当記事は、RPイベントのセッションを元に、
ストーリー風に物語を書き起こしたリプレイ兼、RPストーリーです。
苦手な方はご注意ください!
https://jp.finalfantasyxiv.com/lodestone/character/12662472/blog/4686470/参加者
■参加者様:
Girouettaut Laurent(ヒュルベルト)
T'latte Tia(三つ凪の子),
Taniha Molkoh(カノ)
また、ver5.xシリーズのストーリー内容を含みますので、5.xパッチの上のストーリーが未プレイの場合はネタバレの可能性がございます、ご注意願います。
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我々の前に立ちふさがった、壁のような罪喰い――。
それは近づくや否や、その顔のような部分から、魔力の塊を放ち、攻撃してきた。
「ッ!」
私はすんでのところで、”咎人の剣”を構えた。
ユル=ケンのオマジナイと、名も知らぬドランの騎士の怨念が込められた剣。
それには、魔力を弾き返す力があった。
私は、攻撃を防ぐと、刃を翻し、壁型罪喰いの顔に見える部分に、思い切り斬り込んだ。
だが、
(刃が通らない!?)
その罪喰いの肌――と言うべきか、外壁というべきか。
それは、恐ろしいほどの硬度を持ち、見ればミツナギの魔法迄弾き返しているようだった。
”うおおおん”
我々の攻撃をものともしない壁型罪喰いだったが、突然”音”を発して反応した。
まるで、嘆くような、恨むような――そんな人の声にも聞こえる。
(この罪喰い、――まるで人だった頃の名残でもあるというのか)
だが、私にとってそれは興味のない事だ。
罪喰いになってしまったのなら、もうそれは人ではないのだから。
――それならば、猶の事、魂だけでも開放してやらなければ。
嘆き悲しむ”声”を上げ続ける罪喰い。
その恨みは深いのか、奴は先ほどよりも強い魔力の塊を、私達に向けてきた。
(さすがに、マズいか!?)
あの力は、剣で振り払えるだろうか――。
『
我が加護よ、火影のごとく注げ』
その時、とっさにカノが私に結界を張った。
剣と結界とが、罪喰いの魔力を受け止める。
「なんたるパワーか!」
カノの術をもってしても完全に防げなかった。
私の身体は少し後方に吹き飛ばされた。
(こうなったら――皆の力を借りるしかあるまい)
私は、皆に目配せした。
各々が、攻撃を顔面に集中する。
ミツナギが魔法を、私とヒュルベルトが剣を、カノが支援。
攻撃は弾かれ続けたが、それでも集中攻撃を重ねた結果か、顔面の様な部位に、わずかにヒビが入る。
すると、罪喰いが――。
”うおおおおおおおおぉおお……!”
また、悲鳴のような”声”をあげた。
そして。
(この光は!?)
今までで、一番強い光が、罪喰いに集まり出した。
(まだこんな力を――!)
巨大な魔力を一気に放出するつもりらしい。
だが、
「近くに来い」
カノが言った。
「
守ってやるぞ」
――安心しろ。俺が守ってやる。
この山に登るときにも、彼女が言ったセリフだ。
暖かな炎のような気が、私達を包んだ。
流石の彼女も、これだけの力を受け止めるには、防御に徹しないといけないらしい。
意識を集中させて、結界を張る。
そして、罪喰いの光が、放たれた。
――凄まじい力と力の拮抗。
だが、カノの結界は耐えている。
「ユル=ケン!」
私も叫んだ。
『わっちゃー! 働かせすぎなんだよ!』
ユル=ケンもまた、鱗粉を周囲に撒いた。
妖精の鱗粉は魔力を強化もしくは中和することが出来る。
結界をさらに強化し、罪喰いの力には対抗する。
そして、わずかに、罪喰いの力が弱まり始めた。
(今だ――)
罪喰いが力を使い切った瞬間を狙って、私たちは再度攻撃を仕掛ける。
(行くよ……私の取って置きの技!)
