほど立ち往生していた商人も到着して、
「やぁ、若いのさっきはありがとうな、もしあのまま村に入っていたら積荷を奪われる所だった、これはお礼だ」
そう言うと商品の『蜂蜜酒』を瓶ごと振る舞ってくれた
「これは滅多に手に入らない極上品だぞ、若い二人にはまだ早いかもしれないけどな」
商人はそう言うと村長と二人で愉快そうに笑った。

「ところで、さっきから思っていたんだが、お前とはどこかで会った事が無いか?」
極上の蜂蜜酒を飲みながら、エンベルト・ジェーニオがそう聞くと
「不思議だな、俺もそれを考えていたんだ」
とグ・エンベルトが答えた。
二人とも出会って数時間しかたっていないが、直ぐに打ち解けて「俺、お前」で呼び合うようになっていた。

そして二人同時に思い出す。
「あ、あの時の!!」
それは、今から四年ほど前、二人が12歳の頃の事であった。

第六星暦 1564年

リムサ・ロミンサ

グ・エンベルト・ティアは12歳にして、角尊以外では最年少の幻術士であり槍術、弓術も其々
免許皆伝の腕前である、グリダニアでは将来を期待されている少年であった。

鬼哭隊の隊長をしている母の誕生日に自作の槍をプレゼントしようと考え
グリダニアの木工師ギルドからの紹介で鍛治師・甲冑師ギルドを訪問する為に
初めて訪れた異国がこのリムサ・ロミンサである。
飛空挺に乗るのも初めてなら、全てが新しい経験である。
グリダニアとは空気も風習も全てが違う

グ・エンベルトは『ナルディク&ヴィメリー社(鍛冶師・甲冑師ギルド)』を訪れた
「ああ、話はグリダニアの木工師ギルドから聞いているよ、好きなだけ見学して行くと良い、なんなら自分で一度作ってみるかい?」
「これこれ大事なお客様になんて事を言うんじゃ、ワシは『ミミドア』ご覧の通りの職人じゃ、お主の依頼の品を任されておる」
「よろしくお願いします、あの本当に僕に作らせていただけますか?」
「なんじゃ?物好きな奴じゃのう、そうじゃの、ならば取り敢えず鋼でも作ってみるか?」
「はい、お願いします」
グ・エンベルトは初めて「鋼」を鍛えた、熱した鉄をハンマーで鍛える作業は興味深かった。
「そうじゃ、もっと腰を入れて、腰は大事じゃぞ、特に若いおなごの相手をする時はな」
「ちょっと、爺さん、子供になんて事教えてるのよ!」
ミミドアはギルド内の女性から怒られた、グ・エンベルトは何の事だかわからずにポカンとしている。
「オット、調子にノリすぎたワイ、よし、初めてにしては良い出来じゃな、良いかこれを使って、剣や戦斧、槍先を作るのじゃよ、見ていなさい」
グ・エンベルトの見ている前で鋼が剣に姿を変えた、
「後は火入れをして刃を砥げば完成じゃ」
「すごい、神業です!」
グ・エンベルトは職人の手作業を見るのが好きだった、ミミドアと名乗ったこのララフェル族の職人も
素晴らしい腕をしている。

「こんにちは、私の戦斧はできたかしら?」
グ・エンベルトより歳下に見える、ヒューラン族の少女が店に入って来た。
ブロンドの髪、青い目、グ・エンベルトは少し見惚れて彼女を見ていた
「何よ、あなた人をジロジロと見て失礼じゃない?」
そう言われたグ・エンベルトは赤面して咄嗟に
「ごめん、その、戦斧で闘う所を見た事が無いのでこんな綺麗な子がどうやってと思って・・・」
そう言ってしまった。
「私が綺麗なのは確かね、見惚れるのもわかるわ、良いわよ戦斧の使い方を見せてあげる
あなた武器は使えるの?」
「槍なら少し」
「そこの槍を持って、表に来なさい」
少女は戦斧を構えると、
「私は『ルクレチア・ジェーニオ』どっからでも掛かって来なさい」とグ・エンベルトに言う
「困った事になった、怪我をさせたらいけないし・・・」
グ・エンベルトは軽く槍を振った、その途端、槍を弾かれふらつく
「あなたね、真面目にやりなさいよ!」