「魔の胎動、地より溢れ出よ!」
私はフッブートに伝わったとされる剣技を放った。
魔力を込めて、敵を斬り、その刃を地に当てて、そこからさらに魔力を暴発させて攻撃する二段構えの奥義だ。
その名も。
「
……大地噴出剣ッ!!」
剣が、魔力の奔出が、罪喰いの顔面を捕らえていた。
ぱらり、と何かが落ちた。
罪喰いの顔面が砕け、ヒビが全体に広がっていった。
”うぁああああああああ”
そして、割れた仮面のように、罪喰いの顔は崩れて――そして、壁の様なその身体も、いくつかの立方体に分裂する。
「うおっと!?」
そして、壁は、まるで城壁が地震で崩れる時の様に――バラバラになって我々に降り落ちてきた。
「ギャッ!」
結界を張る事に集中していたカノにも、固まりが落ちてくる。
ミツナギと、ヒュルベルトが、そっとそれを助けたように見えた。
「……崩れた」
道中見てきた、あの不思議な建物と同じような光景がそこには広がっていた。
「はは、またキャラメルみたいになってしまったね」
「も、もう舐めちゃだめですよ?」
ミツナギが苦笑する、私はそれに笑顔で返すと、崩れ落ちた罪喰いの向こうにある景色が広がっていることに気づいた。
(お城、だ……)
「今のが門番だったみたいだね」
私はその光景を見て確信した。
”門番”を抜けた先。
ドン・ヴァウスリーの居城だった場所がそこにはあった。
「ああ、眩しすぎる!下品な光だ、本当に」
カノは嫌悪感を露わにして叫んだ。
しかし、ミツナギとヒュルベルトは。
「わ……」
「城だ」
と、改めて罪喰いたちの城の壮麗さに、目を取られていたようだった。
「……呑気なものだな。血気盛んな先陣にあてられたか」
しばらく不快そうに城から眼をそらしていたカノだったが、城を眺めるヒュルベルトとミツナギについては微笑ましげに見ていた。
……英雄になりたい、と言う位だ。
お城も欲しかったりするのかな。
「……、眩しい、…ですけど…、…綺麗ですね」
城を見つめるミツナギが、ポツリ、とつぶやいた。
ヒュルベルトはそれに対して、
「ミツナギ、こういうの、好き?」と尋ねた。
「え?ああ、いえ…趣味ではないん・・・ですけれど…」
「俺、レイクランドの城のが好き」
そして彼は目尻を緩ませて言った。
レイクランド、か。
ヒュルベルトも、エルフだ。
何か、レイクランドに思い出や、所縁でもあるのだろうか。
が、ミツナギの思うところは別の事のようだった。
「どういう想いで建てられた城なんだろうって思って」
「おもい…?」
「…ただの罪喰い達の根城にしては美しすぎるなと思って…」
ふと、私も彼らに倣って罪喰いたちの城を眺めてみた。
私も、お城は嫌いじゃない。
ヒュルベルトが、レイクランドに縁があるのならば、私も祖先の故郷、フッブート王国に憧れがあった。
姉に寝物語に聴かせてもらった『緑の光』。
フッブート王国の王城、グリュネスリヒト城。
その輝きに包まれて暮らせるなら素晴らしい事だけど。
でも、此処広がる光景は――荘厳な装飾、白亜の壁……までは良いが。
けばけばしい金の縁細工。
救世主を求める、哀れな民を象った像。
取って付けたかのような樹木、花々。
美しくはあるが、ここが”楽園”である事を誇示しているかのような薄っぺらい嘘臭さがあった。
――厭だな。
「まるで、光耀教の”神様”の城だね」
私は二人に言った。
そして「グリュネスリヒトの方がきれいさ」とも続けた。
だが、『リェー・ギアだろー』とユル=ケンが訂正してきた。
今は、妖精さんたちのお城か、これは失礼。
「神様……ここは神の城…だったのでしょうか」
それは正しくもある、ドン・ヴァウスリーは神を自称していた。
噂ではあるが、最期は、罪喰いと完全に混ざり、その姿も神に似せた「全能者」として闇の戦士様と戦ったという。
ここは、今は亡き、神の城だったのだ。
偽りの神だが。
そして、
「……馬鹿馬鹿しい。神など100年も前に滅びた」
カノが言った。
私達の祖先が信じていた”神様”もまた、百年前の光の氾濫と共に滅びていた。
「神様…」
ヒュルベルトもぼそり、とつぶやいた。
そして、しばらく考えた後に、彼はこう続けた。
「…神って何?」
「そこからか??……ウーン……説明が難しいな、神というのは」
カノが言葉に詰まる。
「そうですね…、世界の長、のようなものです。…誰も逆らうことのできない」
ヒュルベルトはミツナギの言葉に、宙を仰ぎ、考え込んでから、
「水晶公みたいなの?」と言った。
クリスタリウムの人たちにとっては、彼はそうとも言えるかもしれない。
「水晶公は薬を拒否しても無理やり飲まされていたと聞きますから、逆らうこともできるのでしょう…」
「神様は不味い薬を飲まなくていい」
「そうです、だって神は何より偉いから」
ヒュルベルトは、その言葉を聞いて、何か発見したような表情をした。
「じゃあ、みんななりたい……うん、うん。光の戦士と一緒だ」
ヒュルベルトは頷いた。
「…そうですね、光の巫女ミンフィリアのように神格化されて、神に近い存在になれるヒトも或いはいるのかもしれませんね…」
彼は、神とは”光の戦士のようなもの”で納得が出来たようだ。
――神様には、皆なりたい、か。
「ふふ、そうだね……私が神様なら、もっと……」
と思わず私は言葉が出ていた。
「もっと…?」
その言葉を聞いた、ヒュルベルトが私の方を不思議そうな顔で見ていた。
純粋に興味があるのだろう。
”神様”という誰も逆らえない存在になったら何をしたいのか。
私は――。
と、言葉を紡ごうとした瞬間、私は気配を感じた。
眼帯をしている側の左目に、刺さるような痛みが走る。
庭園のあちこちに、罪喰いが潜んでいる。
「待ってるみたいだ……」
私は、仲間たちに罪喰いの存在を知らせた。
「ふん、待ちきれない無粋な奴らだ」
カノが言った。
どうやらこちらの出方を窺っていたようだが、打って出ようとしているらしい。
「それじゃ、ここを切り抜けてからじゃないと、神様じゃなくて星になってしまうよ」
私は、笑いながら咎人の剣を抜いた。
しかし、まだコレだけの数が居るのか。
私は左目の痛みを頼りに、敵の気配を探る。
庭園の回廊の途中、二桁は確実に居る。
それも、今迄の道中に出てきたのより強力な奴だ。
やはり、この城を”傲慢”を守っているとでも言うのだろうか。
さて、どう切り抜けるか――。
と、私が思案しようとしたところ。
「ミツナギ」
ヒュルベルトが言う。
「敵いっぱいいたら、大きい技で全部燃やしていいよ」
それは驚きの提案だった。
つまり、コレだけ大勢の敵が相手ならば、術士であるミツナギの魔法で一気に撃破する、というのだ。
それは対多数の戦いの場合は、起死回生の攻撃になる場合も多かったが、リスクも大きい。
「……気を引き締めましょう」
が、ミツナギは頷いた。
「できるのかい?」
「……やってみます」
――フードの下に、少しだけだが、意志の強い瞳が見えた気がした。
「うん、うん」
ヒュルベルトが頷いた。
ふふ、わかったよ。
私は、咎人の剣を横に構えた。
敵を払いながら、一気に駆け抜ける為に。
私は、カノに目配せする。
「
いいぞ!」
ああ。
私は破顔していたと思う。
ヒュルベルト、教えてあげるよ、私が神様になったらやりたいことは、
罪喰いを――。
「
イチモウダジンだ」
私が先頭になって、回廊を駆けた。
建物の陰から、数体の罪喰いが現れる。
それは全て、人の形をしていた。
(こんな数……この近くで、新しく被害が出たのは聞いてない……やはり、呼び寄せられたのかな)
私は剣を振ってそれらの攻撃を払い、仲間の為の突破口を作る。
「……人に近い形の罪喰いがいましたね」
駆け抜けながら、ミツナギが言った。
「うん、人に近いのは元々人なんだ」
ヒュルベルトが続ける。
「守りを固めているのか?」
人型の罪喰いあれば、そういう事もするのか、とカノも思ったのだろうか。
「……わかりません」
ミツナギは頭を振った。
――と、庭園の外壁を登るようにして現れた影があった。
今度は獣型の罪喰いだ。
獣型の罪喰いはミツナギにとびかかるも、彼は冷静にそれをくぐり抜けて回避する。
だが今度は、再度人型の罪喰いが空中から飛来した。
人型の罪喰いを見たミツナギは少しぎょっとして動きを止めた。
ヒュルベルトが、ミツナギの代わりにそれらに曲刀を振って退ける。
「…人の形のものはやっぱり少し…嫌ですね、…ちょっとこわいです」
「ふふ、そういうものだよ。……還してやるほかないだろう。時の止まったものは、もう何にもなれない」
戸惑うミツナギに、カノが優しく言った。