「お、なんだなんだ、あれはレナータさんの所のお嬢ちゃんじゃないか?」
「そうだ、ルクレチアちゃんだ、綺麗だなぁ」
あっと言う間に人だかりが出来て、中には女海賊『紅血聖女団』の一団までいる
「ルクレチア、そんな優男に負けるんじゃないよ、叩きのめしてやんな」

などと、声がかかり、
「よし俺は優男に掛ける」
「俺はお嬢ちゃんだ」
とリムサ・ロミンサ名物の賭け事まで始まってしまった。
「これはまずい、事態を早く収集しないと」
そう思ったグ・エンベルトは槍を持ち変えると、柄の石突きで少女の鳩尾を狙って素早く攻撃を繰り出した。
軽く当たれば戦意を喪失させられる筈だった。
しかし、少女は難なくかわすと凄まじい斬撃を二回、三回と繰り出してくる
グ・エンベルトでも避けるのがやっとだ。
「う!」鳩尾を突かれた少女が蹲る
観衆からドヨメキが上がる
「しまった、力が入りすぎた」
相手が強いのでグ・エンベルトが充分手加減ができなかったのである。
「ごめん、大丈夫?」
グ・エンベルトは少女に駆け寄るといつも所持している小型の片手幻具で、少女に回復魔法を施した。
「イタタ、何、貴方幻術士様なの?」
ルクレチアの態度が変わった。
戦いに怪我は付き物で、怪我を癒す幻術士はリムサ・ロミンサでも尊敬されているからだ。

「貴様、妹に何をしている?」
グ・エンベルトより一回りも体格の良いヒューラン族の少年が、双剣を抜いて飛びかかって来た
とっさにアクアオーラを放って槍を掴み少年と距離を取る、
「強い!」
 少年は双剣で素早い攻撃を仕掛けて来る、グ・エンベルトはやっとそれをかわすと辛うじて槍で
片方の剣を弾き飛ばした。
だが、今度は剣を捨てた少年の拳を脇腹に受けて、後ずさる。
「なんだ?素手でこの威力」
グ・エンベルトは槍の向きを変えた
「兄さん、やめて」

「そこまで!!」
僧形のヒューラン族の老人が老人とは思えない大音声で、二人を止めた
我に帰った少年は
「師父、申し訳ありません、つい」
と老人に頭を下げた。
「良い、どうじゃ世界は広い、強い奴はまだまだ沢山おるぞ、良い経験になったであろう」
「師父、私は負けてません」
「馬鹿者、奴が初めから刃をお前に向けていたら、今頃は無事ではすまんぞ、帰ったら稽古だ」
少年は師匠らしい老人に諭されて項垂れている、
「あの、それは違うと思います、彼も攻撃に剣の柄しか使っていませんでした、僕の負けです」
グ・エンベルトはつい反論してしまった
「ほう、お主は負けを認めるのか、潔いな、ではお主も精進する事だ」
師父と呼ばれた老人は和かにグ・エンベルトを諭した
「はい」
グ・エンベルトは素直に頭を下げた

このヒューラン族の少年の名は「エンベルト・ジェーニオ」母は『レナータ・ジェーニオ」
リムサ・ロミンサの正規軍『バラクーダ騎士団』の隊長である。

「何の騒ぎか?」
「やばい、バラクーダ騎士団だ、レナータだ」
観衆は散り散りになる
「あなた達ね、また騒ぎを起こして」
レナータは「紅血聖女団」の団長に向かってそう言った
「おいおい私らはただ見ていただけだよ、ほれ」
「え?エンベルトとルクレチア?」
そう言われて見た先には、息子と娘、槍を手にしたミコッテ族の少年と
子供たちの武術指南役のアルキゴスの姿があった。

「エンベルト、ルクレチア、説明しなさい何が起きたの?、アルキゴス殿これは?」
「何も?この子と遊んでいただけだよ、ねぇ」
ルクレチアは到って普通に答えた
「はい、そうです戦斧の使い方を教わっていただけで・・・」
グ・エンベルトもそれに併せたが、レナータの一睨みで黙った。
「(こ、怖い)」
紅血聖女団から助けが入った
「そうだよ、私たちが見ていたよ、子供達が遊んでいただけだよ、それにしてもルクレチア、あんた良いねえ、もう少し大きくなったらウチにおいで、バラクダー騎士団よりずっと待遇が良いから、それまでこれ取っておきな」
団長のローズウェンはそう言うと自分の赤い上着を脱ぐとルクレチアに投げて寄越した。