その言葉に、ミツナギも覚悟を決めた様に見えた。
それを満足げに見たカノは、札を取り出す。
「
我が加護よ、火影のごとく注げ」
カノの声が聞こえる。
炎が再び私達の身体を護る。
私はその加護を頼りに、敵の注意を、ただ、ただ、引き付け、走る。
駆け抜けながら引き付けた罪喰い、その数は十を超えた。
さすがに数が多く、逃げながら剣で切り払うのが段々難しくなってくる。
凌ぎきれない罪喰いの攻撃が、肉体を掠めた。
だが、少々の傷で歩みを止めるわけにはいかない。
それには、痛みが邪魔だ。
「ユル=ケン……! 痛みを感じなくしておくれッ!」
私は叫んだ。
ユル=ケンの鱗粉が舞い散り、私の体内に、”痛みを感じさせなくする毒”が入ってくる。
途端に”少々の傷”くらいなら気にならないようになった。
これなら、走れる、痛みも疲れも忘れて――。
そうして、駆け抜けている最中に、罪喰いの数が二十に近くなった。
だが、罪喰いが新たに現れる気配はもうない。
これで、全部か。
ヒュルベルトがその中から幾らかを分担し、さらに引き付け、走る。
やがて、我々は回廊を駆け抜けきって、ホールのような場所に出た。
そこを行き止まりまで走り抜ける。
「さあ、近くに来い。守ってやるぞ!」
と、カノが結界魔法を張った。
結界の中に入る、私達。
袋のネズミとなったのを好機と見たのか、全ての罪喰いが、我々を喰らわんと一気に襲い掛かってきた。
これだけの数の罪喰いが相手では、カノの結界もそうは持つまい。
だが、この結界は、罪喰いを防ぐためのモノではなかった。
「お見事だ」
私は言った。
「
恐縮です」
――罪喰い達が、爆風と共に、爆ぜた。
力の臨界、光の化身たる罪喰いたちをも葬り去る閃光。
此処に来るまで力を温存していた、ミツナギの渾身の大魔法が彼らを一瞬で吹き飛ばしたのだ。
その凄まじい威力は、結界なしでは我々も巻き込んでいただろう。
「ミツナギは頼りになる」
ヒュルベルトが、自慢げに笑顔で言った。
「ヒュルベルトがアドバイスしてくれたから……」
ふふ、此処までの間、何度も聞いたな。
でも、その通りだ。
「まったく、無茶をさせる!だが、よい、良い。良い鎧だ」
カノが笑いながら、私の加護を強化して、傷を癒してくれた。
「カノも」
と私は返した。
流石に、カノが居なかったら、私もヒュルベルトもここまで無茶は出来なかっただろう。
……これで、ここに集まった雑魚のはぐれ罪喰いは全部倒したみたいだ。
そして。ホールの奥手には、長い階段があった。
そこから強い光を感じる。
七罪が、いるのだろう。
私はそちらに進もうとしたが……。
ヒュルベルトが何か見つけたのか、辺りを見わたしていた。
「レイクランドみたいだ」
「レイクランド……?」
「ん、なんでもない。似た場所を知ってるだけ」
私はヒュルベルトが指さす先を見た。
「草がある」
そこには、エルフ族が好むような、お茶会の出来そうなレイクランド式の小さなガゼボ(東屋)と、花壇があった。
「確かに、似ている……何故?」
私は不思議に思った。
ドン・ヴァウスリーの趣味だろうか?
いや、その庭園は、この宮殿の趣向と少しだけ異なっている気がした。
私は先ほど、現在進行形で、この宮殿の形が変わっているのを思い出した。
――新しい主が作り変えたのか?
七罪が?
はぐれ罪喰いは生前の習性を強く残すことがある。
もしこれが、本当に”傲慢”の生前の習性だとしたら――お城でお庭、か。
罪喰いになる前だったら、お友達にでもなれたのだろうか。
だが、そんな事は、今の私には意味のない事だ。
私は、ヒュルベルトに行こう、と目で促すと、階段を登ろうと足を進めた。
だが……。
「何……!」
カノが身構える。
大きな地響きがした。
「ひ」
ミツナギが僅かにひきつった声を上げた。
「これは・・・!」
目の前の建物が”白い奇妙な四角い塊”になって崩れ、バラバラになる。
この塊は――罪喰いの肉片だ。
そして肉片が一つの大きな形を成した。それはさながら、
「首の無い巨人」だった。
こんな大きい罪喰いは初めて見る。
ミツナギが唖然としている。
その巨体は、まるで、最後の最後まで、罪喰いたちが、七罪たる”傲慢”を護ろうとしているかのようだった。
「蹴散らそう……七罪は目の前だ……!」
私は、咎人の剣を抜刀し、先陣を切った。