レナータはそれを無視すると
「あなたはグリダニアの幻術士『グ・エンベルト・ティア』殿ですね」
レナータにそう聞かれたグ・エンベルトは正直に頷いた。
「子供達が大変失礼をいたしました、お怪我はありませんか?」
「大丈夫です、私の方こそお子様達に失礼いたしました」
「今回は特別に不問にしますが、お立場をわきまえて行動してくださいね」
「はい、申し訳ありません」
弁解のしようも無い、歳が若いとはいえ、グリダニアでは幻術士の地位は高く、それ故他国に赴いた時は準外交官扱いになるからである、当然私闘等が許される事では無かった。

 「でも、貴方良い腕をしてるわよ、エンベルトもルクレチアも私が小さい頃から鍛えたから並みの男なら相手にならないの、精進しなさいね」
レナータは最後にそう言うとグ・エンベルトに微笑んで、二人の兄妹を連れ帰る。
「お母さん、ちょっと素敵な子だったね、それに名前が兄さんと一緒だったね」
「あなたには家で話があります、調子に乗らないの」
そんな母娘の会話が聞こえて来た。

 「済みませんでした、なんかとんでもない事になって」
ギルドに戻るとグ・エンベルトは頭を下げた。
「イヤイヤ、面白い物を見せて貰ったよ、堅物のグリダニアの幻術士様にも、面白い奴がいるんだな、これからもいつでも遊びに来てくれよ、みんな歓迎するぞ」
「そうじゃ依頼の品な、明日まで待ってくれるかの?」
「はい、構いませんが?」
「お主の戦い方を見て、閃いたんだじゃよ、きっと母上にも気に入って貰えると思うぞ、何、料金は心配しないで良いそ、ワシはさっきお主に賭けて儲けさせて貰ったからな」
 グ・エンベルトは職人達の仕事ぶりも見せてもらい、次の日を待った。

 「この槍先はハルバートですか?」
「そうじゃの、そうとも言えるが違うとも言える、前にイシュガルドに伝わると言う伝説の槍『グラーシーザ』の話を聞いてな、その槍先を再現してみたんじゃ、二つ作ったから持って行くと良い、大きい方がお前さんのじゃ、お主なら使いこなせるだろう」
「ありがとうございます」
 
 こうして特注の槍先を入手したグ・エンベルトはグリダニアに帰還した。
「綺麗な人だったなぁ、ちょっと怖かったけど優しそうで・・・娘さんルクレチアと言ったっけ、あの娘も綺麗だけど、気が強そうで苦手かな? そして僕と同じ名前のあいつ、強かったなぁ」
グ・エンベルトの女性観が決まった瞬間だった。
グリダニアに戻ったグ・エンベルトは母のプレゼントの槍を完成させると
弓と槍の修行を更に熱心に行った、今回の旅で自分の未熟を悟った為である。

第六星暦 1568年 黒衣の森

「改めて自己紹介する、エンベルト・ジェーニオだ、見ての通り駆け出しの冒険者だ」
「俺はグ・エンベルト・ティア、同じく駆け出しの冒険者だ」

「すると、お前はグリダニアに修行に行くのか?」
「ああ、お前はウルダハで修行かぁ」
二人は似通ったお互いの境遇に笑い合った。
 落ち着いて観察すると、このエンベルトからは迸る大量のエーテルが見える。
今までの経験から、理由はまだわからないが、武術や魔法の才能はこのエーテルの量と比例関係にあると理解しているので、グ・エンベルトはエ・スミ・ヤン宛の紹介状を書くと、エンベルト・ジェーニオにグリダニアへ着いたら、直ぐに顕老樹瞑想窟のエ・スミ・ヤンを訪ねる様に伝えた。
 代わりにジェーニオからは、師父の友人と言うウルダハ『格闘士ギルドのマスター』宛の紹介状を貰った。

翌朝、二人は村長の家の前で握手を交わした
エンベルト・ジェーニオはグリダニアに向かって、グ・エンベルト・ティアはウルダハに向かって旅を
続けるからだ。
 グ・エンベルトは同じくウルダハまで向かうと言う昨日の商人と護衛も兼ねて同行する事になった。
「では、またどこかで会えると良いな、良い旅を!」
お互いそう言って旅の無事を願い二人は別れた。
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